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プライシング

景品表示法と価格表示:二重価格・有利誤認を避ける

5分で読める|2026/04/15|
プライシング法規制景品表示法コンプライアンス

この記事の要約

景品表示法における価格表示の考え方を、比較対照価格、キャンペーン運用、社内確認フローの観点から整理し、有利誤認を避ける実務ポイントをまとめます。

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B!

価格表示で問題になりやすいのは、値引き率の大きさそのものではありません。問われるのは、その価格が何と比較されているのか、比較対照価格は実在していたのか、そしてキャンペーン終了後も表示が残っていないかです。

EC や SaaS では、LP、料金ページ、申込画面、請求画面が別々に更新されるため、ひとつの施策でも表示根拠がずれやすくなります。強い訴求を作る前に、比較対象の定義、適用条件、表示終了のタイミングを揃えておくほうが重要です。

本記事では、景品表示法の価格表示を、改正年や個別事件の一覧ではなく、二重価格表示、有利誤認を避けるための実務フローとして整理します。

⚠️

免責事項 本記事は法制度の一般的な解説を目的としており、法的アドバイスではありません。 法令や運用は更新されることがあるため、具体的な案件では最新の公的資料と弁護士等の専門家確認を前提にしてください。


この記事でわかること

  1. 比較対照価格の考え方: 二重価格表示で何が問われるのか
  2. 危険な表示パターン: キャンペーン、最安表示、年額比較で崩れやすい点
  3. 運用フロー: EC・SaaS で画面間の不整合を防ぐチェック項目

基本情報

項目内容
トピック景品表示法と価格表示の実務
カテゴリプライシング、コンプライアンス
対象読者マーケティング担当、EC 事業者、SaaS 事業者、法務担当
難易度初級〜中級

景品表示法で価格表示が問題になる理由

景品表示法の価格表示で中心になるのは、「実際よりも著しく有利に見せていないか」という観点です。価格そのものが安いか高いかよりも、消費者が受け取る比較の意味が実態と合っているかが見られます。

ありがちなズレどこが問題になるか実務で先に確認したいこと
存在しない通常価格を置く比較対照価格が実在しないその価格で売っていた期間、対象商品、販売チャネル
比較条件が違うまま割引率を出す同じ条件同士の比較になっていない契約期間、機能範囲、対象顧客、初期費用の有無
キャンペーン表示を下ろし忘れる既に通常価格ではないのにお得表示が残る終了日、終了後の表示文言、配信停止の責任者
画面ごとに価格表記がばらつく申込前後で認識が変わり誤認を招くLP、料金ページ、カート、請求メールの同期
「最安」「最もお得」を広く使う比較範囲や調査時点が曖昧比較対象、調査日、対象地域、除外条件

価格表示はコピーの強さより、証跡の強さで守るべき領域です。社内で「この価格は何を根拠に表示しているか」を一文で説明できないときは、表示を弱めたほうが安全です。


二重価格表示は「比較対象の実在」が前提

二重価格表示は、現在価格と比較対照価格を並べてお得感を伝える方法です。便利ですが、比較対照価格の根拠が弱いと、そのままリスクになります。

比較対照価格ごとの確認ポイント

比較対照価格実務で確認したいこと
自社の過去価格実際に販売していたか、直近の価格か、同じ商品・同じ条件か
メーカー希望小売価格現在も有効な資料があるか、対象 SKU が一致しているか
競争事業者の価格比較対象が同等条件か、調査日時を残しているか、付帯費用まで揃うか
月額と年額の比較契約期間、初期費用、途中解約条件、無料期間を含めて同条件か
キャンペーン前価格と後価格の比較いつまでその価格だったか、対象者は誰か、終了後に表示を戻せるか

「8週間ルール」だけで安全とは言えない

実務では、自社の過去価格を通常価格として示すときに「8週間ルール」という言い方がよく使われます。ただし、数字だけ満たしていれば必ず安全、満たさなければ直ちに違法、という理解で運用すると危険です。

重要なのは、次の 3 点です。

観点見るべきこと
継続性テスト的に短期間だけ付けた価格ではなく、実態として販売していたか
直近性長く使っていない古い価格を、いまの通常価格のように見せていないか
同一性同じ商品、同じプラン、同じ条件、同じチャネルの価格同士を比較しているか

過去価格を基準にする場合は、価格履歴、掲載期間、販売画面のスクリーンショット、対象 SKU や料金プラン、適用条件をセットで残しておくと運用しやすくなります。


危険になりやすい価格表示パターン

1. セールが常態化している

「今だけ」「期間限定」と表示しながら、実際には長期間その価格で売り続けると、値引き表示の根拠が弱くなります。セール価格が実質的な通常価格になっていないかを、終了日の有無だけでなく、運用実態で確認する必要があります。

2. 比較条件がそろっていない

年額プランを月額換算して「お得」と見せる場合でも、初期費用、最低利用期間、対象機能、サポート範囲が違えば、単純比較は危険です。SaaS では特に、営業見積もりとセルフサーブ価格の混在で条件差が生まれやすくなります。

