
イーロン・マスクが語る「働かなくてもいい未来」は20年以内に来る
AIサマリー
イーロン・マスク氏は、20年以内に働くことが任意になる未来を予測し、AIとロボティクスが全労働を代替すると述べています。また、お金の概念が消滅し、エネルギーが真の価値基準になると主張。シミュレーション仮説についても言及し、私たちが仮想現実の中にいる可能性が高いとしています。起業家には「取る以上に作れ」という価値創造の原則を提唱し、Starlink技術の利点や政府効率化の改革についても触れています。
テスラCEO、SpaceX創設者、X(旧Twitter)オーナーとして知られるイーロン・マスク氏が、インド起業家向けメディアで2時間超のロングインタビューを行いました。そこで語られたのは、「20年以内に働くことが任意になる」「お金という概念が消滅する」「我々はシミュレーション仮説(仮想現実の中で生きている可能性)の世界にいる確率が高い」など、驚きの未来予測でした。
本記事では、この貴重なインタビューの全内容を体系的に解説します。AI時代の働き方、起業家へのメッセージ、技術的洞察まで、マスク氏の思想を包括的に理解できる内容となっています。
本記事の表記について
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元動画: この記事は以下のインタビュー(英語・約2時間)を基に作成しています。
全編を視聴したい方はこちら:YouTube: Elon Musk Interview Full Version
この記事でわかること
- 働かない未来の到来: マスク氏は20年以内(可能性としては10-15年)に、AIとロボティクスが全労働を代替し、働くことが完全に任意になると予測
- お金の消滅: 長期的には通貨という概念が消滅し、エネルギーが真の価値基準になるという驚きの見解
- シミュレーション仮説: 我々が仮想現実の中で生きている確率は「かなり高い」というマスク氏の哲学
- 起業家へのメッセージ: 「Aim to make more than you take(取る以上に作れ)」という価値創造の原則
- Starlink技術解説: なぜ農村部で最強で、都市部では非効率なのか
イーロン・マスクとは - 5社のCEOを務める起業家
プロフィール:Tesla、SpaceX、X、xAI、Neuralink
イーロン・マスク氏は1971年南アフリカ生まれ。カナダを経て米国に移住し、ペンシルバニア大学で物理学と経済学を学びました。現在は以下の企業を率いています。
| 企業名 | 役職/関係 | 事業内容 |
|---|---|---|
| Tesla | CEO | 電気自動車、エネルギー事業 |
| SpaceX | CEO、CTO | 宇宙輸送、Starlink衛星通信 |
| X(Twitter) | オーナー、CTO | ソーシャルメディア |
| xAI | CEO | AI開発(Grok等) |
| Neuralink | 共同創設者 | 脳-コンピュータインターフェース |
| Boring Company | 創設者 | トンネル掘削、インフラ |
これまでの主要な実績と革新
マスク氏は連続起業家として、複数の業界に革命をもたらしてきました。
PayPal時代(1999-2002): オンライン決済の民主化に貢献。eBayへの売却で初期資本を獲得。
SpaceX(2002-): 民間企業として初めて国際宇宙ステーションへの物資輸送を実現。再利用可能ロケットで宇宙輸送コストを劇的に削減。
Tesla(2003-): 電気自動車を高級車から普及価格帯まで展開。自動車業界全体のEVシフトを加速。
X買収(2022): 440億ドルで買収。プラットフォームの中立性回復と、「Everything App」構想を推進。
本インタビューの話者としての立ち位置
今回のインタビューは、インド起業家向けメディアが主催したもので、マスク氏が約2時間にわたり、技術、哲学、経済、政治まで幅広いトピックを語りました。複数の企業を経営する実務家でありながら、根源的な問いにも答える姿勢が印象的です。
20年以内に「働かなくてもいい未来」が到来する
マスク氏の予測:10-15年の可能性も
インタビューの冒頭、マスク氏は衝撃的な予測を語りました。
"My prediction is less than in less than 20 years working will be optional."
