
OpenAI GTMリーダーが明かす営業採用の極意「責任転嫁」の赤信号
AIサマリー
OpenAI GTMリーダーMaggieがSasterポッドキャストで語った営業採用の極意。面接で責任転嫁を見抜く方法、コミッション不要の文化、100%成功率のパイロットプログラムの秘訣など、実践的ノウハウを解説します。
OpenAIのGTM(市場投入戦略) リーダーMaggieが、Sasterポッドキャストで営業採用・キャリア選択・医療AI変革について語った対談から、実践的なノウハウを解説します。
本記事の表記について
- 下線付きの用語にカーソルを合わせると解説が表示されます
この記事でわかること
- 営業採用の赤信号: 面接で「責任転嫁思考」を見抜く具体的質問
- 100%成功率の秘密: OpenAIが実践するパイロットプログラム設計の4要素
- キャリア選択の極意: 「ロケットシップに乗れ、座席は選ぶな」の真意
- コミッション不要文化: OpenAI・Slack・Figmaが採用する営業報酬設計
- 医療AI変革: OpenAIが目指す臨床試験期間の大幅短縮
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| トピック | 営業採用・キャリア |
| カテゴリ | 対談解説 |
| 難易度 | 中級 |
Maggieとは?OpenAI GTMリーダーのプロフィール
Maggieは、OpenAIのGTM(市場投入戦略) リーダーです。Slack、Webflowを経て2023年にOpenAIへ参加しました。
キャリアパス:Slack → Webflow → OpenAI
Maggieのキャリアは「タイトルより企業を選ぶ」判断の連続です。
- Eventbrite: キャリア初期
- Slack(2015-): 初期の営業チーム参加、組織拡大を経験
- Webflow(2年): 50人規模の組織でSenior Director
- OpenAI(2023-): 7人のGTMチームに個人貢献者として参加
この選択の背景には、Atlassian CRO(最高売上責任者) Kevin Eganから学んだ教えがあります。
Kevin Eganの教え: 「Pick the rocket ship, not the seat(座席ではなくロケットシップを選べ)」
タイトルや役職よりも成長企業を選ぶという教えです。ロケットシップに乗れば、キャリアは想像を超える場所へ行きます。
キャリアタイムラインステージ4膵臓癌からの回復が変えたリーダーシップ哲学
2023年、Maggieはロンドン出張中に膵臓癌(ステージ4)と診断されました。予防的MRIで早期発見し、手術で克服しています。
この経験が、リーダーシップ哲学を大きく変えました。
- コンパッション(思いやり)の重要性: 「誰もが何かを抱えている」前提で接する
- 中途半端な努力への不寛容: 「全力を尽くさない人を許容できなくなった」
- 自己主張の重要性: 米国医療制度で自分の健康を守るため徹底的に主張
- 誰もが代替可能である現実: 手術1ヶ月後に急いで復帰したが、振り返れば不要だった
"I have no tolerance for mediocrity anymore."
「もう中途半端さを許容できません」
— Maggie, OpenAI GTMリーダー
営業採用で絶対に見逃せない「責任転嫁」の赤信号
Maggieが営業採用で最も重視するのは「ブレーム(責任転嫁)」の検出です。
面接で必ず聞くべき質問「失敗した案件とその理由は?」
営業面接では、次の質問が必須です。
「失敗した案件について教えてください。なぜ負けたのですか?」
この質問で、候補者が失敗を誰のせいにするかを見極めます。
NG回答の例:
- 「Salesforceには勝てなかった」(競合のせい)
- 「製品が足りなかった」(製品のせい)
- 「価格が高すぎた」(会社のせい)
OK回答の例:
- 「彼は私よりディスカバリー(顧客課題の発見)が上手でした」
- 「私は準備不足でした。次回は〜を改善します」
- 「顧客のニーズを十分に理解できていませんでした」
責任転嫁検出フロー約1週間で判明する他責思考の兆候
Maggieは「採用ミスは約1週間で分かる」と述べます。
他責思考の人は入社後すぐに次のような発言をします。
- 「この製品では勝てない」
- 「競合が強すぎる」
- 「マーケティングのサポートが足りない」
優秀な営業は「自分に何ができるか」を考え、行動します。
謙虚さが最も重要な資質である理由
Maggieは「謙虚さ(humility)」と「自己反省力」を最重視します。
トップセラーでなくても問題ありません。重要なのは「なぜトップになれなかったか」を自己分析できるかです。
Stanford MBA卒がSDRから始めた理由:エゴを捨てた「Molly」の成功事例
2023年5月、OpenAIが初めてSDR(営業開発担当) を採用する際、Maggieは50人のStanford・Harvard MBA卒に声をかけました。
50人中49人が断ったSDRポジション
49人は「MBA卒でSDRはやりたくない」と断りました。唯一、Mollyだけが受諾しました。
Mollyの経歴:
- Googleで8年の経験
- Stanford GSB(ビジネススクール)トップクラス卒業
- SDRポジションを「成長のチャンス」と捉えた
"Molly had no ego. Those 49 other people... they all had an ego."
