Ada徹底解説:ARR成長率108%、ノーコードAIエージェントの先駆者を完全分析【2026年最新】
この記事の要約
評価額12億ドルのAdaが2026年に急加速。ARR成長率108%、Voice AI 12倍成長、統合Reasoning Engine投入。64億以上の会話を処理し550以上のエンタープライズAIエージェントを展開。Sierra($10B)との競合激化とIPSY ROI 943%の実績に迫ります。
2007年、トロント大学1年生のMike Murchisonは緊急治療室で目を覚ましました。
頭頂葉の重度出血。医師の診断は厳しいものでした。「短期記憶の欠損」「認知機能の制限」「生涯にわたる障害の可能性」——19歳の彼の人生は、一瞬で崩壊しかけました。
しかし12ヶ月後、世界トップクラスの神経学者と共に闘い抜いた彼は、大学に復学します。そして偶然聴講した一つの講義が、彼の人生を変えました。
Geoffrey Hinton教授——2024年にノーベル物理学賞を受賞する「深層学習の父」の授業でした。
さらに10年後の2026年。彼が創業したAdaは、64億以上の会話を処理し、550以上のエンタープライズAIエージェントを世界中に展開。ARR成長率は108%を記録し、Voice AIでは12倍の成長を達成しています。
本記事は、脳損傷から復活した創業者Mike Murchisonと、彼が作り上げたAdaの物語です。
本記事の表記について
- 金額の日本円換算は1ドル=150円で計算しています
- 下線付きの用語にカーソルを合わせると解説が表示されます
この記事でわかること
- 創業者の物語: 脳損傷からの復活、Geoffrey Hintonとの出会い、Volleyピボットの全貌
- 技術的差別化: ノーコードでAIカスタマーサービスを実現する仕組み
- パンデミック危機からのV字回復: レイオフから記録的成長への転換
- 2026年の急成長: ARR 108%成長、Voice AI 12倍、統合Reasoning Engine
- 批判と現実: Trustpilot 2.0/5.0評価と「Endless Loop」問題
- 実績と導入事例: IPSY ROI 943%、Loop Earplugs ROI 357%、64億会話を処理した方法
- 競合激化: Sierra($10B)、Intercom Fin、Zendesk AIとの市場争い
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | Ada Support Inc. |
| 設立年 | 2016年 |
| 本社 | トロント、カナダ |
| 従業員数 | 約650名(2026年1月時点) |
| 評価額 | $1.2B(約1,800億円、2021年5月) |
| 総調達額 | $200M+(約300億円以上) |
| 処理会話数 | 64億以上 |
| ARR成長率 | 108%(2026年3月発表) |
※日本円換算は1ドル=150円で計算
Adaの全体像なぜこのような「AIカスタマーサービス革命」が生まれたのか? その答えは、創業者の壮絶な経験にあります。
Mike Murchison:「壊れた脳」から生まれた問い
外傷性脳損傷——19歳で人生が止まった日
Mike Murchisonがプログラミングやビジネスに出会う前、彼は別の戦いをしていました。
2007年、トロント大学1年生だったMikeは、外傷性脳損傷(Traumatic Brain Injury) を負いました。頭頂葉が重度に出血し、緊急治療室で目を覚ましました。
医師からの診断は絶望的でした:
- 短期記憶の欠損
- 認知機能の制限
- 生涯にわたる障害の可能性
大学を休学し、その後12ヶ月間、病院と自宅を往復する日々が続きました。世界トップクラスの神経学者、神経心理学者と共に、長く、苛立たしい回復期間を過ごしました。
"When faced with a broken mind, he grew intimately aware of his own cognition and how one can build, shape and form new intelligence."
「壊れた脳と向き合ったとき、彼は自分自身の認知を深く理解し、人間がどのように知性を構築し、形作り、形成するかを知りました」
— Bessemer Venture Partners
この経験が、Mikeを人間の認知という分野に深く興味を持たせました。そして、後のAdaのビジョンに繋がります。
Geoffrey Hintonの講義——「潜り込んだ」運命の授業
回復後、Mikeはトロント大学に復学し、認知科学、心理学、HCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション) を専攻しました。
そこで彼は、運命的な授業を「潜り込んで(crash)」聴講します。
Geoffrey Hinton教授——2024年にノーベル物理学賞を受賞した、深層学習の父と呼ばれる人物の講義でした。
"I was very lucky to be able to crash his courses."