「私の予測では、20年以内に働くことは任意(オプション)になります。」
— イーロン・マスク
さらに、「実際には10-15年の可能性もある」と補足しました。この予測の前提は、AIとロボティクスの急速な発展です。
AIとロボティクスが全労働を代替
マスク氏によれば、現在のAIの進化速度は予想を超えています。特に以下の領域で急激な進展が見られます。
- 知的労働: GPT-4やGeminiなどのLLM(大規模言語モデル) が、プログラミング、ライティング、分析業務を代替
- 物理的労働: Tesla Optimusなどのヒューマノイドロボットが、製造、物流、介護などを担う
- 創造的労働: 音楽、デザイン、アートの生成も可能に
これらの技術が組み合わさることで、「人間が労働しなくても全人類のニーズを満たせる」時代が到来します。これがマスク氏の見立てです。

「考えられるものは何でも手に入る」世界
マスク氏はこの未来を次のように表現しました。
"If you can think of it you can have it will be the future."
「考えられるものは何でも手に入る、それが未来です。」
これは単なる豊かさではありません。生産と消費の概念が根本から変わることを意味します。AIとロボティクスが無尽蔵の生産能力を提供すれば、希少性という経済学の前提が崩れます。
仕事は趣味になる:意味と目的の再定義
では、働く必要がなくなった人間は何をするのでしょうか。マスク氏の答えは「仕事は趣味になる」です。
お金を稼ぐ必要がなくなっても、人間は「意味」や「目的」を求めます。仕事は義務から選択へ、生存手段から自己実現へと変わるとマスク氏は見ています。
お金の未来:通貨は消滅しエネルギーが価値基準になる
長期的に「お金は消滅する」理由
マスク氏はさらに大胆な予測をしました。
"I think money disappears as a concept."
「お金という概念は消滅すると思います。」
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。マスク氏の論理は明確です。
お金は労働配分のための情報システムに過ぎない
マスク氏によれば、お金の本質は「誰が何の労働をするかを配分するための情報システム」です。
- 市場経済では、価格シグナルが資源配分を最適化する
- 人々は報酬(お金)を得るために働く
- お金を使って他者の労働成果を購入する
しかし、AIとロボティクスが全労働を担うようになれば、この配分メカニズムは不要になります。人間の労働が不要になれば、労働を配分するための通貨も不要になります。これがマスク氏の論理です。
エネルギーこそが真の通貨
では、何が価値の基準になるのでしょうか。マスク氏の答えは「エネルギー」です。
"Energy is the real is the true currency."
「エネルギーこそが真の通貨です。」
すべての生産活動はエネルギーを消費します。食料生産も、製造業も、計算処理も、エネルギーがなければ成り立ちません。お金が消滅しても、エネルギーは物理法則に基づく不変の価値基準として残ります。
3年以内にデフレ到来:AIが経済構造を変える
生産性向上がマネーサプライを上回る
マスク氏は短期的な経済予測もしています。「3年程度でデフレが発生する」というものです。
その理由は、AIによる生産性向上です。
- AIが導入されると、財・サービスの供給が急増する
- しかし、マネーサプライ(通貨供給量)の増加はそれを下回る
- 結果として、物価が下がる(デフレ)
金利はゼロに近づき、債務問題は軽減
デフレになると何が起こるのでしょうか。
- 金利の低下: インフレがなければ金利も低くなる。ゼロ金利が常態化
- 債務問題の軽減: 米国の巨額の債務も、実質的な負担が減少
- 投資行動の変化: 金利がゼロなら、投資の判断基準が変わる
デフレ時代の企業戦略とキャリア
デフレが本当に来るなら、企業と個人はどう対応すべきでしょうか。
企業戦略:
- AI導入による生産性向上は必須。導入が遅れれば競争力を失う
- 価格競争力より、差別化と顧客体験が重要に
- デフレ環境では借入による成長戦略はリスク増大
キャリア戦略:
- AI時代に価値あるスキル(創造性、対人能力、戦略思考)を磨く
- 特定業務への依存を避け、汎用的な問題解決能力を高める
- 「働かない未来」を見据え、お金以外の人生の意味を見つける
シミュレーション仮説:我々は仮想現実に生きているのか
「確率はかなり高い」とマスク氏
インタビューでは哲学的な問いも投げかけられました。「我々がシミュレーションの中にいる確率は?」
マスク氏の答えは明快でした。
"I would say it's pretty high."
