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独占禁止法と価格設定:不当廉売・カルテルの基礎知識

独占禁止法と価格設定:不当廉売・カルテルの基礎知識

18分で読める|2026/01/26|
プライシング法規制独占禁止法コンプライアンス

AIサマリー

独占禁止法における価格規制の基本を解説。不当廉売の要件、価格カルテルの禁止、再販売価格維持の規制を、電力カルテル事件(1010億円)などの事例とともに説明します。

価格設定は企業の自由裁量に委ねられていますが、すべてが許されるわけではありません。

独占禁止法は、公正な競争を阻害する価格行為を規制しています。2023年には電力カルテル事件で過去最高額となる1,010億円の課徴金が命じられました。

本記事では、価格設定に関わる独占禁止法の規制内容を解説します。

⚠️

免責事項 本記事は法制度の一般的な解説を目的としており、法的アドバイスではありません。 具体的な対応については、弁護士等の専門家にご相談ください。


この記事でわかること

  1. 不当廉売規制: 原価割れ販売が違法となる条件と判断基準
  2. 価格カルテル禁止: 競合他社との価格協調が違反となる要件
  3. 再販売価格維持の禁止: メーカーが小売価格を拘束できない理由

基本情報

項目内容
対象法令私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)
所管官庁公正取引委員会
対象読者経営層、法務担当、プロダクト担当
難易度初級〜中級

独占禁止法と価格設定の関係

独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進し、消費者の利益を確保するための法律です。

価格設定に関しては、主に以下の3つの行為が規制されています。

規制類型概要主な違反者
不当廉売原価を著しく下回る価格での継続販売小売事業者、EC事業者
価格カルテル競合他社との価格の取り決め全ての事業者
再販売価格維持メーカーによる小売価格の拘束メーカー、卸売事業者

不当廉売とは

定義

不当廉売とは、正当な理由なく、商品やサービスをその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある行為です。

独占禁止法第2条第9項第3号および一般指定6項に規定されています。

不当廉売の3要件

不当廉売が違法と判断されるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

要件内容判断のポイント
価格要件供給に要する費用を著しく下回る対価総販売原価(仕入原価+販管費)を下回る価格
継続性要件継続して供給すること相当期間にわたり繰り返し行われること
競争阻害要件他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ競争者の顧客獲得を妨げる蓋然性

「著しく下回る」とは

公正取引委員会のガイドラインでは、以下の基準が示されています。

  • 総販売原価(仕入原価+販管費)を下回る価格設定
  • 単なる仕入原価割れではなく、事業全体として採算が取れない価格水準
  • 一時的なセールや在庫処分は原則として対象外

正当な理由の例外

以下の場合は「正当な理由」として不当廉売に該当しない可能性があります。

  • 季節商品の売れ残り処分
  • 生鮮食品の消費期限間近の値引き
  • 新規参入時の限定的な低価格戦略

ただし、これらも長期間継続すると違法となる可能性があります。


価格カルテルとは

定義

価格カルテルとは、競合する事業者が共同して、商品やサービスの価格を決定・維持・引き上げることを合意する行為です。

独占禁止法第2条第6項の「不当な取引制限」に該当し、違反した場合は課徴金の対象となります。

違法となる要件

要件内容
共同行為競合他社との意思の連絡(明示・黙示を問わない)
相互拘束価格に関する合意に基づき行動を拘束し合うこと
競争の実質的制限市場における競争が実質的に制限されること

電力カルテル事件(2023年)

2023年3月、公正取引委員会は電力会社に対して過去最高額の課徴金を命じました。

会社名課徴金額
中国電力約707億円
中部電力約201億円
中部電力ミライズ約73億円
九州電力約27億円
合計1,010億円

出典: 公正取引委員会 令和5年3月30日発表

カルテルの内容

2018年頃から、各社は「事業者向け電力」について互いの営業エリアで顧客獲得をしないよう申し合わせていました。

カルテルを主導した関西電力は、公正取引委員会への自主申告(リーニエンシー制度)により課徴金を免除されています。


再販売価格維持とは

定義

再販売価格維持(Resale Price Maintenance)とは、メーカーが卸売業者や小売業者に対して、商品の再販売価格を指定し、これを守らせる行為です。

不公正な取引方法として原則禁止されています。

禁止される行為の例

  • 小売業者に対して「この価格で販売せよ」と指示する
  • 指定価格を守らない小売業者への出荷停止
  • 価格を下げた小売業者への卸価格引き上げ
  • 「希望小売価格」を守らせるための圧力

例外:著作物の再販制度

以下の著作物については、再販売価格維持が認められています。

  • 書籍
  • 雑誌
  • 新聞
  • 音楽CD

これは、文化の保護・普及という政策目的に基づく例外です。

令和6年度の違反事例

事業者措置内容
関家具排除措置命令
日清食品警告
九州シジシー警告

出典: 公正取引委員会 令和6年度違反事件処理状況


課徴金制度

概要

独占禁止法違反に対しては、排除措置命令に加えて課徴金納付命令が出される場合があります。

課徴金の算定

違反類型算定率(大企業)
価格カルテル・入札談合売上高の10%
その他の不当な取引制限売上高の10%
支配型私的独占売上高の10%
排除型私的独占売上高の6%
不公正な取引方法(不当廉売等)売上高の3%

