競合の定義:直接競合・間接競合・代替手段の見分け方
AIサマリー
競合を正しく定義する方法を解説。直接競合、間接競合、代替手段の3層構造と、SaaSでの競合マッピング実践法を紹介します。

「競合は誰ですか?」と聞かれて、すぐに答えられるでしょうか。しかしその答えは本当に正しいのでしょうか。
本記事では、競合を正しく定義する方法と、価格戦略への活かし方を解説します。
この記事でわかること
- 競合の3層構造: 直接競合、間接競合、代替手段の違い
- SaaSでの見落としパターン: 「競合がいない」という錯覚
- 競合マッピングの実践: 価格×機能マトリクスの作り方
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| トピック | 競合の定義と分類 |
| カテゴリ | プライシング戦略 |
| 難易度 | 初級〜中級 |
| 対象読者 | プロダクトマネージャー、マーケティング担当 |
競合の3層構造
競合は1種類ではありません。3つの層で捉える必要があります。
競合の3層構造第1層: 直接競合
同じカテゴリで、同じ顧客層を狙う製品です。
顧客が「どちらにしようか」と比較検討する対象が直接競合です。
| 自社製品 | 直接競合の例 |
|---|---|
| Notion | Evernote、Confluence、Obsidian |
| Salesforce | HubSpot CRM、Zoho CRM |
| Slack | Microsoft Teams、Discord(ビジネス用途) |
第2層: 間接競合
異なるカテゴリだが、同じ課題を解決する製品です。
顧客は必ずしも「同じカテゴリ」で比較しません。「この課題を解決したい」という視点で選びます。
| 自社製品 | 間接競合の例 |
|---|---|
| Notion | Google Docs、Microsoft Word、Figma(ドキュメント用途) |
| Calendly | Zoom(ミーティング設定機能)、秘書サービス |
| Figma | PowerPoint(簡易デザイン用途) |
第3層: 代替手段
製品を使わない選択肢です。しばしば見落とされるレイヤーです。
| カテゴリ | 代替手段の例 |
|---|---|
| SaaS全般 | Excel、Googleスプレッドシート |
| ノートアプリ | 紙のノート、付箋 |
| プロジェクト管理 | メールでのやり取り、ホワイトボード |
| 全カテゴリ共通 | 「何もしない」(現状維持) |
SaaSにおける競合の見落としパターン
「うちには競合がいない」──これは危険な認識です。
パターン1: 「カテゴリ」で絞りすぎる
Notionの競合はEvernoteだけではありません。
Notionの競合マップ(正しい認識)
| 層 | 競合 |
|---|---|
| 直接競合 | Evernote、Confluence、Obsidian、Coda |
| 間接競合 | Google Docs、Figma(FigJam)、Miro |
| 代替手段 | Excel、紙ノート、何もしない |
パターン2: 「何もしない」を軽視する
顧客が「現状維持」を選ぶことは、競合に負けることと同じです。
SaaSの場合、導入コスト(時間、学習、移行作業)が障壁になります。「今のままでも困っていない」と思わせたら、どんな製品も売れません。
パターン3: 新興プレイヤーを無視する
市場は常に変化しています。
例: Figmaの登場
- 2016年時点: SketchとAdobe XDの2強
- 2020年時点: Figmaがシェア急拡大
- 2022年: Adobe がFigmaを買収発表(後に断念)
競合の定義は固定ではなく、定期的な見直しが必要です。
代替手段としての「何もしない」
最も手強い競合は「何もしない」です。
なぜ「何もしない」が選ばれるのか
- 変化のコスト: 新しいツールの学習、データ移行
- リスク回避: 「今のやり方で問題ない」という安心感
- 優先度の低さ: 他に解決すべき課題がある
価格戦略への示唆
「何もしない」に勝つには、価格だけでは不十分です。
- ROIの明示: 「月5時間の工数削減 = 年間○○万円相当」
- 導入ハードルの低減: 無料トライアル、移行サポート
- リスクの最小化: 返金保証、段階的導入
競合マッピングの実践手法
競合を可視化する方法を紹介します。
価格×機能マトリクス
最もシンプルなマッピング手法です。
競合マッピングマトリクス作成手順
- **縦軸に「価格」**を設定(上が高価格)
- **横軸に「機能数」または「機能の深さ」**を設定(右が多機能)
- 競合をプロットする
- 自社の現在位置と目指すポジションを明示
顧客インタビューからの発見
マトリクスだけでは見えない競合があります。
質問例
- 「当社の製品を検討する前、何を使っていましたか?」
- 「当社と比較検討した製品は何ですか?」
- 「もし当社の製品がなかったら、何を使いますか?」
これらの質問で、顧客視点の競合が見えてきます。
RFP(提案依頼書)からの情報
B2B SaaSでは、RFPで競合が明確になります。
- 比較対象として挙げられている製品
- 要件として求められている機能(=競合が持っている機能の可能性)
- 価格レンジの示唆
競合定義の更新頻度
市場は変化します。競合の定義も更新が必要です。
推奨する見直しタイミング
| 頻度 | トリガー |
|---|---|
| 四半期ごと | 定期レビュー |
| 随時 | 新規プレイヤーの参入 |
| 随時 | 既存競合の大幅な価格変更 |
| 随時 | 自社製品の大幅アップデート |
| 随時 | 市場トレンドの変化(例: AI機能の必須化) |
見直し時のチェックリスト
- 新規参入プレイヤーはいないか
- 既存競合の価格に変化はないか
- 顧客が言及する「比較対象」に変化はないか
- 代替手段に新しい選択肢はないか(例: AI活用の台頭)
よくある質問(FAQ)
Q1. 直接競合が多すぎて絞れない場合は?
上位3〜5社に絞ることを推奨します。顧客が実際に比較検討する対象は限られています。商談やRFPでよく名前が挙がる競合を優先してください。
Q2. 間接競合まで分析する必要があるのか?
はい、特にSaaSでは重要です。顧客は「カテゴリ」ではなく「課題解決」で選びます。間接競合を見落とすと、失注理由がわからなくなります。
Q3. 競合マッピングは誰が担当すべきか?
プロダクトマーケティングまたは事業企画が適任です。営業、カスタマーサクセス、プロダクトからの情報を統合する役割が必要です。
まとめ
主要ポイント
- 競合は3層(直接・間接・代替手段)で捉える
- 「何もしない」は最も手強い競合
- 価格×機能マトリクスで競合を可視化する
- 競合定義は四半期ごとに見直す
次のステップ
- 自社の競合を3層で整理する
- 顧客に「比較対象」を聞く
- 価格×機能マトリクスを作成する
参考リソース
競合分析
競合インテリジェンス
競合ベースプライシング完全ガイド
| 回 | タイトル |
|---|---|
| 1 | 競合ベースプライシング入門 |
| 2 | 競合の定義(この記事) |
| 3 | 競合価格の調査方法 |
| 4 | 競合ベース戦略の5パターン |
| 5 | ポジショニングと価格の単位 |
| 6 | ゲーム理論で読む競合の反応 |
| 7 | 価格決定権は誰が持っているか |
| 8 | 競合ベースを超えて |
本記事は競合ベースプライシングシリーズの一部です。
この記事の著者

猪良 幸太郎
東京理科大学卒業後、国内独立系コンサルティングファームに入社し、IT・業務コンサルタント兼マネージャーとして業務最適化やシステム導入プロジェクトを経験。その後プライシングスタジオに入社し、執行役員兼ビジネス本部長として顧客のプライシング変革支援をリードする傍ら、自社の新規事業立ち上げの推進にも従事。


