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ホーム/スタートアップ分析/Gong徹底解説:評価額77億ドル、会話インテリジェンスの王者を完全分析
Gong徹底解説:評価額77億ドル、会話インテリジェンスの王者を完全分析

Gong徹底解説:評価額77億ドル、会話インテリジェンスの王者を完全分析

53分で読める|2026/01/18|
AISales会話インテリジェンススタートアップGong

AIサマリー

評価額77億ドル、4,000社以上が導入する会話インテリジェンスの王者Gongを徹底解説。AIが営業会話をどう変革するのか、創業者の哲学と成長の軌跡に迫ります。

「営業は芸術か、科学か?」

長年、この問いに明確な答えはありませんでした。トップセールスの秘訣は「センス」や「経験」という曖昧な言葉で片付けられてきたのです。

2015年、2人のイスラエル人起業家がこの常識に挑戦しました。

1人はイスラエル国防軍(IDF)の装甲部隊出身。もう1人は諜報部門でソフトウェア開発に従事した経験を持つ。どちらも「ブラックボックスを開ける」ことに命を懸けてきた男たちでした。

彼らの答えは明快でした。

「営業通話を全て録音し、AIで分析すれば、成功の法則が見えてくる」

6年後、この仮説は評価額77億ドル(約1.2兆円)という数字で証明されます。LinkedIn、HubSpot、Zendesk——名だたるSaaS企業が次々と導入。「ブラックボックス」だった営業の世界に、光が差し込み始めました。

しかし、物語はそこで終わりません。

2025年、評価額は**$4.5B(約6,750億円)に下落**——ピーク時から40%減。従業員の66%が「監視に不快感」 を抱いている。華々しい成功の裏には、見落とされがちな影もありました。

本記事は、その会社「Gong」と、営業の「科学化」を推し進めた創業者たちの光と影の物語です。

本記事の表記について

  • 金額の日本円換算は1ドル=150円で計算しています
  • 下線付きの用語にカーソルを合わせると解説が表示されます

この記事でわかること

  1. 創業者の哲学: イスラエル国防軍出身の2人が「営業通話の録音」に賭けた理由
  2. 技術とプロダクト: 会話インテリジェンスがどのように営業を変革するのか
  3. 成功と限界の両面: Forrester認定481% ROIの実績と、監視文化への懸念

基本情報

項目内容
会社名Gong.io, Inc.
設立年2015年
本社サンフランシスコ(研究開発はイスラエル・テルアビブ)
従業員数約1,200名
評価額$7.7B(約1.2兆円、2021年6月) → $4.5B(2025年11月)
総調達額$584M(約876億円)
顧客数4,000社以上
Gongの全体像Gongの全体像

Gongとは?「営業のブラックボックス」を開けるAI

営業組織が抱えていた根本的な問題

ある営業チームを想像してください。10人のメンバーがいます。

トップセールスの田中さんは毎月予算の150%を達成。一方、新人の佐藤さんは50%にも届かない。

マネージャーは頭を抱えます。「田中さんは何をしているのか?」

田中さんに聞くと、「お客様の話をよく聞いています」と答える。しかし、それでは佐藤さんは何も学べません。

  • 営業通話の内容は「ブラックボックス」だった
  • マネージャーが全ての通話を聞くことは不可能
  • 成功する営業と失敗する営業の違いが言語化されていない
  • VoC(顧客の声) が定量化されていない

これが、2015年まで世界中の営業組織が抱えていた問題でした。

Gongのソリューション:会話インテリジェンス

会話インテリジェンスとは、営業会話をAIで分析する技術です。営業通話、ビデオ会議、メールなどを録音・文字起こしし、パフォーマンス向上に活用します。

Gongは、この問題にシンプルな解決策を提示しました。

「全ての営業通話を録音し、AIで分析する」

┌─────────────────────────────────────────────┐
│              Gong Platform                   │
├─────────────────────────────────────────────┤
│  ┌─────────────────────────────────────┐    │
│  │     Recording & Transcription       │    │
│  │  (通話/会議の録音・文字起こし)        │    │
│  └─────────────────────────────────────┘    │
│  ┌─────────────────────────────────────┐    │
│  │     AI Analysis Engine              │    │
│  │  (会話パターン、感情、トピック分析)    │    │
│  └─────────────────────────────────────┘    │
│  ┌─────────────────────────────────────┐    │
│  │     Insights & Recommendations      │    │
│  │  (コーチング、予測、ベストプラクティス) │    │
│  └─────────────────────────────────────┘    │
│  ┌─────────────────────────────────────┐    │
│  │     Integrations                    │    │
│  │  (Salesforce, HubSpot, Zoom等)       │    │
│  └─────────────────────────────────────┘    │
└─────────────────────────────────────────────┘

