
コストプライシングで再成長:V字回復した企業の共通点
AIサマリー
赤字から黒字へ。コストプライシングでV字回復を果たした企業の戦略と共通点。
業績不振から回復した企業には、ある共通点があります。それは「原点回帰」—コスト構造を見直し、適正な利益を確保する価格設定への回帰です。
本記事では、コストプライシングの再導入でV字回復を果たした企業の戦略と、その共通点を分析します。
この記事でわかること
- 原点回帰の理由: なぜコストプライシングが再評価されるのか
- V字回復企業の共通点: 成功企業に見られる3つのパターン
- 実践のステップ: 再成長に向けたアクションプラン
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| トピック | コストプライシングによる経営再建 |
| カテゴリ | プライシング戦略・経営再建 |
| 難易度 | 中級 |
| 対象読者 | 経営者、経営企画、事業再生担当 |
なぜ「原点回帰」が有効なのか
業績不振企業の典型的なパターン
業績不振企業には、以下のパターンが見られることがあります。
| 段階 | 状況 | 結果 |
|---|---|---|
| 1 | 価格競争に巻き込まれる | マージン低下 |
| 2 | 売上維持のため値下げ | さらにマージン低下 |
| 3 | コスト削減で対応 | 品質・サービス低下 |
| 4 | 顧客離れが加速 | 売上・利益ともに悪化 |
悪循環のトリガー: 「売上維持のための値下げ」
コストプライシングが打破する理由
コストプライシングは、この悪循環を断ち切る効果があります。
コスト構造を把握
↓
適正マージンを設定
↓
採算割れの取引を見直し
↓
利益を確保
↓
その利益で競争力を強化
ポイント: 「売上」ではなく「利益」を起点に考える
悪循環から好循環への転換V字回復企業の3つの共通点
共通点1: 原価の「見える化」を徹底した
回復企業は、まず原価構造を徹底的に「見える化」しました。
取り組み例:
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 原価把握 | 製品カテゴリ単位 | SKU(製品個別)単位 |
| 更新頻度 | 四半期ごと | 月次・リアルタイム |
| 責任者 | 経理部門のみ | 事業部門も参画 |
「どの製品が利益を生み、どの製品が赤字か」を明確にすることで、意思決定の精度が上がります。
共通点2: 採算割れ取引を見直した
原価が見えると、「実は赤字だった取引」が明らかになります。
典型的な発見:
- 「大口顧客」が実は赤字だった(過度な値引き)
- 「長年の取引先」が採算割れだった(コスト上昇を転嫁できていない)
- 「付帯サービス」が原価を押し上げていた
対応策:
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 値引きが過度 | 価格交渉、または取引縮小 |
| コスト転嫁不足 | 値上げ交渉 |
| 付帯サービスが無料 | 有料化または廃止 |
共通点3: 「適正利益」を再定義した
回復企業は、「何%の利益を確保すべきか」を再定義しました。
| 企業タイプ | 目標利益率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 製造業 | 営業利益率5-10% | 設備投資・R&Dに必要 |
| 小売業 | 営業利益率3-5% | 在庫リスクをカバー |
| サービス業 | 営業利益率10-15% | 人件費変動に対応 |
「利益を出すことは悪ではない」—この認識の転換が、V字回復の起点になります。
V字回復企業の3つの共通点事例1: ヤマト運輸の構造改革(2017年)
背景
ヤマト運輸は、EC市場の急拡大に伴う取扱個数の増加により、現場が疲弊していました。特にAmazonとの大口取引は、採算性に課題がありました。
| 指標 | 2016年度 | 2018年度 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 宅急便取扱個数 | 18.7億個 | 17.6億個 | -6% |
| 営業収益 | 1兆4,668億円 | 1兆6,253億円 | +11% |
| 営業利益 | 348億円 | 583億円 | +68% |
取り組み
Step 1: 原価の見える化
- 荷物1個あたりのコストを詳細に分析
- 大口顧客別の採算性を把握
Step 2: 採算割れ取引の特定
- Amazon向け取引の採算性を検証
- 再配達コスト(全体の約2割)の可視化
Step 3: 価格交渉と取引見直し
- 2017年10月: 27年ぶりの基本運賃値上げ(宅急便+16-20%)
- 大口顧客との個別交渉で単価引き上げ
- 一部取引の縮小(取扱個数を意図的に減少)
出典: 日本経済新聞「ヤマト、27年ぶり値上げ」(2017年)
