Clay徹底解説:評価額31億ドル(約4,650億円)、GTMオートメーションの新王者を完全分析
AIサマリー
評価額31億ドル(約4,650億円)に到達したClayの全貌を徹底解説。7年間の苦闘、15ヶ月のウェイトリスト戦略、そして「高すぎる」という批判。100以上のデータソースと自然言語AIを組み合わせた革新的なGTMプラットフォームの光と影に迫ります。

3分でわかるClay
- 評価額: 31億ドル(約4,650億円)、2025年8月時点
- 核心技術: 100以上のデータソース + AIリサーチエージェント
- 導入効果: Anthropicはエンリッチメント率3倍、営業担当者は月40時間削減
- 課題: 「高すぎる」との批判、クレジット消費の不透明性
👉 詳細は下記で解説しています
2022年春、あるスタートアップのCEOは窮地に立っていました。
創業から5年。収益はほぼゼロ。チームは疲弊し、投資家の忍耐も限界に近づいていた。
そして2024年10月——同じスタートアップが**評価額31億ドル(約4,650億円)**でシリーズCを調達します。
「7年かけた一夜の成功」——CEOのKareem Aminは、この急成長をそう呼びます。
Notion、Figma、Anthropic、OpenAI——シリコンバレーの名だたる企業が、なぜこの「リードリサーチツール」に夢中になっているのか?
本記事は、そのClay(クレイ) と、創業者たちの「営業の非効率性」との7年間の戦いの物語です。
本記事の表記について
- 金額の日本円換算は1ドル=150円で計算しています
- 下線付きの用語にカーソルを合わせると解説が表示されます
この記事でわかること
- Clayのプロダクト: 100以上のデータソース統合とAIリサーチ機能の仕組み
- 創業者の背景: Microsoft、Wall Street Journal出身のCEOが見出した「営業の非効率性」
- 7年間の苦闘: 5年間の収益ゼロ、15ヶ月のウェイトリスト戦略、共同創業者の退社
- 導入企業のリアル: Anthropic、OpenAIが得た具体的な成果と数字
- 批判と限界: 「高すぎる」という声、クレジット消費への不満
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | Clay Inc. |
| 創業者 | Kareem Amin(Microsoft / WSJ出身)、Nicolae Rusan(McGill大学出身) |
| 設立年 | 2017年 |
| 評価額 | $3.1B(約4,650億円、2025年8月) |
| ARR | $100M(約150億円、2025年11月推定) |
| 主要顧客 | Notion、Figma、Anthropic、OpenAI、Intercom、Ramp、Vanta |
Clayの全体像Clayとは?営業の「時間泥棒」を排除するAI
営業チームが抱える「見えない重荷」
ある営業担当者の1日を想像してください。
朝9時、オフィスに到着。新しいリードリストを受け取りました。50社。それぞれについて、以下を調べる必要があります:
- LinkedInで意思決定者を特定
- Crunchbaseで資金調達状況を確認
- 企業HPで事業内容を把握
- ニュース記事で最新動向をチェック
1社あたり30分。50社で25時間。丸3日間、リサーチだけで終わります。
そして、その間に競合は同じリードにアプローチを終えている——。
Clayが提案する「新しい営業」
Clayは、この30分を数秒に短縮します。
会社名やドメインを入力するだけ。100以上のデータソースから、必要な情報が自動で収集されます。
コア技術は3つ:
-
100以上のデータソース統合
- LinkedIn Sales Navigator
- Crunchbase
- Apollo.io、ZoomInfo
- 企業Webサイトのスクレイピング
- ニュース記事・プレスリリース
-
Claygent(AIリサーチエージェント)
- GPT-4ベースの自然言語クエリ
- 「この会社の最近の資金調達ニュースを教えて」と質問すると自動回答
- ウェブ検索とデータ抽出を自動実行
-
ウォーターフォールエンリッチメント
- 複数のデータソースを順番に検索
- 1つのソースで見つからなければ次のソースへ自動フォールバック
- 最も正確で最新のデータを取得
主要機能一覧
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| リードエンリッチメント | 会社名やドメインから100以上のデータポイントを自動取得 |
| AIリサーチ(Claygent) | 自然言語でカスタムリサーチを実行 |
| AIメール作成 | パーソナライズされたアウトリーチメールを自動生成 |