Gongが明らかにした「成功の法則」

Gongのデータ分析は、営業の常識を覆す発見をもたらしました。

1. 話者分析

トップセールスは「よく話す人」ではありませんでした。

  • 営業担当者と顧客の理想的な発話比率は43
  • 成約率が高い営業は「聞く時間」が長い
  • 沈黙の使い方にも成功パターンがある

2. 質問の法則

  • 成約する営業は1回の通話で11〜14個の質問をする
  • 質問が15個を超えると成約率が下がる(尋問のように感じられる)
  • 質問の「種類」も重要(オープン質問 vs クローズド質問)

3. 価格交渉のタイミング

  • 価格の話題を通話の後半40%で出す営業は成約率が高い
  • 早すぎると「高い」と言われ、遅すぎると決断を先延ばしにされる

これらは「勘」や「経験」ではなく、数十億件の会話データから導き出された統計的事実です。

なぜこのような「ブラックボックスを開ける」発想が生まれたのか?答えは、創業者2人の異常な経歴にあります。


創業者の物語:「ブラックボックスを開けろ」

Amit Bendov(CEO)——装甲部隊から連続起業家へ

Amit Bendovは、イスラエルのテック業界で知らない人はいない連続起業家です。

しかし、その原点はイスラエル国防軍(IDF)の装甲部隊でした。

イスラエルでは、18歳で徴兵される。優秀な人材はUnit 8200(サイバー諜報部隊) などのインテリジェンス部門に配属される。そこで培われた「情報を集め、分析し、意思決定する」という思考が、後のキャリアの基盤となります。

Gong創業前、彼はSiSenseのCEOを務めていました。BI(ビジネスインテリジェンス)の会社で、経常収益を3年で100倍に成長させた実績を持つ成功企業です。

SiSenseでAmitは、ある信念を確立しました。

"In God we trust. All others must bring data."

「神は信じる。それ以外は、データを持ってこい」

— Amit Bendov(W. Edwards Demingの言葉を引用)

データドリブン経営の権化。仮説ではなく、数字で語る。

しかし、彼には1つの疑問がありました。

「なぜ営業だけは、データで語れないのか?」

マーケティングにはGoogle Analytics。財務にはERP。製品開発にはA/Bテスト。あらゆる部門がデータで意思決定している時代に、営業だけが「センス」と「経験」で語られていたのです。

「手がかりは通話の中にあった」

SiSense時代、Amitはある体験をしました。

ある四半期、CRMのデータは良好だった。パイプラインも動いていた。しかし、取引が成立しなかった。

彼は数十件の営業通話を自ら録音して聞いた。すると、貴重な手がかりが見つかった。

「これをより効率的に行う方法があるはず」

この気づきが、Gong創業の原点でした。

Eilon Reshef(CPO)——諜報部門からプロダクトの魂へ

Eilon Reshefは、NLP(自然言語処理) の専門家です。

しかし、その原点もまたイスラエル国防軍でした。

1990年から1993年、彼はIDF諜報部門でソフトウェア開発者・プロダクトオーナーとして勤務。インテリジェンス業務——すなわち「見えないものを見えるようにする」仕事に従事していました。

Technion(イスラエル工科大学) でコンピュータサイエンス学士(Summa cum laude)。Weizmann Institute of Scienceで修士号(Summa cum laude)。彼の専門は「人間の言葉を機械に理解させること」でした。

Gong創業前、ReshefはWebcollageの共同創業者として、P&G、Microsoft、L'Oréalなどの大手ブランドと、Amazon、Best Buy、Walmartなどの小売サイトを接続するeコマースインフラを構築。2013年にAnswersに売却されました。