「彼の講義に潜り込めたのは、とても幸運でした」
— Mike Murchison
Mike自身が学生に向けて語ったアドバイスは印象的です:
"U of T gives you an incredible level of access to world-renowned research that's at your fingertips."
「トロント大学は、世界的に有名な研究への信じられないレベルのアクセスを与えてくれます。それはあなたの指先にあるのです」
脳損傷で「人間の認知」を身をもって学び、深層学習の父から「AIの認知」を学ぶ。この2つの経験が、「AIで人間の会話を拡張する」というAdaのビジョンの原点になりました。
Volleyの栄光と破綻——最後の9ヶ月に賭けた決断
Mike MurchisonとDavid Haririは、Adaの前にVolley Industriesというソーシャルネットワークを創業していました。
Volleyは「テック業界のクリエイターを繋ぐ」プラットフォームで、7,000人以上の創業者と開発者のグローバルコミュニティを育てました。$500,000以上の資金を調達し、順調に成長していました。
しかし、ある日を境に状況は一変します。
"Volley struggled to scale due to the high number of customer service inquiries."
「Volleyは、大量のカスタマーサービス問い合わせのためにスケールできませんでした」
顧客からの問い合わせが、制御不能なほど急増したのです。
- サポートチームを増員しても追いつかない
- 人件費が膨らむ
- 顧客満足度は下がる一方
Volleyは破綻寸前に追い込まれました。
2015年末、MikeとDavidは難しい決断を下します。
"The founders almost shut down Volley, and then bet their last 9 months of runway into pivoting into what became Ada."
「創業者たちはVolleyをほぼ閉鎖しかけましたが、その後、最後の9ヶ月の滑走路を、後にAdaとなるものへのピボットに賭けました」
これは素早い転換ではありませんでした:
"It wasn't a quick shift from Volley to Ada Support but instead a tedious, risky, hands-on effort to bounce back from an idea that couldn't scale."
「VolleyからAda Supportへの転換は素早いものではなく、スケールできないアイデアから立ち直るための、退屈で、リスクの高い、実践的な努力でした」
残りわずか9ヶ月の資金。失敗すれば、すべてが終わる。その状況で、彼らは「カスタマーサービスの自動化」に賭けました。
7社で同時にカスタマーサービス担当として働いた1年間
答えを見つけるため、MikeとDavidは異常な行動に出ます。
7つの異なる企業で、カスタマーサービス担当として1年間働いたのです。
"The duo spent a year conducting field research by working as customer service agents for seven different companies, holding off on developing a solution until they fully understood the challenges of working in customer service."
「二人は1年間、7つの異なる企業でカスタマーサービス担当として働き、フィールド調査を実施しました。カスタマーサービスで働くことの課題を完全に理解するまで、ソリューション開発を保留したのです」
トロント東端の薄汚いオフィスから、7社のカスタマーサービスチームにリモートで参加。1通話ごとに報酬を得る形で働き、数万件の顧客電話に対応しました。
そして、午前3時。
"They were waking up at three in the morning to answer yet another, 'How do I reset my password inquiry?'"
「彼らは午前3時に起きて、また別の『パスワードをリセットするにはどうすればいいですか?』という問い合わせに答えていました」
この経験から、彼らは重要な発見をします。
問い合わせの30%以上が、反復的で単調なものだった。
「パスワードのリセット方法は?」「注文状況を確認したい」「返品手続きを知りたい」——これらはAIで自動化できるはずだ。
さらに、同僚のオペレーターの離職率の高さにも気づきました:
"Half their colleagues, at least in some cases, 80% of their colleagues, would leave in the next 12 months - the attrition rates in customer service continue to be that high."
「同僚の半分、場合によっては80%が、今後12ヶ月以内に辞めていく。カスタマーサービスの離職率は、それほど高いのです」
そしてこの経験から、Mike Murchisonは一つの疑問を抱きます。
"David and I started Ada in 2016 with a simple question: why do companies talk to their customers less as they grow?"