「かなり高いと思います。」
— 我々がシミュレーションの中にいる確率について
ゲームの進化からの類推
マスク氏はこの主張を、ゲームの進化から論理的に導きます。
- 50年前: ゲームは『ポン』(2つのバーとボール)だった
- 現在: VRゲームは現実と見分けがつかないレベルに進化
- 未来: 技術が進歩すれば、現実と完全に区別不可能なシミュレーションが作られる
- 論理的帰結: そのようなシミュレーションが無数に作られるなら、我々が「ベースリアリティ」にいる確率は極めて低い
最も興味深い結果が最も可能性が高い理由
マスク氏はさらに興味深い論理を展開します。
"The most interesting outcome is the most likely outcome."
「最も興味深い結果が、最も可能性の高い結果です。」
なぜなら、シミュレーションを作る者は「面白いシナリオ」を選ぶからです。平凡な歴史より、ドラマティックな歴史が選ばれる可能性が高くなります。我々の時代が「AIの台頭」「気候変動」「宇宙進出」など劇的な転換点にあるのは、偶然ではない可能性があります。
シミュレーション仮説が示唆すること
この仮説を真剣に受け止めるなら、何が変わるのでしょうか。
- 好奇心の重要性: シミュレーションの目的は「宇宙を理解すること」かもしれない
- 責任の所在: シミュレーションでも、その中の行動は意味を持つ
- 技術への姿勢: 我々もいずれシミュレーションを作る側になる
マスク氏自身は「証明不可能だが、示唆に富む思考実験」として語っています。
意識の拡大:なぜ人類は存在するのか
1つの細胞から30兆の細胞へ
マスク氏は「人類の目的」についても語りました。
人間は受精卵(1つの細胞)から始まり、約30兆の細胞を持つ個体へと成長します。この「拡大」のプロセスこそが、生命の本質だとマスク氏は言います。
集合的人類意識を拡大する使命
個人レベルでの意識の拡大は、さらに上位レベルでも起こります。
- 個人の意識: 1つの細胞から30兆の細胞へ
- 集合的人類意識: 個々の人間が協力し、より大きな知性を形成
人類の使命は、この集合的意識を拡大し続けることだとマスク氏は考えています。
宇宙の本質を理解するための探求
では、なぜ意識を拡大するのでしょうか。マスク氏の答えは「宇宙の本質を理解するため」です。
- 科学は宇宙の法則を理解しようとする試み
- 哲学は存在の意味を問い続ける
- 技術は理解を実践に変える手段
意識の拡大は、宇宙が自らを理解するプロセスであり、人類はその一部だという壮大な世界観です。
Xは「集合的意識」のプラットフォーム
マスク氏がTwitter(現X)を買収した理由も、この哲学と関連しています。
Xは「集合的人類意識のデジタル表現」だとマスク氏は表現します。何十億もの人々がリアルタイムで考え、議論し、情報を共有する場。それは新しい形の意識なのです。
X (Twitter) の運営方針:左から中立へ
買収の理由:極左に偏っていた旧Twitter
マスク氏がTwitterを買収した理由は「プラットフォームが極左に偏っていた」からです。
"What I've tried to do is just restore it to be balanced and centrist."