| ワークフロー自動化 | データ取得→スコアリング→アウトリーチを完全自動化 |
| CRM連携 | Salesforce、HubSpot、Outreachとの双方向同期 |
ここまでが機能の説明です。しかし、なぜこのような「データ統合プラットフォーム」が生まれたのか? その答えは、創業者2人の10年以上にわたる起業の軌跡にあります。
創業者の物語:2度目のタッグが生んだ「粘土」
Kareem Amin——アカデミアを捨てた男
2008年、カナダ・モントリオール。
McGill大学で電気工学と物理学を学んでいたKareem Aminは、ある決断を迫られていました。
大学院の合格通知。神経科学と電気工学の修士課程。研究者への道が開かれていた。
しかし同時に、Microsoftからのオファーも届いていた。プログラムマネージャーとして、シアトルで働かないか——。
Kareemは大学院を辞退します。
アカデミアの安定した道を捨て、ビジネスの世界へ。この決断が、後のClayに繋がる営業・プロダクトの経験を積むきっかけとなりました。
Nicolae Rusan——McGill大学で出会った盟友
Kareemの大学時代のクラスメイトが、Nicolae Rusanでした。
経済学、政治学、そしてコンピューターサイエンスを学ぶ異色の学生。KareemがMicrosoftに入社した後、NicolaeもMicrosoftでプロダクトマネージャーとして働き始めます。
2人は大学時代からの盟友でした。
Frame:最初の起業、そして売却
2011年、2人は最初の会社を立ち上げます。Frame——タブレット向けeコマースUX最適化ツール。
翌年、FrameはSailthruに買収されます。
成功でした。しかし、2人は別々の道を歩み始めます。
KareemはWall Street JournalでVP of Productに就任。ニュース業界でプロダクト責任者としての経験を積みます。NicolaeはNewsCorp(WSJの親会社)でVP of Productとして働きました。
そして2017年——2人は再びタッグを組みます。
「魔法のスプレッドシート」という夢
"Clayは粘土(clay)のように、全てを中途半端にカバーするのではなく、特定の形に成形される必要がありました。"
— Kareem Amin, CEO
最初のビジョンは「魔法のスプレッドシート」でした。プログラミングをより身近にし、すべてのデータを1箇所に集める——。
しかし、このビジョンには致命的な問題がありました。
ICPが「誰でも」になってしまったのです。
ファイナンス、リクルーター、マーケター——あらゆる職種に中途半端に対応。どの市場でも「2番手」にしかなれない。
5年間、収益はほぼゼロでした。
ピボットの決断——営業(GTM)への特化
転機は自社の営業活動でした。
"営業担当者が1日の半分をリサーチに費やしている。これは明らかにおかしい。AIがこの作業を数秒で完了できれば、営業はより本質的な仕事——顧客との関係構築——に集中できる。"
— Kareem Amin, CEO
「魔法のスプレッドシート」から「GTMオートメーションプラットフォーム」へ。
Clayは粘土のように、特定の形に成形されました。
"市場にはツール疲れがありました。いくつかのツールを置き換えられるものを作れば、常に買い手がいます。Clayの成功は、顧客の声を聞き、本当に機能するものを作り上げた『じっくり燃える炎』でした。"
— Kareem Amin, CEO
創業者の「5年間の苦闘」から生まれたClay。では、どのようにして「7年かけた一夜の成功」を達成したのでしょうか?
急成長の軌跡:5年の沈黙、2年の爆発
「7年かけた一夜の成功」
2017年創業。2022年春まで、収益はほぼゼロ。
2022年2月、ClayはProduct Huntに公開ローンチします。
そして——爆発が始まりました。
| 時期 | ARR | 顧客数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2022年春 | ほぼ$0 | 120社 | Product Huntローンチ前 |
| 2022年末 | 推定$3M(約4.5億円) | 1,000社以上 | 10倍成長 |
| 2023年末 | 推定$30M(約45億円) | - | さらに10倍成長 |
| 2024年末 | $30M公式発表 | - | - |
| 2025年11月 | $100M(約150億円)推定 | 8,000社以上 | Sacra推定 |
15ヶ月間のウェイトリスト——大胆な賭け
Product Hunt後、大量のユーザーが流入しました。
普通のスタートアップなら、全員を受け入れるでしょう。しかしKareemは逆の決断をします。
ウェイトリストを再び有効化。そして15ヶ月間維持しました。
なぜか?