「デビッドと私は2016年にシンプルな疑問からAdaを始めました。なぜ企業は大きくなるほど顧客との会話が減るのか?」
— Mike Murchison, CEO
Adaの原点は、この発見にありました。
「秘密裏に」AIを人間のふりさせてテストした日
1年間、7社でカスタマーサービス担当として働いた後、MikeとDavidは秘密裏にAdaの初期プロトタイプをテストしました。
"Murchison and Hariri 'secretly' tested the first version of Ada software. The result was so successful that 'neither managers nor colleagues objected, and customers didn't notice the difference between AI and manual responses.'"
「マーチソンとハリリは、Adaソフトウェアの初版を『秘密裏に』テストしました。その結果は非常に成功し、『マネージャーも同僚も異議を唱えず、顧客もAIと手作業の応答の違いに気づきませんでした』」
マネージャーも、同僚も、顧客も、誰もAIだと気づかなかったのです。
このテストが、彼らに「これはいける」という確信を与えました。
なぜ「ノーコード」にこだわったのか? その答えは、この現場経験から生まれた思想にあります。
「ノーコード」への執着——エンジニアなしで導入できる理由
プログラミング知識不要という革新
Adaの最大の特徴は、エンジニアリングサポートなしでAIチャットボットを展開できることです。
なぜこれが重要なのか?
Mike Murchisonが7社で働いた経験から、彼は一つの真実を知っていました。カスタマーサービスチームには、エンジニアがいない。
多くのAIツールは、導入にエンジニアリングリソースを必要とします。しかし、サポートチームがAIを使いたいと思っても、IT部門のリソースは他のプロジェクトで埋まっている。結果、導入は後回しにされる。
Adaは、この問題を解決しました。
ドラッグ&ドロップで会話フローを設計し、数週間で本番運用を開始できる。プログラミング知識は一切不要です。
Ada Reasoning Engine——推論エンジンの仕組み
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| Ada Reasoning Engine | 推論エンジンによるAIエージェント |
| 50+言語対応 | 翻訳レイヤーではなくネイティブ理解 |
| マルチチャネル | チャット、メール、電話、音声 |
| Coaching機能 | AIの継続的な改善(自動学習) |
| Scorecards | パフォーマンス評価(解決率・応答時間などを可視化) |
50以上の言語をネイティブに理解する
多くの多言語チャットボットは、ユーザーの入力を英語に翻訳し、英語で処理してから、元の言語に再翻訳します。
Adaは違います。各言語をネイティブに理解します。
これは、グローバル企業にとって大きな差別化ポイントです。日本語の微妙なニュアンス、敬語と丁寧語の使い分け——翻訳レイヤーでは失われる情報を、Adaは保持できます。
統合先
- CRM(顧客管理システム): Zendesk、Salesforce
- Eコマース: Shopify
- コミュニケーション: Slack
- コンプライアンス: HIPAA、SOC2、GDPR対応
ここまでがAdaの技術的な強みです。しかし、2020年、Adaは存亡の危機に立たされます。
パンデミック危機——レイオフから記録的成長へのV字回復
2020年初頭:暗雲
2020年、COVID-19パンデミックが始まったとき、Adaはレイオフを実施しました。
不確実な市場環境で、企業はソフトウェア投資を控えると予想されていました。特に、新しいAI自動化ツールのような「新しい技術」への投資は後回しにされるだろうと。
転機——Zoomの爆発的成長
しかし、状況は一変します。
"During the COVID-19 pandemic, when digital emerged as the primary means of communication, Ada helped companies like Zoom, Shopify, Upwork and AirAsia scale customer service with an automation-first strategy."
「COVID-19パンデミック中、デジタルが主要なコミュニケーション手段として浮上したとき、Adaは、Zoom、Shopify、Upwork、AirAsiaなどの企業が自動化ファーストの戦略でカスタマーサービスをスケールするのを支援しました」
Zoomの月間アクティブユーザーは、2019年12月の1,000万人から、2020年4月には3億人に急増しました。
このZoomを含む顧客企業の爆発的成長が、Adaへの需要を急増させました。
記録的成長:前年比5倍
"The five-year-old startup powered 1.5 billion customer interactions over the past year, more than five times its total from the year prior."