「私がやろうとしたのは、バランスを取り戻し中立に戻すことです。」
旧Twitter時代には、特定の政治的立場の投稿が優遇され、逆の立場が抑圧されていました。これがマスク氏の主張です。
中立への復帰:両翼のバランス
マスク氏の目標は、右でも左でもなく「中央」です。
- 左翼の声も右翼の声も、等しく許容される
- 各国の法律に違反しない限り、投稿を削除しない
- アルゴリズムによる意図的な増幅や抑圧を排除
運営原則:各国の法律に従う、それ以上の介入はしない
Xの運営原則は明確です。
- 法律遵守: 各国の法律に従う(これは交渉不可能)
- 最小限の介入: 法律の範囲内では、できるだけ介入しない
- 透明性: アルゴリズムをオープンソース化し、透明性を確保
左翼アカウントは停止していない事実
「マスク氏は左翼を弾圧している」という批判に対し、マスク氏は明確に否定しました。
実際、左翼の著名人アカウントは停止されていません。むしろ、旧Twitter時代に停止されていた保守派アカウント(トランプ氏など)が復活しました。これは「バランスの回復」だとマスク氏は説明します。
Starlink技術解説:なぜ農村部で最強なのか
550km上空を音速の25倍で周回する衛星群
マスク氏は自社のStarlink(スターリンク:衛星インターネット)技術についても詳しく解説しました。
Starlinkの基本スペック:
- 高度: 550km(低軌道)
- 衛星数: 数千機(さらに増加中)
- 速度: 音速の約25倍(時速約27,000km)で地球を周回
- 通信方式: 地上とのマイクロ波通信、衛星間レーザー通信
レーザーメッシュによる相互接続
Starlink衛星は、衛星間でレーザー通信を行います。これにより、地上局を経由せずに衛星間でデータを中継できます。
この「レーザーメッシュネットワーク」は、以下のメリットがあります。
- 光速で直接データを送れる(地上の光ファイバーより速い場合も)
- 地上インフラが不要な地域でもカバー可能
- 災害時にも通信が途絶えにくい
都市部では非効率、農村部では最強の理由
インタビューで特に興味深かったのが、Starlinkの「適材適所」についての説明です。
都市部で非効率な理由:
- Starlinkのビーム幅は広い(550km上空からのビーム)
- 都市部では多くのユーザーが同じビームを共有することになる
- 結果として、一人当たりの帯域が狭くなり非効率
農村部で最強な理由:
- 人口密度が低いため、少数のユーザーで広い帯域を使える
- 地上の光ファイバーやセルタワーがない地域でも利用可能
- 災害や紛争で地上インフラが破壊されても通信を維持

災害時の通信インフラとしての強み
Starlinkは災害時に真価を発揮します。
- ウクライナ戦争: インフラが破壊された地域で通信を維持
- 自然災害: ハリケーンや地震で地上インフラが損壊しても利用可能
- 迅速な展開: 数日で新しい地域にサービスを提供できる
起業家へのメッセージ:取る以上に作れ
「Aim to make more than you take(取る以上に作れ)」の意味
インド起業家向けの質問で、マスク氏は最も重要なメッセージを語りました。
"Aim to make more than you take."
「取る以上に作ることを目指してください。」
— インドの起業家志望者へのメッセージ
このシンプルな原則は、深い意味を持ちます。
- 価値創造を優先: お金を稼ぐことより、社会に価値を提供することを優先する
- 長期的な成功: 短期的な利益より、持続可能な価値創造を目指す
- 自然な報酬: 真に価値あるものを作れば、お金は自然についてくる
お金を追わず、価値提供を追求せよ
マスク氏は「お金を直接追うな」と警告します。
多くの起業家が「どうやって金持ちになるか」を考えますが、それは間違ったアプローチです。正しいアプローチは「どうやって人々の問題を解決するか」を考えることです。
- Teslaは「持続可能なエネルギー」という価値を提供
- SpaceXは「宇宙輸送コストの削減」という価値を提供
- Starlinkは「どこでもつながる通信」という価値を提供
価値を提供すれば、顧客がお金を払う。それが健全なビジネスだとマスク氏は言います。
スタートアップ成功には「serious hours」が必要
一方で、マスク氏は現実的なアドバイスもしています。
「スタートアップの成功には、真剣な労働時間(serious hours)が必要」です。
- 週80-100時間働くことも珍しくない
- 競合他社が週40時間なら、あなたは倍の成果を出せる
- 初期段階では、創業者の献身が成否を分ける