"ウェイトリストを再び有効にしたのは、初期の最良の決断の1つでした。これにより、大量のユーザーを受け入れる前にGTMマシンを微調整する時間が得られました。"
— Kareem Amin, CEO
大量の新規ユーザーが流入すると、フィードバックが「ノイズ」になる。適切でないユーザーからの要望が多く、本当に価値のあるシグナルが埋もれてしまう。
ウェイトリストを閉じたのは、ARRが数百万ドルに達した後でした。
この期間中にプロダクトを磨き上げ、2022年に売上10倍、2023年にさらに10倍を達成します。
Slackコミュニティが生んだバイラルループ
もう一つの秘密は、コミュニティ戦略でした。
2022年、Clayは全顧客をSlackグループに招待します。当初約200人。「カスタマーサポートのコスト削減策」として始まったものでした。
しかし、これが思わぬ効果を生みます。
2026年現在、コミュニティは15,000〜20,000人に成長。「秘密兵器」へと進化しました。
バイラルループの仕組み:
- ユーザーがClayのワークフローをLinkedInでシェア
- 自分を「エキスパート」として位置付け
- 結果としてClayの認知度が自然に向上
- 新規ユーザーがコミュニティに参加
- ループの繰り返し
チームメンバーと顧客が毎日LinkedIn投稿。ライブショーを開催し、リアルタイムでアウトバウンドの課題を解決。マーケティング費用をほぼかけずに、オーガニックな需要を創出しました。
資金調達の歴史
Clayの成長タイムライン| ラウンド | 日付 | 調達額 | 評価額 | 主要投資家 |
|---|---|---|---|---|
| Seed | 2019年 | $1.6M(約2.4億円) | - | Y Combinator、SV Angel |
| Series A | 2022年6月 | $8M(約12億円) | - | Sequoia Capital |
| Series B | 2024年3月 | $46M(約69億円) | $500M(約750億円) | Meritech Capital主導 |
| Series B Expansion | 2025年1月 | $40M(約60億円) | $1.25B(約1,875億円) | Meritech Capital主導 |
| Series C | 2025年8月 | $100M(約150億円) | $3.1B(約4,650億円) | CapitalG(Google)主導 |
※日本円換算は1ドル=150円で計算
総調達額:約$195M以上(約293億円超)
評価額は、2024年3月の$500Mから2025年8月の$3.1Bへ——わずか17ヶ月で6倍以上に急騰しました。
Sequoia Capitalが見た「可能性」
Sequoia Capitalのパートナーは、Clayへの投資理由を次のように説明しています:
"Clayは単なるデータツールではない。GTM全体のワークフローを根本から変革するプラットフォームだ。100以上のデータソースを統合し、AIで自動処理するという発想は、私たちが見てきた中で最もエレガントなソリューションの一つだ。"
用語解説: ARR(Annual Recurring Revenue)とは、サブスクリプション型ビジネスにおける年間の定期収益を指します。SaaS企業の成長指標として最も重視される数値です。
数字だけでは伝わらない。実際に導入した企業は、どのような成果を得ているのか? 具体的な事例を見てみましょう。
導入事例:Anthropic、OpenAIが得た成果
顧客企業一覧
- テック企業: Notion、Figma、Intercom、Vanta、Ramp
- AI企業: Anthropic、OpenAI
- 大企業: 多数のFortune 500企業
Anthropic——エンリッチメント率3倍の衝撃
Claude AIを開発するAnthropicは、2023年から急成長していました。企業向けの引き合いが殺到。しかし、営業チームの拡大が追いつきません。
課題: 手動でのリードリサーチがボトルネックに。優秀な営業担当者が、データ入力作業に追われていました。
Clay導入後:
- エンリッチメント率を単一プロバイダー比で3倍に向上
- 手動作業なしで実現
- 営業チームが高レバレッジ活動(見込み客との直接対話)に時間を割けるように
興味深い事実: AnthropicとClayは相互に顧客関係にあります。AnthropicはClayを使い、ClayはAnthropicのClaude AIを使っています。
関連記事: Anthropicの技術について詳しく知りたい方は「Claude Computer Use徹底解説」もご覧ください。
OpenAI——エンリッチメントカバレッジ2倍
ChatGPTの開発元OpenAIも、Clayの顧客です。
Clay導入後:
- エンリッチメントカバレッジが40%台から80%台に倍増
- 手動作業なしで達成
Oyster——営業1人あたり月40時間節約
課題: 営業担当者がリードリサーチに多大な時間を費やしていた。
Clay導入後:
- 各営業担当者が月40時間を節約
- より高価値な活動に集中できるように