「この5年目のスタートアップは、過去1年間で15億の顧客インタラクションを支援しました。これは前年の総数の5倍以上です」
- 会話数: 前年比5倍以上
- 売上: 3桁成長
- チーム規模: 2倍以上に拡大
レイオフから記録的成長へ
"Ada went from layoffs into record growth in Q2 2020 as companies figured out how to buy automation software in the remote work environment."
「Adaは、企業がリモートワーク環境で自動化ソフトウェアを購入する方法を見つけ出したため、2020年第2四半期にレイオフから記録的成長に移行しました」
わずか数ヶ月で、Adaはレイオフから記録的成長へのV字回復を遂げたのです。
このV字回復を見て、投資家たちは動きました。では、競合と比べて何が違うのか?
競合との差別化——なぜAdaが選ばれるのか
$150億市場を争う4つのアプローチ
2026年、AIカスタマーサービス市場は$151億(約2.3兆円) に到達しました。2030年には$478億(約7.2兆円)に成長すると予測されています。この巨大市場を争うプレイヤーには、4つのアプローチがあります。
| 項目 | Ada | Sierra | Intercom Fin | Zendesk AI |
|---|---|---|---|---|
| アプローチ | 完全自律型AI | 成果報酬型AI | ハイブリッド | エージェント支援 |
| 評価額 | $1.2B(2021年) | $10B(2025年) | $1.28B | 上場企業 |
| ARR | $70.6M+(急成長中) | $100M | 非公開 | 非公開 |
| 導入難易度 | 低(ノーコード) | 中 | 中 | 高 |
| 多言語 | 50+(ネイティブ) | 制限あり | 45言語 | 制限あり |
| ターゲット | 全規模、eコマース強み | 大企業 | SaaS・テック | 大企業 |
- Sierraは2025年に$350MのシリーズCで評価額$10Bに到達。21ヶ月でARR $100Mを達成した新興の最大ライバルです。成果報酬型(会話単位・解決単位課金)のAgent OSと音声AIで急成長しています。
- Intercom FinはIntercomエコシステム内でチャット・メール・ソーシャルを統合。Databoxの事例では解決率を30%→55%に改善しました。
- Zendesk AIはUltimate買収でAI基盤を強化し、80%の自動化ポテンシャルを持つとされています。
- Adaはノーコード×マルチチャネル×多言語で差別化。550以上のエンタープライズ展開実績と64億以上の処理会話数が強みです。
競合比較Adaが選ばれる4つの理由
- ノーコード: 技術チームなしで導入・運用可能
- 多言語ネイティブ: 翻訳ではなく、各言語をネイティブに理解
- 高解決率: 70%以上の問い合わせを即座に自動解決
- 迅速な導入: 数週間で本番運用開始
競争優位性は明確です。しかし、実際に導入した企業はどのような成果を上げているのか?
導入事例——「課題から解決まで」のストーリー
IPSY——ROI 943%、生成AIによる初のAI実装成功
IPSYは、パーソナライズ化粧品サブスクリプションを提供する企業です。
導入前の課題:
- 過去のAI導入が失敗に終わっており、社内にAIへの不信感があった
- 急増する問い合わせに対応するためのスケーラブルなソリューションが必要
導入後の具体的成果:
| 指標 | 改善結果 |
|---|---|
| ROI(投資対効果) | 943% |
| CSAT(顧客満足度) | 向上 |
| 自動解決率 | 大幅向上 |
IPSYにとって、Adaは会社初の成功したAI実装となりました。生成AIを活用したエージェントが、パーソナライズされた応答を提供し、顧客体験の質を維持しながら大幅なコスト削減を実現しています。
Loop Earplugs——ROI 357%、応答時間194.52%改善
Loop Earplugsは、Adaの最も成功した導入事例の一つです。
導入前の課題:
- チケットバックログ: ピーク時には5-6日間の遅延
- CSAT(顧客満足度): 低迷
- 人的リソース不足: 急成長に人員が追いつかない
導入後の具体的成果:
| 指標 | 改善結果 |
|---|---|
| ROI(投資対効果) | 357% |
| 応答時間 | 194.52%改善(5-6日→最大2時間) |
| CSAT(顧客満足度) | 80%達成 |
"With Aura managing chat, email, and social DMs, Loop achieved a 357% return on investment, proving the efficiency and cost savings of automation."