軍事インテリジェンスからビジネスインテリジェンスへ

AmitとEilonは、イスラエルのテック業界で長年の同僚でした。

2人とも営業組織のマネジメント経験があり、ある共通の悩みを抱えていました。そして2人とも、「ブラックボックスを開ける」ことが仕事だった過去を持つ。

軍事インテリジェンスでは、敵の動きを分析し、見えないものを見えるようにする。

ビジネスインテリジェンスでは、顧客の声を分析し、見えないものを見えるようにする。

発想の転換は、自然なものでした。

「なぜ田中さんは売れるのか?」への回答

2人が出した答えは、シンプルでした。

"We've been in sales for decades. What the best salespeople do, why they succeed, has always been a black box. Gong is the tool to open that black box."

「本業界に何十年も身を置いてきました。最高の営業担当者が何をしているのか、なぜ成功するのかは常にブラックボックスでした。Gongは、そのブラックボックスを開けるツールです」

— Amit Bendov, CEO

営業通話を録音し、AIで分析すれば、「田中さんが何をしているか」が数字で分かる。

  • 田中さんは顧客の話を**平均57%**聞いている
  • 田中さんは12個の質問をしている
  • 田中さんは価格の話を**通話の後半35%**で切り出している

これを新人の佐藤さんに教えれば、「センス」は不要になる。

「営業は芸術ではなく、科学だ」

この確信のもと、2015年、Gongは創業されました。

創業1年目の「ロケット」

最初の製品はシードマネー100万ドルで3ヶ月で開発されました。

Reshefは創業初期、約50人のバイヤーにインタビューを実施。その後、12のデザインパートナー(Gongの理想的な顧客プロファイルを体現する営業担当者)と提携。

結果、「わずか数ヶ月でプロダクト・マーケット・フィットを見つけた」 と彼は語っています。

創業1年後、Bendovはこう言いました:

"Hardly a year since our first sales and it clearly feels like we're on a rocket ship. Conversation Intelligence is the biggest shift in sales since CRM was introduced."

「最初の営業からわずか1年ですが、ロケットに乗っているような感覚です。会話インテリジェンスは、CRM導入以来の営業における最大の変革です」

創業1年目の実績:

  • 4四半期連続で収益が2倍以上に成長
  • 数千人の営業担当者が使用
  • 10億ドル以上の商談をサポート

「営業通話を全て録音する」というアイデアは、当時の常識では受け入れられにくいものでした。しかし、LinkedInやHubSpotが次々と導入を決めます。なぜか?


エンタープライズ導入事例:「科学的営業」の実践

Forrester認定:ROI 481%の衝撃

成功事例を語る前に、1つの数字を共有します。

2021年6月、Forrester Researchが独立調査を実施しました。複数企業の経営幹部へのインタビューと財務分析に基づく、客観的なROI検証です。

調査対象(コンポジット組織):

  • 米国本社のB2B SaaS企業
  • 年間収益:$800M(約1,200億円)
  • 平均案件規模:$20,000(約300万円)
  • 営業組織:750人

結果:

指標数値
ROI481%
NPV(正味現在価値)$10M(約15億円)
総便益(3年間)$12.1M(約18.2億円)
総コスト(3年間)$2M(約3億円)
時間節約による価値$4.2M(約6.3億円)
オンボーディング時間短縮50%

※日本円換算は1ドル=150円で計算

481%のROI——投資した金額の約5倍のリターン。これが第三者機関による検証結果でした。

では、具体的にどのような企業がどのような成果を上げたのか?

Iron Mountain——「新人営業の成約率566%改善」

文書管理のグローバル企業Iron Mountainは、ある課題を抱えていました。

課題:

  • 新人営業が主要指標を達成するのに時間がかかる
  • トレーニングとコーチングの効率が低い
  • 「ダブルクラブ」(2つの主要KPI達成)率が極めて低い

彼らはGongを導入しました。

導入前:新人営業の9%のみが最初の5ヶ月で2つの主要指標を達成

導入後:60%の新人営業が最初の5ヶ月で2つの主要指標を達成

566%の改善——数字は嘘をつきません。

さらに、新人営業が最初の指標を達成するまでの時間が3ヶ月短縮されました。

LinkedIn——「新人が4ヶ月で一人前になる」

LinkedInの営業組織は、ある課題を抱えていました。

課題:

  • 大規模な営業組織で一貫したセールスメソドロジー(営業手法) を維持できない
  • 新人営業の立ち上げに6ヶ月以上かかる
  • トップセールスのベストプラクティスが共有されていない

彼らはGongを導入しました。

結果:

全ての営業通話がGongで分析され、トップセールスの「成功パターン」が可視化されました。

  • 新人の立ち上げ時間を30%短縮(6ヶ月→4ヶ月)
  • Win Rate(成約率) が15%向上
  • コーチングの効率が大幅に改善

マネージャーはもう、全ての通話を聞く必要がなくなりました。Gongが「この通話は要確認」と教えてくれるからです。

HubSpot——「なぜ負けたのか、数字で分かる」

HubSpotは、SaaS業界の雄です。しかし、彼らにも悩みがありました。

課題:

  • 商談のパイプライン(商談管理) 予測精度が低い
  • 失注理由の分析に時間がかかる
  • 競合情報の収集が属人的

Gong導入後の変化:

Gongは全ての営業通話を分析し、「競合メンション(言及)」を自動検出しました。

  • 「Salesforceと比較されている」→ 自動でフラグ
  • 「価格が高いと言われた」→ 自動で分類
  • 「機能Xが欲しいと言われた」→ 製品チームにフィードバック

結果:

  • 予測精度が向上
  • 失注分析の自動化(以前は営業担当者の自己申告に依存)
  • 競合情報が「リアルタイム」で収集される

「勝てる理由」が数字で分かる世界

導入前導入後(Gong)
「なぜ負けた?」→「価格だと思います」(推測)「なぜ負けた?」→「価格言及が3回、競合言及が5回」(事実)
トップセールスの秘訣→「よく聞くことです」(曖昧)トップセールスの秘訣→「発話比率43%、質問12個」(数字)
新人教育→「先輩の商談に同行して」(属人的)新人教育→「成功した商談を10件聞いて」(再現可能)

LinkedInもHubSpotもIron Mountainも、同じ結論に達しました。

「営業は、科学にできる」

しかし、Gongは本当に万能なのでしょうか?華々しい成功事例の裏には、見落とされがちな課題もあります。


批判的評価と限界:「科学化」の落とし穴

監視文化への懸念——従業員の66%が不快感

Gongの本質は「全ての営業通話を録音する」ことです。これは、避けられない問題を生みます。

業界全体のトレンド:

  • Gartner調査:2025年までに大企業の60%が職場監視技術を導入
  • 78%の雇用主が従業員活動を追跡するソフトウェアを使用

従業員側の懸念:

  • **従業員の66%**が監視ソフトウェアに不快感を感じている
  • 従業員の半数近くが監視を職場ストレスの主要原因として挙げる
  • 85%の従業員が、雇用主は監視慣行を法的に開示すべきと考えている

2026年の予測として、業界アナリストはこう述べています:

"If 2025 was the year of increased workplace monitoring, 2026 will be the year employees push for transparency of surveillance."

「2025年が職場監視の増加の年だったとすれば、2026年は従業員が監視の透明性を求める年になるだろう」

監視は生産性向上と誠実性維持を目的としています。しかし、逆効果を生む可能性もあります:

  • 創造性の抑制
  • 生産性の低下(皮肉にも)
  • プライバシー侵害への懸念

プライバシーへの懸念——GDPR対応の課題

顧客側の懸念:

  • 「この会話は録音されています」という通知が与える印象
  • 機密性の高い交渉が録音されることへの抵抗
  • データがどこに保存されるのか

データ保存の問題:

Gongはすべてのデータを米国のみに保存しています。ヨーロッパ企業にとってGDPR対応が困難となり、地域データセンターを提供する競合と比較して不利な状況です。

実際、ヨーロッパではGDPR(一般データ保護規則)への対応が課題となり、一部の企業が導入を見送っています。

認証状況(2025年時点):

  • SOC 2認証取得済み
  • ISO 27001認証取得済み
  • ISO 42001認証(AI管理システム、2025年6月取得)
  • EU-U.S. Data Privacy Framework認証取得

「数字」が全てではない

Gongは「成功パターン」を数字で示します。しかし、ここに落とし穴があります。

相関と因果の混同:

「トップセールスは12個の質問をする」→「12個質問すれば売れる」わけではありません。

質問の「数」より「質」が重要な場合もあります。また、顧客の性格、業界の特性、商品の複雑さによって最適解は変わります。

定量化できない要素:

  • 信頼関係の構築
  • タイミングの見極め
  • 顧客の「言葉にしないニーズ」への気づき

これらは、AIでは(まだ)完全に把握できません。

製品への批判——600件のレビュー分析

600件以上のGongレビューを分析した調査によると、以下の課題が浮き彫りになっています。

価格の不透明性:

  • **ネガティブレビューの73%**が「隠れた料金」と「価格の透明性の欠如」を主な問題点として挙げる
  • 従来:約$160/ユーザー/月 → 新規契約:$250/ユーザー/月(強制バンドル)
  • プラットフォーム料金:年間$5,000〜$50,000
  • 50人チームの初年度総コスト:約$117,000(約1,755万円)

AI精度の問題:

  • Smart Trackersが偽陽性を生成
  • 重要な会話の瞬間を見逃す
  • キーワードベースのトラッカーは「時代遅れの技術」との指摘
  • 見込み客が競合を「積極的に評価している」のか、単に過去の会話に言及しているだけなのかを区別できない

実装の負担:

  • 実装に6〜8週間かかる(競合は2週間以内)
  • 専任のITリソースが必要
  • 支払った機能を使用していないチームが多い

興味深い発見:

Gongユーザーの約40%がClariも併用しています。これは、Gongだけでは予測分析・パイプライン管理が不十分であることを示唆しています。

競合の追い上げ

Gongは「会話インテリジェンス」市場を作りましたが、独占はできていません。

競合特徴
Chorus.aiZoomInfoが買収。データ連携が強み
Clari予測分析に特化。パイプライン管理が強い
Salesforce EinsteinCRM統合がネイティブ。既存ユーザーに強い
Oliv, Fathom, Avoma新興プレイヤー、より透明な価格設定

特にClariは予測分析で差別化し、Gongとは異なるアプローチで市場を攻めています。

これらの限界を踏まえた上で、なぜGongは77億ドルの評価を受けたのか。それは、競合との差別化と、市場全体の成長性にあります。


競合分析:なぜGongが「王者」なのか

市場ポジションの比較

項目GongChorus.aiClariSalesforce Einstein
会話分析◎◎○△
予測分析◎○◎○
コーチング◎◎△△
CRM統合◎◎◎◎(ネイティブ)
市場シェア1位2位--
競合比較競合比較

Gongの4つの競争優位性

1. 市場創造者としての先行者利益

Gongは「会話インテリジェンス」という市場カテゴリー自体を作りました。先行者として、ブランド認知と顧客基盤を築いています。

2. データの蓄積(モート)

数百億件の営業インタラクション(通話、メール、ウェブ会議)を記録・分析。これは後発が追いつけない「堀(モート)」です。

Gongの独自AIは:

  • 汎用AIシステムよりも3倍正確
  • キーワードベース分析よりも2倍正確
  • 顧客とのインタラクションの99%をキャプチャ

AIの精度は、データ量に比例します。Gongは毎日、数百万件の会話を分析し、モデルを改善し続けています。

3. エコシステム

Salesforce、HubSpot、Zoom、Slack——あらゆるツールと統合されています。顧客が「Gongを外す」ことは、ワークフロー全体の変更を意味します。

4. プロダクト進化の速度

Gongは「会話分析」から始まり、「予測分析」「コーチング」「自動化」へと機能を拡張しています。

機能説明
Revenue Intelligence売上予測、パイプライン(商談管理) 分析
Deal Execution商談の健全性スコアリング、リスク検知
Coaching営業担当者へのフィードバック、ベストプラクティス共有
Market Intelligence競合分析、顧客の声の可視化
Engage営業活動の自動化、メールシーケンス(自動配信) 管理

単なる「通話録音ツール」から「営業全体を最適化するプラットフォーム」へ。この進化が、Gongを「王者」たらしめています。

では、投資家たちはGongの何に賭けたのでしょうか?