- 全体的な効率が劇的に向上
月40時間——週10時間、1日2時間をリサーチから解放されたことになります。
Rootly——1日50通のパーソナライズメール
課題: 営業チームの人員が限られており、大規模な手動アウトリーチは不可能。
Clay導入後:
- 1日あたり50通以上の高度にパーソナライズされたメールを送信可能に
- 少ないリソースで大規模営業チームの生産性を実現
- リードスコアリングとリアルタイムインシデント監視により、高価値アカウントへの正確なターゲティング
ServiceBell——1日で10件のミーティング予約
Clayを使用して適格リードを見つけた結果、1日で10件のミーティングを予約。
Pylon——「もうClayなしでは生きられない」
Pylonのマーティ・カウサスはこう語ります:
"もうClayなしでは生きられない"
— Marty Kausas, Pylon
顧客オンボーディングを完全自動化し、1日あたり最低30分を節約しています。
デジタルマーケティングエージェンシー——コンバージョン率2倍
Clayのリードスコアリング導入後、リードコンバージョン率が20%から40%に向上(3ヶ月間)。
ここまで読むと、Clayは万能のように見えます。しかし、すべてがうまくいっているわけではありません。
批判的評価と限界:「高すぎる」という声
共同創業者の退社
2023年5月、衝撃的なニュースがありました。
共同創業者のNicolae RusanがClayを退社。新しいスタートアップToolkit AIを創業しました。
創業から6年間、苦楽を共にした盟友との別れ。「7年かけた一夜の成功」の直前でした。
退社の詳しい理由は公開されていません。しかし、この事実は「すべてが順調ではない」ことを示唆しています。
価格への強烈な批判
Clayに対する最も頻繁な不満は、価格です。
"Clayは非常に高価——単に『このツールはお金がかかる』という意味ではなく、『予算を全て使い果たした』という意味で高価"
— Warmly.ai(業界分析)
「結果ではなく、試行に課金」問題
批判の核心は、クレジット消費の不透明性にあります。
主要な批判ポイント:
-
データが見つからなくても課金される
- 検索の「試行」に対してクレジットが消費される
- 結果ではなく、プロセスに課金される仕組み
-
学習コストが金銭的負担に
- 新規ユーザーは使い方を学ぶ過程でクレジットを大量消費
- 「ツールの使い方を学ぶために数百ドル払っている」状態
-
予測不可能なコスト
- 成功したキャンペーンや忙しい月には、予期せぬクレジット追加購入が発生
- 月額800ドルプランでもCRM連携が必要な場合が多く、基本機能だけで高額
Redditでの生の声
"会社に75,000クレジットがあるが、ClayとZoomInfoであっという間に消費している"
— RevOps専門家、Reddit
"Clayは実用的には高すぎる。APIを直接つなぐ開発者を雇った方が安い"
— Reddit ユーザー
技術的複雑性への批判
主要な課題:
-
急な学習曲線
- 非技術系チームメンバーがすぐに使いこなすのは困難
- 「スプレッドシートの専門家でないと、投資の価値を最大化できない」
-
スケーラビリティの問題
- ワークフローが複雑になると、スプレッドシートUIが圧倒的に扱いにくくなる
- 列が多数になると管理が困難
-
「営業向けではなくOps向け」
- 技術的専門知識が必要
- 常にメンテナンスとトラブルシューティングが必要
データ品質への懸念
Clayの「ウォーターフォールエンリッチメント」は強力ですが、裏目に出るケースもあります。
具体的な問題:
-
データの不一致
- Apollo、Clearbitなど異なるベンダーのデータを統合する際、情報が矛盾することがある
- 古いレコード、不完全なプロフィール、衝突する情報が混在
-
データ所有権の欠如
- Clayは自社でデータを保有していない(すべて外部ソース依存)
- コンプライアンス、正確性、鮮度の保証が難しい
-
コンプライアンスリスク
- Clay自体はGDPR/CCPA準拠
- しかし、ウォーターフォールで使用されるサードパーティプロバイダーはコンプライアントではない場合がある
Clayが苦手とする4つの領域
-
日本市場のデータ
- Clayは主に英語圏のデータソースを統合
- 日本企業のデータ取得には限界あり
- 企業Webサイトのスクレイピングは日本語対応
-
SMB(中小企業)向け営業
- Clayは中〜大規模企業向けに最適化
- 個人事業主や小規模企業のデータは不足しがち
-
リアルタイムデータが必要な場合
- データの更新頻度には限界がある
- 「今日の株価」のようなリアルタイム情報は苦手
-
複雑なカスタム要件
- 標準的なユースケースには強い
- 極めて特殊な業界固有の要件には対応しきれない場合も
導入前に確認すべき3つの質問
Clayの導入を検討する際は、以下を自問してください:
-
ターゲット市場は英語圏か? → 日本市場中心なら、データの充実度を事前に確認
-
リード数は月間100件以上か? → 少量のリードなら、手動リサーチの方がコスト効率が良い場合も
-