Step 4: 結果
- 取扱個数は減少したが、営業利益は68%増加
- 「量より質」への転換に成功
事例2: 日本マクドナルドの経営再建(2015-2017年)
背景
日本マクドナルドは、2014年の使用期限切れ鶏肉問題などで業績が急悪化し、2015年には347億円の最終赤字を計上しました。
| 指標 | 2015年 | 2017年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,894億円 | 2,536億円 | +34% |
| 営業利益 | -67億円 | 189億円 | 黒字転換 |
| 既存店売上高 | -15.2% | +11.9% | +27.1pt |
取り組み
Step 1: 原価・店舗の見える化
- 全国約3,000店舗の収益性を個別分析
- メニュー別の原価と利益率を精査
Step 2: 採算割れ取引の見直し
- 不採算店舗を2015年に131店舗、2016年に69店舗閉鎖
- 低収益メニューの見直しと価格改定
Step 3: プライシング戦略の見直し
| Before | After |
|---|---|
| 値下げで集客 | 価値訴求で単価向上 |
| 100円メニュー重視 | 高単価セットで利益確保 |
| 全店舗維持 | 不採算店舗を閉鎖 |
出典: Harvard Business Review「マクドナルドのV字回復」
Step 4: 結果
- 「おてごろセット」(500円)など価値訴求で客単価向上
- 店舗数減少でも売上・利益ともに大幅改善
- サラ・カサノバCEOのもと「ビジネスリカバリープラン」を完遂
再成長のためのアクションプラン
フェーズ1: 現状把握(1-2ヶ月)
| タスク | 内容 | 成果物 |
|---|---|---|
| 原価分析 | SKU/顧客別の原価を算出 | 原価データベース |
| 採算分析 | 製品・顧客別の損益を把握 | 損益マトリクス |
| ベンチマーク | 業界標準のマージンを調査 | 競合分析レポート |
フェーズ2: 戦略策定(1ヶ月)
| タスク | 内容 | 成果物 |
|---|---|---|
| 目標設定 | 目標利益率を再定義 | 利益目標 |
| 優先順位 | 見直し対象の取引を特定 | 優先順位リスト |
| シナリオ | 価格改定のシナリオ作成 | 価格改定計画 |
フェーズ3: 実行(3-6ヶ月)
| タスク | 内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 価格交渉 | 顧客との交渉を実施 | 関係維持と利益確保のバランス |
| 取引見直し | 採算割れ取引を縮小・終了 | 代替収益源の確保 |
| モニタリング | 改善効果を追跡 | KPIダッシュボード |
よくある質問(FAQ)
Q1. 値上げすると顧客が離れるのでは?
一部の顧客は離れる可能性があります。しかし、「採算割れ顧客」が離れることは、利益の観点ではプラスです。重要なのは、優良顧客を維持することです。
Q2. 売上が減っても大丈夫?
利益が増えれば、売上減少は許容範囲です。「売上」ではなく「利益」を経営指標の中心に置く発想の転換が必要です。
Q3. 社内の反発はどう対処する?
営業部門は売上目標で評価されることが多く、価格改定に反発する可能性があります。評価指標を「売上」から「粗利」や「営業利益」に変更することで、インセンティブを揃えられます。
Q4. どの取引から見直すべき?
以下の優先順位で見直します:
- 赤字幅が大きい取引
- 改善余地がある取引(交渉可能)
- 将来性が低い取引
Q5. 価格改定の交渉はどう進める?
「コスト上昇」「品質維持のため」など、顧客にとって納得できる理由を示すことが重要です。コストプライシングは、価格の根拠を示しやすい構造です。
まとめ
V字回復企業の共通点
| # | 共通点 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 原価の見える化 | SKU・顧客単位で原価把握 |
| 2 | 採算割れ取引の見直し | 赤字取引を特定し対処 |
| 3 | 適正利益の再定義 | 「利益を確保する」方針に転換 |
次のステップ
- 自社の原価構造を「見える化」する
- 採算割れの取引を特定する
- 目標利益率を設定し、価格改定計画を策定する
参考リソース
経営再建
原価管理
コストプライシング シリーズ
概念を理解する
自社に適用する
成功事例に学ぶ
本記事はコストプライシングシリーズの一部です。
この記事の著者

猪良 幸太郎
東京理科大学卒業後、国内独立系コンサルティングファームに入社し、IT・業務コンサルタント兼マネージャーとして業務最適化やシステム導入プロジェクトを経験。その後プライシングスタジオに入社し、執行役員兼ビジネス本部長として顧客のプライシング変革支援をリードする傍ら、自社の新規事業立ち上げの推進にも従事。