「Mollyにはエゴがありませんでした。他の49人は全員エゴがありました」
— Maggie, OpenAI GTMリーダー
「エゴがない」ことの圧倒的な競争優位
Mollyは数ヶ月でSDR組織を構築しました。現在はOpenAIのトップセラーの一人として活躍しています。
49人のうち40人以上が後から「OpenAIに入りたい」と連絡してきました。しかし、ほとんど採用されませんでした。
「エゴを捨てること」が最大の差別化になる。この事例が証明しています。
「ロケットシップに乗れ、座席は選ぶな」キャリア選択の極意
Kevin Egan(Atlassian CRO)の教え
Kevin Eganは伝説的CRO(最高売上責任者) です。以下のキャリアを歩みました。
- Salesforce → Dropbox → Slack → Atlassian → Clickhouse
彼の教え「Pick the rocket ship, not the seat」が、Maggieのキャリア選択の軸になりました。
OpenAI参加の決断:
- Webflowで50人規模の組織を率いるSenior Director
- OpenAIは7人のGTMチーム、個人貢献者として参加
- 多くのVCやメンターが「キャリアダウンだ」と反対
Maggieは「ロケットシップに乗る」ことを選びました。結果、OpenAIは急成長し、現在は大組織になっています。
クリエイター vs ディスラプター:企業タイプ別の戦略
Maggieは企業を2つのタイプに分類します。
カテゴリークリエイター(Category Creator)
例: Slack、ChatGPT
特徴:
- 新しいカテゴリーを創造
- 競合が必ず現れる
- 速度とブランド構築が勝負
勝つための戦略:
- 競合対策を徹底
- Microsoft、Googleなどの大手が模倣してくる前提で動く
ディスラプター(Disruptor)
例: Webflow、Clay
特徴:
- 既存市場に挑戦
- 既存プレイヤーに対抗
勝つための戦略:
- 圧倒的な製品品質
- 流通網の構築(例: Clayの「Clencencies」戦略)
- 既存プレイヤーが追いつく前に速度勝負
クリエイター vs ディスラプター比較コミッション不要の営業文化:OpenAI・Slack・Figmaの成功事例
アーリーステージでコミッション不要にする理由
OpenAIとSlackは初期段階でコミッション(成果報酬)を導入していませんでした。
コミッションがない場合の利点:
- チームワーク優先: コミッションがあると個人の売上が最優先になる
- リオーグ・ピボットが容易: チーム再編成やビジネスモデル変更がスムーズ
- 「ビルダー気質」の人材を惹きつける: 金銭より成長を重視する人材が集まる
Maggieの説明:
「コミッションがあると、顧客対応以外の時間(オンボーディング、トレーニング)が文字通り『損失』になります」
OpenAIでは頻繁にチーム再編成やピボットが起こります。コミッションがないため、誰も「売上が減る」と不満を言いません。
固定給+株式モデルの実践
報酬モデル:
- 固定給: 他のポジション(PM、エンジニア)と同等の競争力ある給与
- 株式: 初期メンバーには十分な株式を付与
- MBO(目標達成ベースの評価): 目標達成ベースのボーナス
コミッション導入のタイミング:
- アーリーステージではコミッション不要
- 成長後、組織が安定してから導入
同様のモデルを採用している企業:
- Stripe
- Figma
- Airtable
- New Relic
100%成功率のパイロットプログラムの秘訣
OpenAIはパイロットプログラム(試験導入)で100%の成功率を誇ります。
4つの必須要素
1. エグゼクティブバイイン(経営層の関与)
経営層の関与なしでパイロット不可
多くの企業はIT部門やミドルマネージャーとパイロットを開始し、失敗します。
OpenAIではパイロット前に必ず経営層にChatGPTのトレーニングを受けてもらいます。経営層が関与しなければ、パイロットは実施しません。
2. 反復可能なプレイブック
顧客を自社のプロセスに従わせる
多くの企業は「顧客のやり方に合わせる」と失敗します。
OpenAIでは数百〜数千のパイロットで検証済みのプレイブックを提示します。「このやり方に従ってください」と伝えます。
顧客が「私たちのやり方でやりたい」と言っても、基本的には断ります(微調整は許容)。
3. ROI測定(成果指標の設定)
パイロット前後で成果を測定
- パイロット開始前にサーベイを実施
- パイロット終了後にサーベイを実施
- 成果を数値で明確化
4. 専任チーム投入
「無料トライアル放置」が失敗する理由
多くの企業は「2週間無料トライアル、がんばってください」と顧客を放置します。結果、契約に至りません。
OpenAIではパイロット中にOpenAIチームが全面的にサポートします。顧客は「OpenAIと働く経験」を味わい、パートナーシップを感じます。
"We have a 100% win rate on pilots..."