クレジット消費を管理できるOps人材がいるか? → 「試行課金」を理解し、最適化できる人材が必要
これらの限界を理解した上で、Clayは競合と比べてどこが優れているのか? 競合分析を見てみましょう。
競合との差別化
主要競合との比較
| 項目 | Clay | Apollo.io | ZoomInfo | LinkedIn Sales Navigator |
|---|---|---|---|---|
| データソース数 | 100+ | 50+ | 100+ | LinkedIn中心 |
| AI機能 | ◎ 高度 | ○ 基本的 | ○ 基本的 | △ 限定的 |
| カスタマイズ性 | ◎ 非常に高い | ○ 中程度 | ○ 中程度 | △ 低い |
| 価格帯 | 中〜高 | 低〜中 | 高 | 中 |
| ターゲット | 成長企業〜大企業 | SMB〜中堅 | 大企業 | 全規模 |
データ精度の比較
| プラットフォーム | メール精度 | 電話番号精度 | 検証方式 |
|---|---|---|---|
| Apollo | 85% | 65% | アルゴリズム |
| ZoomInfo | 95% | 92% | 人間による検証 |
| Clay | 90%以上 | - | ウォーターフォール |
OpenAIの事例では、Clayに移行後エンリッチメントカバレッジが40%から80%に向上しました。しかし、単一ソースの精度を求める場合はZoomInfoの方が優れているという評価もあります。
競合比較Clayの4つの競争優位性
- AIネイティブ設計: 最初からAIを前提に設計されたプラットフォーム
- 柔軟なワークフロー: ノーコードで複雑な自動化が可能
- データソースの多様性: 単一ソースに依存しないウォーターフォール方式
- コミュニティ: 15,000〜20,000人の活発なSlackコミュニティによるテンプレート共有
使い分けの指針
- Apollo.io: 予算が限られるSMBに最適
- ZoomInfo: 大企業向けの包括的データ、高精度が必要な場合
- LinkedIn Sales Navigator: LinkedInデータが中心の場合
- Clay: AIによる自動化と柔軟なワークフローが必要な成長企業
Clayの現在地を理解しました。では、今後どこに向かおうとしているのか?
今後の展開
2024-2025年の主要動向
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年3月 | Series B $46M(約69億円)調達 |
| 2024年7月 | Claygent(AIエージェント)大幅アップデート |
| 2025年1月 | Series B Expansion $40M(約60億円)調達、評価額$1.25B |
| 2025年8月 | Series C $100M(約150億円)調達、評価額$3.1Bに |
| 2025年11月 | Enterprise向け機能強化、SOC 2 Type II取得 |
用語解説: SOC 2 Type IIとは、サービス組織のセキュリティ・可用性・処理の完全性などを評価する国際的な監査基準です。企業向けSaaSにとって重要な信頼性の証明となります。
今後のロードマップ
Clay導入フロー- Enterprise機能の拡充: 大企業向けセキュリティ・コンプライアンス機能
- AIエージェントの進化: より複雑なリサーチタスクへの対応
- グローバル展開: ヨーロッパ・アジア市場への進出(日本市場も視野に)
ここまで読んで、まだ疑問が残っていませんか?よくある質問をまとめました。
よくある質問(FAQ)
Q1. Clayの料金プランはどうなっていますか?
Clayは無料プランから始められます。有料プランは月額$149から。Enterprise向けにはカスタム価格が設定されています。
| プラン | 月額 | 特徴 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 機能制限あり、お試し用 |
| Starter | $149(約22,000円) | 小規模チーム向け |
| Explorer | $349(約52,000円) | 成長企業向け |
| Pro | $800(約120,000円) | 大規模チーム向け |
| Enterprise | カスタム | 専用サポート、セキュリティ強化 |
注意: 月額料金とは別に、クレジット消費による追加コストが発生します。特に学習段階では予想以上のクレジット消費に注意が必要です。
Q2. Clayと従来のCRMツールの違いは何ですか?
CRMはデータを「保管」するツールです。一方、Clayはデータを「収集・エンリッチ・活用」するプラットフォームです。Salesforce等のCRMと連携して使用します。
ワークフローの例:
- Clay: リードデータを収集・エンリッチ
- Clay: スコアリング・優先順位付け
- Salesforce: エンリッチされたデータを保管・管理
- Outreach: パーソナライズされたメールを送信
Q3. 日本語のデータにも対応していますか?