資金調達と成長:投資家が熱狂した理由

爆発的な成長(2019-2021年)

Gongの成長指標Gongの成長指標
時期評価額成長率
2019年$750M(約1,125億円)-
2020年8月$2.2B(約3,300億円)293%増
2021年6月$7.25B(約1.1兆円)330%増

わずか2年で評価額が10倍に。

資金調達の軌跡

ラウンド日付調達額評価額主要投資家
Seed2016年$6M(約9億円)--
Series A2018年$26M(約39億円)-Norwest Venture Partners
Series B2019年$65M(約98億円)-Sequoia Capital
Series C2020年4月$200M(約300億円)$2.2B(約3,300億円)Coatue Management
Series D2021年6月$250M(約375億円)$7.25B(約1.1兆円)Franklin Templeton
Secondary2021年8月$250M(約375億円)$7.7B(約1.2兆円)-

総調達額:$584M(約876億円)

※日本円換算は1ドル=150円で計算

パンデミックがもたらした追い風

Series D(2020年4月、パンデミックの最中):

リモートワークへの移行が会話インテリジェンスの需要を急増させました。

  • 調達額:$200M(約300億円)
  • 評価額:$2.2B(約3,300億円)
  • 2020年の売上成長率:前年比2.5倍

Franklin TempletonのRyan Biggsはこう語りました:

"Technologies aimed at optimizing productivity and customer satisfaction became more important than ever in the past year as the business world transitioned to a predominantly remote work model."

「生産性と顧客満足度を最適化する技術は、ビジネス世界が主にリモートワークモデルに移行したこの1年で、かつてないほど重要になりました」

投資家の殺到:

"The company received many offers and built a consortium of investors because many were willing to take up the whole round."

「同社は多くのオファーを受け、投資家コンソーシアムを構築しました。多くの投資家がラウンド全体を引き受けることを望んでいたからです」

なぜSequoia Capitalは賭けたのか

Series Bリード投資家:Sequoia Capital(2019年、$65M調達)

Carl Eschenbach(Sequoiaパートナー)の発言:

"Gong has unlocked a world of potential with their AI-based approach to increasing revenue teams' effectiveness. Its hypergrowth of customer acquisition and retention demonstrates the widespread need for a revenue intelligence platform."

「Gongは、AIベースのアプローチで収益チームの効果を高め、可能性の世界を切り開きました。顧客獲得とリテンションのハイパーグロースは、収益インテリジェンスプラットフォームへの広範なニーズを示しています」

Sonya Huang(Sequoiaパートナー)の発言:

"The special aspect of Gong was that you won the hearts and minds of your customer, and you were really, really customer focused. You went customer-back rather than technology-out."

「Gongの特別な点は、顧客の心をつかみ、本当に、本当に顧客重視だったことです。技術先行ではなく、顧客起点でした」

投資時の成長指標(2019年):

  • 2018年の売上成長率:前年比5倍
  • 2019年の売上成長率(年初来):前年比3倍
  • 顧客数:700社以上
  • 主要顧客:Autodesk、GE、HubSpot、LinkedIn

Sequoiaが見た3つのポイント:

  1. CRMの次の進化形としてのポジショニング
  2. 営業担当者がCRMに手動入力する偏った意見ではなく、真の顧客現実を収益組織にもたらす
  3. 顧客第一主義の企業文化

10億ドルのペイデイ——そして現実への回帰

2021年のSeries E調達時、Gongの従業員が保有するストックオプションの価値は約10億ドルに達しました。イスラエルのテック業界で大きな話題となりました。

Bendovのコメント:

"We celebrated for five minutes and moved on."

「5分間祝って、前に進みました」

しかし、物語はそこで終わりませんでした。

評価額の下落——40%減の現実

2025年11月、現実が追いつきました。

時期評価額変化
2021年6月$7.25B(約1.1兆円)-
2025年11月$4.5B(約6,750億円)-40%

背景:

  • 2021年のSaaS市場の過熱
  • 金利上昇とテック株の調整
  • 成長率の鈍化

しかし、ファンダメンタルズは堅調:

  • 2025年3月時点のARR:$300M以上(約450億円)
  • 成長率:25%〜30%(AI活用の進展が主因)
  • Bendov:「ほぼ黒字」、「2021年の資金をほとんど使っていない」