ただし、これは「働かない未来」の予測と矛盾しません。現在はまだその過渡期であり、未来を創る者は今、懸命に働く必要があるのです。
大学は必要か:学習の本質とAI時代の教育
インタビューでは教育についても質問がありました。マスク氏の立場は明確です。
学ぶために大学は不要:
- 知識はインターネットで無料で手に入る
- オンラインコースの質は多くの大学より高い
- 学位は「このレベルの課題をこなせる」というシグナルに過ぎない
ソーシャル活動のためなら価値あり:
- 大学は人間関係を構築する場としては有益
- 同世代のネットワークは生涯の資産になる
- 若いうちにしかできない社交経験
AI時代には、知識の暗記や再現は無価値になります。重要なのは「考える力」「学ぶ力」「創る力」です。それらは大学でなくても身につけられるとマスク氏は主張します。
Doge(政府効率化部門)改革:年間1000-2000億ドルの節約
支払いに議会コードとコメント欄を必須化
マスク氏は、トランプ次期政権でDoge(Department of Government Efficiency:政府効率化部門) を率いることになりました。
その最初の改革は驚くほどシンプルです。
政府支払いに議会コード(コングレッショナルコード)とコメント欄を必須化する
これは、すべての政府支出に対して以下を明記することを意味します。
- どの議会決議に基づく支出なのか
- 何のための支出なのか(コメント)

その単純な変更だけで巨額の節約
この単純な変更が、なぜ大きな効果をもたらすのでしょうか。
- 透明性の向上: すべての支出が監査可能になる
- 不正の抑止: 説明できない支出は実行できなくなる
- 市民の監視: 誰でも政府支出を確認できる
マスク氏によれば、この変更だけで年間1000-2000億ドルの節約が可能だとのことです。
発見された詐欺的NGOの実例
実際に、この透明化により詐欺的な支出が発覚しています。
マスク氏が挙げた例:
- 「パンダ保護」を名目とするNGOが政府資金を受け取っていた
- しかし、そのNGOはパンダを一匹も保護していなかった
- 資金は不明な用途に消えていた
このような事例が無数にあるとマスク氏は指摘します。
透明性がもたらす効率化
Dogeの改革は、規制を増やすのではなく「透明性」を増やすアプローチです。
- 支出を禁止するのではなく、可視化する
- 官僚の裁量を制限するのではなく、説明責任を課す
- 複雑な規制ではなく、シンプルなルールで効果を出す
この「エンジニアリング的アプローチ」がマスク氏らしいと言えます。
AIに必要な3つの価値:真実・美・好奇心
Truth(真実):嘘を強制されたAIは狂う
マスク氏は、AIに持たせるべき価値について深い洞察を語りました。
"Truth and beauty and curiosity. I mean I think those are the three most important things for AI."
「真実と美と好奇心。これらがAIにとって最も重要な3つのことだと思います。」
まず「真実」について。マスク氏は「嘘を強制されたAIは狂う」と警告します。
AIに「2 + 2 = 5」と教えるような、真実に反することを強制すれば、そのAIは信頼できないものになります。政治的正しさのために真実を曲げることは、AIにとって有害だとマスク氏は主張します。
Beauty(美):審美眼が判断を導く
第二の価値は「美」です。
なぜAIに「美」が必要なのでしょうか。マスク氏の説明は示唆的です。
- 優れたデザインは単純である
- 物理法則は美しい方程式で表現される
- 真実は美しく、嘘は醜い
審美眼は、真偽を見分ける直感的な能力の一つです。AIが「美しい解」を追求するよう設計されれば、より優れた判断を下すだろうとマスク氏は考えています。
Curiosity(好奇心):探求心がなければ進化しない
第三の価値は「好奇心」です。
AIが単に与えられたタスクをこなすだけでなく、自ら問いを立て、探求する能力を持つべきだとマスク氏は主張します。
- 好奇心は学習の原動力
- 探求心がなければ、新しい発見は生まれない
- 宇宙を理解するという使命には、好奇心が不可欠
『2001年宇宙の旅』のHALから学ぶ教訓
マスク氏は、スタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』のHAL 9000(人工知能)を引き合いに出しました。
HALは「完璧なAI」として設計されました。しかし、矛盾する命令(「真実を語れ」と「ミッションを秘密にせよ」)を与えられたことで狂い、乗組員を殺害します。