3. 最安・最上位表現を広く使っている

「業界最安」「地域最安」「最も選ばれている」のような表現は、価格表示だけでなく比較広告の論点も含みます。対象範囲、調査時点、比較条件が言えないなら、順位表現を使わずに「このプランに含まれる価値」を説明したほうが堅実です。

4. 価格表示が画面間でずれている

LP では「初月無料」、申込画面では「契約初期費用あり」、請求画面では「日割りなし」といったずれは、ひとつひとつは小さく見えても、全体として誤認を強めます。価格の表記場所が増えるほど、法務より先に運用設計の問題になります。


EC・SaaS で先に整えたい運用フロー

価格表示のリスクは、法律知識だけでは減りません。企画、設定、公開、停止の流れを誰が持つかを決めておく必要があります。

フェーズ確認項目残しておきたいもの
企画比較対照価格の根拠、対象者、対象チャネル、終了条件企画メモ、承認ログ、比較根拠の一文
設定LP、料金ページ、カート、見積書、請求画面で同じ条件が表示されるか画面一覧、文言一覧、更新担当者
公開適用開始日、終了日、除外条件、無料期間後の課金条件が見えるか公開時スクリーンショット、配信設定
運用セール終了後に旧表示が残っていないか、営業資料が古いまま残っていないか週次点検ログ、差分確認記録
保管問い合わせや指摘があったときに根拠を説明できるか価格履歴、比較調査メモ、過去画面の控え

法務確認を入れたいトリガー

  • 新しい比較対照価格を使うとき
  • 「最安」「No.1」など順位表現を出すとき
  • 自動更新や長期契約を含むキャンペーンを打つとき
  • 代理店、販売店、営業見積もりなど複数チャネルで同時展開するとき
  • 旧価格、新価格、キャンペーン価格が短期間で何度も切り替わるとき

価格表示チェックリスト

公開前に、最低限次の質問に答えられる状態を作っておくと、表示の強さよりも表示の説明可能性を担保しやすくなります。

  1. 比較対照価格は、実在した価格か
  2. 比較しているのは、同じ商品・同じプラン・同じ条件か
  3. 対象者と対象チャネルは明確か
  4. セールや無料期間の終了後、何円になるか見えるか
  5. LP、申込画面、請求画面、営業資料で説明が一致しているか
  6. 表示を下ろす日と担当者が決まっているか
  7. 根拠資料を社内で出せるか

この 7 つのうち 1 つでも曖昧なら、コピーを強くするより、まず表示条件を整えるほうが優先です。


よくある質問

Q1. 「初月無料」「年額でお得」は必ず問題になるのか?

必ず問題になるわけではありません。重要なのは、無料期間後の課金条件、最低利用期間、途中解約時の扱い、比較対象となる月額プランの条件が揃っているかです。表示文言だけでなく、申込導線の中でも同じ説明になっているかを確認してください。

Q2. キャンペーン価格を長く続けてもよいか?

期間が長くなるほど、その価格が実質的な通常価格と見られやすくなります。終了予定日を設定するだけでなく、終了後に表示を戻す運用と、延長時の再承認フローを用意しておくほうが安全です。

Q3. 「業界最安」「地域最安」は使ってよいか?

比較対象、地域範囲、調査時点、同等条件が明確で、その説明を残せる場合に限って慎重に使うべき表現です。根拠資料をすぐ出せないなら、順位表現は避けるのが無難です。

Q4. 旧価格を見せながら料金改定を案内してもよいか?

改定前後の比較自体よりも、旧価格の位置付けが曖昧なまま残ることが問題になりやすくなります。「改定前価格」であること、いつまでの価格か、どの顧客に適用されるのかを明示し、一定期間後は表示を整理してください。


まとめ

主要ポイント

  1. 価格表示は比較の設計: 問われるのは安さではなく、何と比べているか
  2. 証跡が重要: 価格履歴、比較条件、スクリーンショット、承認ログを残す
  3. 運用で崩れやすい: LP、申込、請求、営業資料の不整合を先に潰す

次のステップ

  • 価格訴求のある画面を洗い出し、比較対照価格ごとに根拠を一文で整理する
  • セール終了日と表示停止の担当者を決める
  • 新しい価格コピーを出す前に、法務確認が必要なトリガーを社内ルール化する

参考リソース

消費者庁

  • 二重価格表示について
  • 不当な価格表示についての景品表示法上の考え方(価格表示ガイドライン)

🔗

プライシング法制度ガイド

回タイトル
1独占禁止法と価格設定
2景品表示法と価格表示(この記事)
3下請法と価格交渉
4消費者契約法・特商法
5アメリカの価格規制
6EUの価格規制
7GDPR・価格パーソナライゼーション
8グローバルコンプライアンス

本記事はプライシング法制度ガイドシリーズの一部です。

この記事の著者

猪良 幸太郎

猪良 幸太郎

東京理科大学卒業後、国内独立系コンサルティングファームに入社し、IT・業務コンサルタント兼マネージャーとして業務最適化やシステム導入プロジェクトを経験。その後プライシングスタジオに入社し、執行役員兼ビジネス本部長として顧客のプライシング変革支援をリードする傍ら、自社の新規事業立ち上げの推進にも従事。

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