評価額の下落は、Gong固有の問題というより、市場全体の調整の影響です。

収益成長の軌跡

時期ARR(年間経常収益)前年比成長率
2018年推定$5M(約7.5億円)500%
2019年$25M(約38億円)300%
2020年$75M(約113億円)300%
2021年$200M(約300億円)267%
2023年推定$300M以上(約450億円)-
2025年3月$300M+25%〜30%

成長率は鈍化しましたが、「トップ四分位のパブリックSaaS企業」レベルを維持しています。

顧客成長

  • 顧客数:4,000社以上(5,000社以上とも)
  • エンドユーザー数:数十万人
  • Fortune 500導入率:増加中
  • 主要顧客: LinkedIn、HubSpot、Slack、Zendesk、Okta、Twilio

この成長を支えているのは、「会話インテリジェンス」という市場全体の拡大です。では、Gongは次に何を目指しているのでしょうか?


今後のロードマップ:「営業のOS」へ

2024-2025年の主要ニュース

時期出来事
2024年Q1Gong Engage 強化(営業自動化機能)
2024年Q2生成AI機能追加(メールドラフト、要約)
2024年Q3Gong Forecast 大幅アップデート(予測機能)
2024年Q4AIエージェント機能 のプレビュー

3つの進化方向

Gong導入フローGong導入フロー

1. AIエージェント

営業通話の「分析」から「自動化」へ。AIが営業活動を自律的に支援する未来を目指しています。

  • 次のアクションの自動提案
  • フォローアップメールの自動生成
  • リスクのある商談の自動アラート

2. マルチモーダル分析

音声だけでなく、ビデオ通話の「表情」「画面共有の内容」も分析対象に。

3. グローバル展開

アジア市場への本格参入。日本語対応の強化が期待されています。

IPO計画の現状(2026年時点)

CEO Amit Bendovの慎重な姿勢(2025年3月のTechCrunchインタビュー):

  • IPOは「重要なマイルストーン」だが、2025年中の計画はない
  • 2026年以降を検討
  • S-1提出なし

財務状況:

  • ARR $300M超
  • 成長率:25%〜30%
  • ほぼ黒字
  • 2021年の調達資金をほとんど使っていない

急ぐ理由はない。市場環境が整うまで、Gongは非公開企業として進化を続けます。

Amit Bendovのビジョン

"Sales is not an art, it's a science. With data, we can reveal what works and what doesn't. Gong is the tool that turns sales into a science."

「営業は芸術ではなく科学です。データに基づいて、何が効果的で何が効果的でないかを明らかにできます。Gongは、営業を科学に変えるツールです」

— Amit Bendov, CEO

"We're building a world where every salesperson can be a top performer. AI becomes their coach, learning from every call, accelerating their growth."

「本社が目指すのは、すべての営業担当者がトップパフォーマーになれる世界です。AIがコーチとなり、すべての通話から学び、成長を加速させます」

— Amit Bendov, CEO

彼のビジョンは明確です。「Gongを営業のOSにする」。

CRMがSalesforceに統一されたように、営業の「インテリジェンス層」をGongが担う。その未来に向けて、Gongは進化を続けています。


まとめ:「営業は科学になったのか?」

冒頭の問いに戻りましょう。

「営業は芸術か、科学か?」

Gongが示した答えは、「科学にできる部分がある」 というものでした。

  • 「トップセールスは何をしているか?」→ 数字で説明できる
  • 「なぜこの商談は負けたか?」→ データで分析できる
  • 「新人をどう育てるか?」→ 成功パターンを学ばせられる

Forrester認定のROI 481%。Iron Mountainの新人成約率566%改善。数字は嘘をつきません。

しかし、すべてが科学になったわけではありません。

信頼関係の構築、タイミングの見極め、顧客の「言葉にしないニーズ」への気づき——これらは、まだ人間にしかできない領域です。

そして、従業員の66%が監視に不快感を感じているという現実も、無視できません。

Gongの本質

Gongは「営業を置き換える」ツールではありません。

「営業を強化する」ツールです。

データで「見えなかったもの」を見えるようにし、人間がより良い判断を下せるようにする。これがGongの価値です。

しかし、その価値を最大化するには、「監視」ではなく「支援」として運用する文化が必要です。

主要ポイント

項目内容
創業者Amit Bendov(IDF装甲部隊出身)+ Eilon Reshef(IDF諜報部門出身)
プロダクト営業通話の録音・AI分析 → 成功パターンの可視化
実績ROI 481%(Forrester認定)、Iron Mountain 566%改善、4,000社以上導入
評価額$7.25B(2021年) → $4.5B(2025年、-40%)
限界監視文化への懸念(66%不快)、価格不透明性、AI精度問題
競争優位数百億件のデータ、エコシステム、プロダクト進化速度