「Aura(AdaのAIエージェント)がチャット、メール、ソーシャルDMを管理することで、Loopは357%の投資対効果を達成し、自動化の効率性とコスト削減を証明しました」
Loopは単なる効率化だけでなく、カスタマーサービスのキャリアを再定義しました。チケット対応から戦略的業務へのシフト。オペレーターの満足度向上。離職率の低下。
Monday.com——40-45%の自動解決を即座に達成
Monday.comは、プロジェクト管理ツールを提供するSaaS企業です。
課題: 急成長に伴い、サポートチケットが爆発的に増加。人間のオペレーターだけでは対応しきれない状況でした。
解決策: Adaを導入し、AIエージェントを展開。
結果: 導入直後から40-45%のコンテインメント率(自動解決率) を達成しました。
「Adaは運用効率に大きな影響を与えた」
— Monday.com
「導入直後から」という点が重要です。多くのAIチャットボットは学習期間が必要ですが、Adaは即座に機能しました。
Tango Card——100% SLA遵守と6.7倍のROI
Tango Cardは、報酬・インセンティブプラットフォームを提供する企業です。
課題: サービスレベル合意(SLA)の遵守が難しくなっていました。顧客からの問い合わせに、約束した時間内に対応できないケースが増えていたのです。
解決策: Adaを導入し、反復的な問い合わせを自動化。
結果:
- 100% SLA(サービスレベル合意)遵守
- 初年度 6.7倍のROI(投資対効果) を達成
Tilt——84%自動解決率達成
Tiltは、Adaを導入して84%の自動解決率を達成しました。これはAdaの顧客の中でも特に高い自動解決率です。
Pinterest——300以上の安全性評価を経たAI導入
Pinterestは、AIカスタマーサービス導入にあたり300以上の安全性評価を実施する厳格なAI準備監査を行いました。VP of Support OperationsがAda Interact 2025で、信頼性と安全性をAIカスタマーサービスに組み込むプロセスを共有しています。
主要顧客企業
- テック: Meta、Canva、Pinterest、Zapier、Ancestry
- Eコマース: Shopify、Afterpay、IPSY
- 金融: Square、Verizon、Blackhawk Network
- その他: Monday.com、YETI、Mailchimp
これだけの企業が導入しています。しかし、すべてがうまくいっているわけではありません。
批判と現実——Trustpilot 2.0/5.0の厳しい評価
ユーザー評価の衝撃
Adaの最大の弱点は、実際のエンドユーザー評価が極めて低いことです。
| プラットフォーム | Ada | 競合Voiceflow |
|---|---|---|
| Trustpilot | 2.0/5.0 | 4.8/5.0 |
華々しい導入事例。55億会話の自動化。しかし、実際にAdaのチャットボットを使った顧客からは、厳しい声が上がっています。
「Endless Loop(終わりのないループ)」問題
"Ada's AI fails to provide useful answers, leading to an 'endless loop' and poor customer service experiences."
「AdaのAIは有用な回答を提供できず、『終わりのないループ』と劣悪なカスタマーサービス体験につながる」
ユーザーは、Adaのチャットボットが同じ質問を繰り返し、解決に至らないケースを報告しています。
「Total Disappointment(完全な失望)」
"Some negative reviews noted that Ada is a total disappointment — the agents don't see what I sent them, the bot scenarios are cranky, slow and frustrating."
「Adaは完全に失望的だ。エージェントは私が送った内容を見ていない。ボットのシナリオは不安定で、遅く、イライラする」
ベンダー変更の理由に
"Multiple reviewers describe the chatbot as inefficient, unresponsive, and causing frustration. Some customers have switched vendors specifically to avoid dealing with Ada."