「パイロットプログラムは100%成功しています」
— Maggie, OpenAI GTMリーダー
パイロット成功4ステップ社内で急速に昇進する方法:「最も助けになる人」であれ
Slackハッキング事件での顧客対応
2015年3月23日、Maggieの入社4日目にSlackが大規模ハッキングを受けました。
Stuart Butterfield(Slack CEO)はハッキングされた大手企業の顧客対応を誰かに任せる必要がありました。
Maggieは自ら手を挙げました。
結果:
- Fortune 10企業からの怒りの電話を初日に対応
- 経営陣から高く評価される
- Slackでのキャリアが大きく加速
"The single most important thing is to be the most helpful person possible."
「最も重要なことは、可能な限り最も助けになる人であることです」
— Maggie, OpenAI GTMリーダー
ただし境界線は必要:バーンアウト防止策
「最も助けになる人」と「何でも引き受ける人」は違います。
Maggieは「境界線を引くことが苦手」だと認めています。持続可能な働き方を設計することの重要性を強調しています。
ワークライフバランスの現実:週7日・深夜勤務と家族時間の両立
Maggieの1日のスケジュール
- 16: 毎日必ずオフィスを退社
- 16:30-19: 子供との時間(2人の娘)
- 19:30-24: 勤務再開
- 週7日稼働: 土日も含めて働く
1日のスケジュール絶対に守る家族イベント
Maggieは「火曜日の夜にテレビを見る時間はない」と述べます。一方、以下は絶対に守ります。
- 子供の発表会は絶対に欠席しない
- 来週月曜14(13)
カレンダーに家族イベントを明記してチームに透明性を確保しています。
"I leave the office by 4 every single day, but you better believe I'm on from 7 to midnight."「毎日16、19」— Maggie, OpenAI GTMリーダー
「バランス」は幻想、「優先順位」の問題
Maggieは「ワークライフバランス」という言葉を否定します。
「バランス」ではなく「優先順位」の問題です。
- 最優先: 子供の重要イベント
- 次優先: OpenAIのミッション達成
- 後回し: 夫とのテレビ時間
Harry Stebbings(ホスト)も「996(朝9時〜夜9時、週6日)」を実践しています。ハードワークによる信頼構築を語っています。
大企業は意外と速く動ける:AI時代の意思決定スピード
従来「大企業=遅い」と思われてきました。しかしAI時代ではその常識が覆されています。
生存への危機感が生む爆速意思決定
大企業がAI導入で速く動く理由:
- 取締役会からのプレッシャー: 「AI戦略は何か?」と問われる
- 生存への危機感: 小さなスタートアップに市場を奪われる恐怖
- 意思決定権の集中: CEO直下でAI導入が進む
実例:
- 政府機関(Ministry of Justice等): 数ヶ月でパイロット完了・導入決定
- 石油・ガス・エネルギー企業: 従来は遅いが、AI導入は爆速
- 航空会社: デジタルネイティブ企業より速い場合も
"Large enterprises can move now faster than smaller digital natives."
「大企業は今やデジタルネイティブ企業より速く動けます」
— Maggie, OpenAI GTMリーダー
AIによる医療変革:OpenAIの最優先ミッション
Maggieは癌克服の経験から、OpenAIの医療分野への注力に情熱を注いでいます。
臨床試験期間の大幅短縮
現状の課題:
- 新薬がFDA(米国食品医薬品局) やEMA(欧州医薬品庁) の承認を得るまで5-10年かかる
- 承認プロセスのボトルネック: データ整理、文書作成、プロトコル修正
OpenAIの目標:
- 臨床試験期間を大幅に短縮
- ThermoFisher Scientificとの大型提携で臨床試験プロセス全体を再設計
"Every single day that we can get a therapy out to market faster is going to be more lives saved."