Clayは主に英語圏のデータソースを統合しています。日本企業のデータ取得には限界がありますが、以下は対応しています:
- 企業Webサイトのスクレイピング: 日本語サイトも対応
- AIリサーチ(Claygent): 日本語での質問・回答が可能
- グローバル企業のデータ: 日本法人を持つ多国籍企業のデータは取得可能
Q4. Claygent(AIエージェント)は何ができますか?
自然言語で「この会社の最新の資金調達情報を教えて」と質問すると、Webを検索して回答を返します。GPT-4ベースで、カスタムリサーチを自動化できます。
使用例:
- 「この会社のCEOのLinkedInプロフィールを要約して」
- 「最近のプレスリリースから主要な製品アップデートを抽出して」
- 「競合他社との差別化ポイントを3つ挙げて」
注意: AIアクションは1回の実行で最大25クレジットを消費することがあります。
Q5. 競合のApollo.ioやZoomInfoと比べてClayを選ぶべき理由は?
Clayの強みは「AIネイティブ設計」と「100以上のデータソース統合」です。特に、以下の場合にClayが最適です:
- 複雑なワークフローをノーコードで構築したい
- 複数のデータソースを組み合わせて使いたい
- AIによるカスタムリサーチが必要
予算重視ならApollo.io、大企業向け高精度データならZoomInfoが選択肢です。
まとめ:Clayは「営業の第二の脳」になれるか?
冒頭の問いに戻りましょう。
2022年春、収益ゼロで窮地に立っていたスタートアップ。2024年10月には評価額31億ドル——この「7年かけた一夜の成功」は、どう評価すべきでしょうか?
答えは、「光と影の両面がある」 です。
光の部分
- Anthropic: エンリッチメント率3倍向上
- OpenAI: エンリッチメントカバレッジ2倍
- Oyster: 営業1人あたり月40時間節約
- 15ヶ月のウェイトリスト: プロダクトを磨き上げる忍耐
- Slackコミュニティ: 15,000〜20,000人のバイラルエンジン
影の部分
- Nicolae Rusan退社: 創業者チームの変化
- 価格批判: 「予算を全て使い果たした」という声
- クレジット消費: 結果ではなく試行に課金
- 学習コスト: ツールを学ぶために数百ドル
Clayの本質
Clayは「AIがリサーチを代行する」ツールではありません。
「営業チームの第二の脳」 として、情報収集・分析・アクション提案を自動化するプラットフォームです。
ただし、その「脳」を使いこなすには、適切なOps人材と予算管理が必要です。
主要ポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 創業者 | Kareem Amin(Microsoft / WSJ出身)、Nicolae Rusan(McGill出身、2023年退社) |
| 技術 | 100以上のデータソース統合 + AIエージェント(Claygent) |
| 実績 | ARR $100M推定、顧客8,000社以上、Anthropic・OpenAI導入 |
| 限界 | 高価格、クレジット消費の不透明性、日本市場データの不足 |
| 評価額 | $3.1B(約4,650億円、2025年8月) |
| 料金 | 無料〜$800/月、Enterpriseはカスタム(別途クレジット消費あり) |
次のステップ
- 営業リーダー: Clayの無料プランでリードエンリッチメントを試す(クレジット消費に注意)
- RevOps担当者: 自社のGTMワークフローで自動化できる部分を洗い出す
- 意思決定者: Anthropic、OpenAIの事例を参考に、クレジット消費を含めたROI試算を行う
関連記事
参考リソース
Clay公式
成長ストーリー
- Clay's Path to Product-Market Fit — First Round Review
- The GTM Inflection Points That Powered Clay to a $1B+ Valuation
- How Clay used Slack to grow to $1.25B
批判的評価
- Clay Pricing: Is It Worth It in 2026?
- Clay Review 2026: Features, Pros & Cons - La Growth Machine
- Are You Burning Money on Clay Credits?
本記事はネクサフローのAI研究シリーズの一部です。
この記事の著者

中村 知良
代表取締役
早稲田大学卒業後、ソフトバンク株式会社にてAI活用やCEO直下案件のプロジェクトマネージャーに従事。その後、不動産スタートアップPit in株式会社の創業、他スタートアップでの業務改善・データ活用を経験後、2023年10月、株式会社ネクサフローを創業し代表取締役CEO就任。