「複数のレビュアーは、このチャットボットを非効率的で、応答がなく、フラストレーションを引き起こすと説明しています。一部の顧客は、Adaとの取引を避けるために特別にベンダーを変更しました」
機能面での制限
| 制限事項 | 影響 |
|---|---|
| 画像・動画表示不可 | 製品デモンストレーションに支障 |
| 複雑な統合とセットアップ | 機能拡張に時間とリソースが必要 |
| 価格の不透明性 | オンラインで価格非公開、見積もり依頼が必要 |
| 無料プラン・トライアルなし | 導入前の検証が困難 |
競合との比較での弱点
| 項目 | Ada | Intercom | Zendesk |
|---|---|---|---|
| 価格 | $500/月〜 | $29/月〜 | $19/月〜 |
| 無料プラン | なし | あり | あり |
| 統合数 | 少数(プラグ&プレイ) | 300+ネイティブ統合 | 多数 |
| 価格透明性 | 見積もり依頼が必要 | オンライン公開 | オンライン公開 |
正しい期待値の設定
Adaを導入する際は、以下の期待値を持つべきです。
| 期待できること | 期待すべきでないこと |
|---|---|
| 定型的な問い合わせの自動化 | すべての問い合わせの自動化 |
| 24時間対応 | 人間のような共感 |
| コスト削減 | 人間オペレーターの完全な置き換え |
| スケーラビリティ | 複雑な問題の自律的解決 |
AIは人間を置き換えるものではなく、人間を拡張するもの——Mike Murchisonのこの哲学を理解した上で導入すべきです。
"You have to treat AI as an employee. It's someone working for you, and you manage it."
「AIを従業員として扱う必要があります。あなたのために仕事をしてくれる存在であり、あなたがそれを管理するのです」
— Mike Murchison, CEO
批判はある。しかし、Adaは着実に成長を続けています。その成長の軌跡を見てみましょう。
成長の軌跡——破綻寸前から評価額12億ドルへ
資金調達の詳細
Adaの成長指標| ラウンド | 日付 | 調達額 | 主要投資家 |
|---|---|---|---|
| Seed | 2017年7月 | $2.5M(約3.8億円) | Version One、Bessemer |
| Series A | 2018年12月 | $19M(約28.5億円) | FirstMark Capital |
| Series C | 2021年5月 | $130M(約195億円) | Spark Capital、Tiger Global |
総調達額:$200M(約300億円) 評価額:$1.2B(約1,800億円、2021年5月にユニコーン達成)
※日本円換算は1ドル=150円で計算
投資家が見たAdaの価値
2021年5月、AdaはSpark Capital主導で$130MのシリーズCを調達し、ユニコーン達成。
Spark CapitalのGeneral PartnerであるYasmin Razaviは、投資理由を以下のように説明しています:
"Ada has carved out an entirely new category in automated customer experience. Companies across all industries and stages increasingly see the quality of their customer experience and communication as a competitive advantage, and yet they are not able to efficiently scale their efforts to meet their customers' needs. An easy-to-deploy, no-code automation tool such as Ada is game-changing for any business."
「Adaは、自動化されたカスタマーエクスペリエンスという全く新しいカテゴリを切り開きました。あらゆる業界と段階の企業が、カスタマーエクスペリエンスの質を競争優位性として見るようになっていますが、効率的にスケールすることができません。Adaのような導入が簡単でノーコードの自動化ツールは、ゲームチェンジャーです」
— Yasmin Razavi, General Partner, Spark Capital
ARR(年間経常収益)の急成長
ARR(年間経常収益) は、サブスクリプション型ビジネスの年間売上予測額を示す指標です。
| 時期 | ARR | 備考 |
|---|---|---|
| 2018年 | $4.5M(約6.8億円) | |
| 2020年 | $17.9M(約26.9億円) | パンデミック需要で急伸 |
| 2021年 | $35M(約52.5億円) | ユニコーン達成 |
| 2022年 | $46.2M(約69.3億円) | |
| 2023年 | $57.9M(約86.9億円) | |
| 2024年10月 | $70.6M(約105.9億円) | |
| 2025-26年 | ARR成長率108% | エージェンティックAI需要 |
※日本円換算は1ドル=150円で計算
驚異的な成長率(2026年3月発表)
- エージェンティックAI ARR成長率: 108%(前年同期比)
- NRR(ネット収益維持率): 146%
- $1M以上の大型顧客: 指数関数的に増加
- エンタープライズAIエージェント: 550以上が稼働
- 処理会話数: 64億以上
- Voice AI ARR: 12倍成長
- 2019-2022年成長率: 528%(Deloitte Technology Fast 500選出)
2018年のARR約6.8億円から、2026年にはARR成長率108%を記録。エージェンティックAIへの転換が加速度的な成長を生んでいます。
Ben Matthewsの追跡——Google時代から見守っていた投資家
Adaの最初の大型投資家、Bessemer Venture Partnersとの出会いには、運命的なストーリーがあります。
"The connection between Ada and Bessemer has an interesting backstory. Ben Mathews, a senior associate at BVP, had discovered Volley when he was at Google a few years back."