リーニエンシー(課徴金減免制度)

カルテルや入札談合について、公正取引委員会の調査開始前に自主申告した事業者は、課徴金が減免されます。

申告順位減免率
1番目全額免除
2番目50%減額
3番目以降30%減額(上限あり)

電力カルテル事件で関西電力が課徴金を免除されたのは、この制度によるものです。


SaaS・IT事業者への示唆

注意すべき場面

場面リスク対応策
競合との情報交換価格カルテルの疑い価格に関する情報共有を避ける
業界団体での会合暗黙の合意形成価格に関する議題を設定しない
原価割れキャンペーン不当廉売の疑い期間・目的を明確にし記録を残す
販売代理店への価格指示再販売価格維持「希望」に留め、強制しない

フリーミアムモデルと不当廉売

無料プランを提供するフリーミアムモデルは、それ自体が不当廉売に該当するわけではありません。

ただし、以下の場合は注意が必要です。

  • 有料プランの原価を著しく下回る価格で提供し続ける
  • 特定の競合を排除する目的での極端な低価格設定
  • 市場支配的地位を利用した略奪的価格設定

よくある質問(FAQ)

Q1. 競合より安く売ることは違法か?

競合より安く売ること自体は違法ではありません。

違法となるのは、「供給に要する費用を著しく下回る価格」で「継続的に」販売し、競争者の事業活動を困難にさせる場合です。効率化によるコスト削減で実現した低価格は問題ありません。

Q2. 業界イベントで競合と価格について話してしまった。問題か?

程度によりますが、価格に関する情報交換はカルテルの端緒となり得るため、避けるべきです。

特に以下は危険です:

  • 将来の価格改定に関する情報共有
  • 「このくらいの価格が適正」という合意形成
  • 特定顧客への提示価格の共有

Q3. 「希望小売価格」の設定は違法か?

「希望小売価格」の設定自体は違法ではありません。

違法となるのは、その価格を守らない販売店に対して、出荷停止や取引条件の不利益変更などの制裁を加えることです。あくまで「希望」であり、販売店が自由に価格を決められる状態を確保する必要があります。

Q4. 課徴金を払えば営業を続けられるのか?

課徴金の納付は罰金ではなく、違法行為によって得た経済的利得を剥奪する行政措置です。

課徴金に加えて、排除措置命令(違反行為の停止等)が出されます。また、悪質な場合は刑事告発の対象となり、役員に対して懲役刑が科される可能性もあります。


まとめ

主要ポイント

  1. 不当廉売: 原価を著しく下回る価格で継続的に販売し、競争者を排除する行為は違法
  2. 価格カルテル: 競合との価格合意は厳禁。電力カルテル事件では1,010億円の課徴金
  3. 再販売価格維持: メーカーは販売店の価格設定を強制できない

次のステップ

  • 価格設定プロセスに法務チェックを組み込む
  • 競合との接点がある場面で価格情報の共有を禁止するルールを策定
  • 販売代理店契約を見直し、価格拘束条項がないか確認

参考リソース

公正取引委員会

  • 独占禁止法の規制内容
  • 不当廉売に関する独占禁止法上の考え方
  • 流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針

違反事例

  • 電力カルテル事件(2023年3月)
  • 令和6年度 独占禁止法違反事件の処理状況

🔗

プライシング法制度ガイド

回タイトル
1独占禁止法と価格設定(この記事)
2景品表示法と価格表示
3下請法と価格交渉
4消費者契約法・特商法
5アメリカの価格規制
6EUの価格規制
7GDPR・価格パーソナライゼーション
8グローバルコンプライアンス

本記事はプライシング法制度ガイドシリーズの一部です。

この記事の著者

猪良 幸太郎

猪良 幸太郎

東京理科大学卒業後、国内独立系コンサルティングファームに入社し、IT・業務コンサルタント兼マネージャーとして業務最適化やシステム導入プロジェクトを経験。その後プライシングスタジオに入社し、執行役員兼ビジネス本部長として顧客のプライシング変革支援をリードする傍ら、自社の新規事業立ち上げの推進にも従事。

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目次

  • この記事でわかること
  • 基本情報
  • 独占禁止法と価格設定の関係
  • 不当廉売とは
  • 定義
  • 不当廉売の3要件
  • 「著しく下回る」とは
  • 正当な理由の例外
  • 価格カルテルとは
  • 定義
  • 違法となる要件
  • 電力カルテル事件(2023年)
  • カルテルの内容
  • 再販売価格維持とは
  • 定義
  • 禁止される行為の例
  • 例外:著作物の再販制度
  • 令和6年度の違反事例
  • 課徴金制度
  • 概要
  • 課徴金の算定
  • リーニエンシー(課徴金減免制度)
  • SaaS・IT事業者への示唆
  • 注意すべき場面
  • フリーミアムモデルと不当廉売
  • よくある質問(FAQ)
  • Q1. 競合より安く売ることは違法か?
  • Q2. 業界イベントで競合と価格について話してしまった。問題か?
  • Q3. 「希望小売価格」の設定は違法か?
  • Q4. 課徴金を払えば営業を続けられるのか?
  • まとめ
  • 主要ポイント
  • 次のステップ
  • 参考リソース
  • 公正取引委員会
  • 違反事例

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