次のステップ

  1. 営業マネージャー: Gong公式サイトでデモを依頼し、自社の課題に適合するか検証。ただし、価格の透明性を事前に確認すること
  2. 経営者: 会話インテリジェンス市場全体のトレンドを把握し、導入タイミングを検討。監視文化への影響も考慮に入れること
  3. 投資家: Gongの競合(Clari、Chorus)も調査し、市場全体の成長性を評価。評価額下落後の投資機会を検討

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参考リソース

Gong公式

  • Gong公式サイト
  • Gong Labs(研究ブログ)

テックメディア報道

  • Forbes - Gong Raises $250M At $7.25B Valuation
  • TechCrunch - Gong raises $200M Series D
  • TechCrunch - Gong surpasses $300M ARR

業界レポート

  • Forrester - The Forrester Wave: Conversation Intelligence
  • Forrester - Gong ROI Study (481%)
  • G2 - Best Conversation Intelligence Software

創業者インタビュー

  • Sequoia Capital - The AI Future of Sales with Amit Bendov
  • First Round Review - Gong's Path to Product-Market Fit

本記事はネクサフローのAI研究シリーズの一部です。

この記事の著者

中村 知良

中村 知良

代表取締役

早稲田大学卒業後、ソフトバンク株式会社にてAI活用やCEO直下案件のプロジェクトマネージャーに従事。その後、不動産スタートアップPit in株式会社の創業、他スタートアップでの業務改善・データ活用を経験後、2023年10月、株式会社ネクサフローを創業し代表取締役CEO就任。

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目次

  • この記事でわかること
  • 基本情報
  • Gongとは?「営業のブラックボックス」を開けるAI
  • 営業組織が抱えていた根本的な問題
  • Gongのソリューション:会話インテリジェンス
  • Gongが明らかにした「成功の法則」
  • 創業者の物語:「ブラックボックスを開けろ」
  • Amit Bendov(CEO)——装甲部隊から連続起業家へ
  • 「手がかりは通話の中にあった」
  • Eilon Reshef(CPO)——諜報部門からプロダクトの魂へ
  • 軍事インテリジェンスからビジネスインテリジェンスへ
  • 「なぜ田中さんは売れるのか?」への回答
  • 創業1年目の「ロケット」
  • エンタープライズ導入事例:「科学的営業」の実践
  • Forrester認定:ROI 481%の衝撃
  • Iron Mountain——「新人営業の成約率566%改善」
  • LinkedIn——「新人が4ヶ月で一人前になる」
  • HubSpot——「なぜ負けたのか、数字で分かる」
  • 「勝てる理由」が数字で分かる世界
  • 批判的評価と限界:「科学化」の落とし穴
  • 監視文化への懸念——従業員の66%が不快感
  • プライバシーへの懸念——GDPR対応の課題
  • 「数字」が全てではない
  • 製品への批判——600件のレビュー分析
  • 競合の追い上げ
  • 競合分析:なぜGongが「王者」なのか
  • 市場ポジションの比較
  • Gongの4つの競争優位性
  • 資金調達と成長:投資家が熱狂した理由
  • 爆発的な成長(2019-2021年)
  • 資金調達の軌跡
  • パンデミックがもたらした追い風
  • なぜSequoia Capitalは賭けたのか
  • 10億ドルのペイデイ——そして現実への回帰
  • 評価額の下落——40%減の現実
  • 収益成長の軌跡
  • 顧客成長
  • 今後のロードマップ:「営業のOS」へ
  • 2024-2025年の主要ニュース
  • 3つの進化方向
  • IPO計画の現状(2026年時点)
  • Amit Bendovのビジョン
  • まとめ:「営業は科学になったのか?」
  • Gongの本質
  • 主要ポイント
  • 次のステップ
  • 関連記事
  • 参考リソース
  • Gong公式
  • テックメディア報道
  • 業界レポート
  • 創業者インタビュー

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