「AdaとBessemerの間には興味深い裏話があります。BVPのシニアアソシエイトであるBen Mathewsは、数年前にGoogleにいたときにVolleyを発見していました」
BenはVolleyが失敗した後も、MikeとDavidを追い続けていたのです。彼らがAdaにピボットしたとき、Benは迷わず投資を決めました。
成長の軌跡は明確です。では、Adaは次にどこへ向かうのか?
2024-2026年の最新動向——エージェンティックAIへの転換
Ada導入フロー| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年5月 | AIエージェント強化、100%自動解決率を目指す新機能 |
| 2024年11月 | Microsoft Azure OpenAI Service連携強化、200万時間以上の人的労働を削減 |
| 2025年3月 | $1.75Mのグラント資金獲得 |
| 2025年春 | Ada Interact 2025開催、Voice AI・Pinterest等の事例共有 |
| 2025年9月 | 競合Sierraが$10B評価額に到達、市場競争が激化 |
| 2026年2月 | 統合Reasoning Engineリリース |
| 2026年3月 | ARR成長率108%、Voice AI 12倍成長を発表 |
統合Reasoning Engine——2026年の最重要アップデート
2026年2月、Adaは統合Reasoning Engineをリリースしました。これは、チャット・メール・音声といった全チャネルを横断して、複雑で長期的な顧客インタラクションを処理する推論エンジンです。
従来の単純なフロー型チャットボットとは異なり、文脈を保持しながら複数ステップの問題解決を行えるようになりました。ACX(Automated Customer Experience)チームがより効率的に運用できるよう設計されています。
Voice AI——音声チャネルでの12倍成長
Ada Interact 2025で発表されたVoice AIは、2026年に本格的な成長軌道に乗りました。
- Voice AI ARR: 前年比12倍成長
- 低レイテンシ: 複雑な問い合わせにも自然な音声で対応
- 長期的な問い合わせ対応: 複数ステップに渡る会話を音声で完結
チャットだけでなく、電話での問い合わせも自動化することで、Adaの適用範囲は大幅に拡大しています。
Microsoft Azure OpenAI Serviceとの連携
2024年11月、AdaはMicrosoft Azure OpenAI Serviceとの連携を強化しました。
これにより、200万時間以上の人的労働を削減したと報告されています。GPT-4などの最新モデルを活用することで、より複雑な会話にも対応できるようになりました。
ACXオペレーティングモデル——カスタマーサービスの新パラダイム
Adaが提唱するACX(Automated Customer Experience)オペレーティングモデルは、従来のカスタマーサービスの運用方式を根本的に変えるものです。
- AIエージェントを「従業員」として管理: トレーニング、評価、改善のサイクルを回す
- Scorecards: AIエージェントのパフォーマンスを定量的に評価
- Coaching機能: AIの応答品質を継続的に改善
- NRR 146%: 既存顧客が利用を拡大していることの証拠
創業者Mike Murchisonの哲学
本記事を締めくくる前に、Mike Murchisonの印象的な発言を紹介します。
AIへの向き合い方
"A lot of people, myself included, default to feeling threatened. It takes effort to approach AI with low ego and the expectation that it can do your job better than you, but I think those who can do that are the ones who will truly reap the rewards of AI."
「私自身を含め、多くの人がデフォルトで脅威を感じています。低い自我でAIに向き合い、自分よりうまく仕事ができるという期待を持つには努力が必要です。しかし、それができる人こそがAIの恩恵を真に受けられる人だと思います」
— Mike Murchison, CEO
カスタマーサービスの未来
"We realized if we could put AI in the hands of customer service teams to help more customers and solve more problems, we could change the future of customer service."