「治療法を1日でも早く市場に出せれば、それだけ多くの命が救われます」
— Maggie, OpenAI GTMリーダー
HIPAA準拠版医師向けAIコパイロット
ChatGPTへのヘルスケアクエリ:
- 週数億件のヘルスケア関連の質問がChatGPTに寄せられる
- 例: 「子供に発疹ができた」「この診断を受けたがどうすればいい?」
HIPAA準拠版の展開:
- HIPAA(米国医療情報保護法) 準拠版をリリース
- UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)等のトップ病院で導入
- 医師・看護師が最新の医療知識にアクセスし、診断支援を受ける
医師のバーンアウト対策:
- 医師は最新の医療研究についていく時間がない
- AIコパイロットが常に最新情報を提供
営業における女性不足の深刻化
母親としてのロールモデル発信
Maggieは「営業・AI業界で女性比率が悪化している」と警告します。
LinkedInでの発信:
- 投稿の半分は「母親業」に関するもの
- 「母親でもリーダーになれる」というメッセージ
VC業界でも同様の課題:
- 最近のVC主催ディナー: 13人の男性、2人の女性
- 女性リーダーが圧倒的に少ない
"There's not enough women in sales right now. And it is getting worse over time."
「営業業界の女性が足りません。そして状況は悪化しています」
— Maggie, OpenAI GTMリーダー
よくある質問(FAQ)
Q1. 営業面接で責任転嫁を見抜く質問は?
「失敗した案件とその理由を教えてください」と聞きます。競合や製品のせいにせず、自己反省と学びを語れるかを確認します。約1週間で他責思考は判明します。
Q2. OpenAIのパイロットプログラムが100%成功する理由は?
エグゼクティブバイイン、反復可能なプレイブック、ROI測定、専任チーム投入の4要素を徹底しています。顧客を自社のプロセスに従わせることで成功率を最大化しています。
Q3. コミッション不要の営業文化はいつまで続けるべき?
アーリーステージではチームワーク優先のため不要です。成長後にコミッションを導入するのが一般的です。Stripe、Figma、Airtableも同様のアプローチです。
Q4. 「ロケットシップに乗れ、座席は選ぶな」の意味は?
タイトルや役職より成長企業を選べという教えです。Atlassian CRO Kevin Eganの言葉で、Maggieは50人規模のWebflowから7人のOpenAIに移りました。
Q5. Stanford MBA卒がSDRから始めた理由は?
「Molly」はエゴを捨て、成長企業で学ぶことを優先しました。50人中49人が断った中、唯一受諾し、現在トップセラーとして活躍しています。
Q6. ワークライフバランスを保ちながら成果を出す方法は?
Q7. 大企業はAI導入に本当に速く動ける?
はい。生存への危機感から政府機関でも数ヶ月で導入完了します。取締役会からのプレッシャーでデジタルネイティブより速い例もあります。
まとめ
主要ポイント
- 営業採用では「責任転嫁」の赤信号を見逃すな: 面接で失敗談を聞き、他責思考を検出する
- パイロット成功の4要素: エグゼクティブバイイン、プレイブック、ROI測定、専任チーム
- エゴを捨てることが最大の差別化: Stanford MBA卒のSDR成功事例が証明
- キャリアでは「ロケットシップ」を選べ: タイトルより成長企業を優先
- ワークライフバランスは優先順位の問題: 重要な家族イベントは絶対に守る
次のステップ
- 営業面接で「失敗談」を聞く質問を取り入れる
- パイロットプログラムの設計を4要素で見直す
- 自分のキャリアで「ロケットシップ」を見つける
- エゴを捨て、「最も助けになる人」を目指す
参考リソース
本記事はネクサフローのAI研究シリーズの一部です。
この記事の著者

中村 知良
代表取締役
早稲田大学卒業後、ソフトバンク株式会社にてAI活用やCEO直下案件のプロジェクトマネージャーに従事。その後、不動産スタートアップPit in株式会社の創業、他スタートアップでの業務改善・データ活用を経験後、2023年10月、株式会社ネクサフローを創業し代表取締役CEO就任。