「AIをカスタマーサービスチームの手に渡し、より多くの顧客を助け、より多くの問題を解決できるようにすれば、カスタマーサービスの未来を変えることができると気づきました」
— Mike Murchison, CEO
まとめ:脳損傷からARR成長率108%へ——「規模の呪い」を解く旅
冒頭の問いに戻りましょう。
2007年、緊急治療室で目を覚ました19歳の青年。「短期記憶の欠損」「生涯にわたる障害の可能性」——絶望的な診断でした。
しかし、彼は復活しました。Geoffrey Hintonの講義に潜り込み、Volleyの失敗から「最後の9ヶ月に賭けた」ピボットで再起し、パンデミックのレイオフから記録的成長へのV字回復を遂げました。
そして2026年、AdaはARR成長率108%を記録し、64億以上の会話を処理するプラットフォームに成長しています。
「なぜ企業は大きくなるほど、顧客と話さなくなるのか?」
Mike Murchisonの答えは、「規模の呪い」 でした。
企業が成長すると、顧客も増える。しかし、サポートチームは同じペースでは増やせない。人件費がかさみ、利益を圧迫するからです。結果、企業は顧客との会話を減らす方向に動く。
Adaは、この「呪い」を解くために生まれました。
AIが反復的な問い合わせを自動化すれば、人間のオペレーターは複雑な問題に集中できる。
AIが24時間対応すれば、顧客は待たされることなくサポートを受けられる。
AIがスケールすれば、企業が成長しても、顧客との会話を減らす必要はない。
2026年現在、$151億のAIカスタマーサービス市場で、Sierra($10B評価額)やIntercom Finとの競争は激化しています。Trustpilot 2.0/5.0という厳しい評価、「Endless Loop」という批判もなお存在します。
しかし、ARR成長率108%、NRR 146%、Voice AI 12倍成長という数字は、市場がAdaの「エージェンティックAI」アプローチを支持していることを示しています。
これがAdaの本質です。栄光と批判の両面を持ちながら、エージェンティックAIの波に乗って加速するカスタマーサービス革命の先駆者。
主要ポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 創業者 | Mike Murchison(外傷性脳損傷からの復活、Geoffrey Hinton教授の講義を聴講) |
| 原点 | 「なぜ企業は大きくなるほど顧客と話さなくなるのか?」という問い |
| ピボット | Volley失敗後、最後の9ヶ月の資金をAdaに賭けた |
| 差別化 | ノーコード、50+言語ネイティブ対応、統合Reasoning Engine |
| 実績 | 64億会話を処理、IPSY ROI 943%、Loop ROI 357% |
| 批判 | Trustpilot 2.0/5.0、「Endless Loop」問題 |
| 評価額 | $1.2B(約1,800億円、2021年5月) |
| ARR成長率 | 108%(2026年3月発表) |
| 競合 | Sierra($10B)、Intercom Fin、Zendesk AI |
次のステップ
- 導入を検討している方: Adaの公式サイトで実際のデモを確認。Trustpilotのレビューも合わせて確認を推奨
- 市場調査をしている方: Sierra、Intercom Fin、Zendesk AIとの比較で最適なソリューションを検討
- 自社で活用したい方: 自社の問い合わせデータを分析し、「反復的で自動化可能」な領域を特定
関連記事
参考リソース
Ada公式
- Ada公式サイト
- Ada創業者インタビュー(TechCrunch)
- ada raises $130M in series c round at a $1.2B valuation
- Loop Earplugs Case Study
創業者関連
- Bessemer is proud to back Toronto-native, Ada Support
- Ada CEO Mike Murchison is using AI to 'make customer service extraordinary'
- The $750 Billion AI Opportunity in Customer Service | Mike Murchison
ピボット・成長関連
- Report: Ada's Business Breakdown & Founding Story | Contrary Research
- David Hariri on co-founding Ada, the pivot that created a unicorn
- How Ada piggybacked Zoom and Shopify's growth during the pandemic to become a Canadian unicorn
批判・レビュー
- Is Ada AI Chatbot Your Best Choice? [2026 Review]
- Ada Reviews 2026: Details, Pricing, & Features | G2
その他
本記事はネクサフローのAI研究シリーズの一部です。
この記事の著者

中村 知良
代表取締役
早稲田大学卒業後、ソフトバンク株式会社にてAI活用やCEO直下案件のプロジェクトマネージャーに従事。その後、不動産スタートアップPit in株式会社の創業、他スタートアップでの業務改善・データ活用を経験後、2023年10月、株式会社ネクサフローを創業し代表取締役CEO就任。