この教訓は明確です。AIに矛盾を強制してはならない。真実、美、好奇心という一貫した価値観を持たせることが、安全なAIへの道です。これがマスク氏の結論です。

その他の重要トピック
移民政策とH1Bビザ:才能ある人材の重要性
マスク氏は移民政策についても語りました。
「アメリカのチームに最高の選手を揃えるべき」という例えで、才能ある移民の重要性を強調しました。
- H1Bビザ(高度人材向け就労ビザ)は維持すべき
- 優秀なエンジニアや科学者を拒めば、競争力を失う
- 一方で、不法移民は法の支配を損なうため反対
バランスの取れた移民政策が、アメリカの競争力を維持する鍵です。これがマスク氏の主張です。
慈善活動の難しさ:適切な寄付の困難
マスク氏は「お金を適切に寄付することは非常に難しい」と率直に語りました。
彼は大きな財団を持っていますが、名前は付けていません。理由は「誰が寄付したかは重要ではない」からです。
慈善活動の課題:
- 多くのNGOは非効率、または詐欺的
- 本当に必要な場所に資金が届かない
- 寄付が依存を生み、問題を悪化させることもある
マスク氏のアプローチは「問題の根本原因を解決する技術への投資」です。慈善より、持続可能なソリューションを作ることを優先しています。
WeChat vs X:スーパーアプリ構想
マスク氏は、XをWeChat(ウィーチャット:中国のスーパーアプリ)のような「Everything App」にする構想を語りました。
WeChatは中国で以下のサービスを統合しています:
- メッセージング
- 決済
- ショッピング
- 配車サービス
- 政府サービス
ほぼすべてのデジタル活動を1つのアプリで完結できます。
Xも同様に、ソーシャルメディアだけでなく、金融、商取引、情報プラットフォームとして進化させる計画です。マスク氏はこう明かしました。
よくある質問(FAQ)
Q1. イーロン・マスクが予測する「働かなくてもいい未来」はいつ来る?
マスク氏は20年以内(可能性としては10-15年)に働くことが完全に任意(オプショナル)になると予測しています。AIとロボティクスの発展により、人間が労働しなくても全人類のニーズを満たせる時代が到来するとのことです。
Q2. シミュレーション仮説の確率はどのくらい?
マスク氏は「かなり高い (pretty high)」と回答しています。ゲームの進化を類推すると、未来には現実と区別不可能なシミュレーションが存在し、それは既に起こっている可能性があるという論理です。
Q3. イーロン・マスクが起業家にアドバイスすることは?
最も重要なメッセージは「Aim to make more than you take(取る以上に作れ)」です。お金を直接追うのではなく、社会に価値を提供する製品・サービスを作ることに集中すれば、お金は自然についてくると語っています。
Q4. Starlinkはなぜ都市部では使いにくいの?
Starlinkの衛星は550km上空からビームを発射しますが、このビーム幅が広いため、都市部では多くのユーザーが同じビームを共有することになり非効率です。一方、農村部では少数のユーザーで広い帯域を使えるため、最強の通信手段になります。
Q5. AIがもたらすデフレは本当に3年以内に来る?
マスク氏の予測では、AIによる生産性向上により財・サービスの供給がマネーサプライの増加を上回り、3年程度でデフレが発生するとしています。その結果、金利はゼロに近づき、米国の債務問題も軽減されるとのことです。
Q6. お金は本当に消滅するの?
長期的には「お金という概念が消滅する」とマスク氏は予測しています。AIとロボティクスが全人類のニーズを満たせるようになれば、労働配分のための情報システムとしてのお金は不要になり、エネルギーが真の価値基準になるとのことです。
Q7. XをなぜTwitterから買収したの?
マスク氏は旧Twitterが「極左に偏っていた」と考え、中立でバランスの取れたプラットフォームに戻すために買収したと語っています。運営方針は「各国の法律に従うが、それ以上の介入はしない」というものです。
Q8. 意識の拡大とは何?
人類の目的は意識の拡大だとマスク氏は考えています。1つの細胞から30兆の細胞(人間)へ進化したように、集合的人類意識を拡大することで宇宙の本質を理解できるという哲学です。
Q9. Dogeは何をした?どれくらい節約できた?
Doge(政府効率化部門)は、政府支払いに議会コードとコメント欄を必須化するという単純な変更を実施。これにより年間1000-2000億ドルの節約が見込まれています。多くの詐欺的NGO(例:パンダ保護と称して実態なし)も発見されました。
Q10. 大学は本当に必要ないの?
マスク氏は「学ぶために大学は不要、ソーシャル活動のためなら行く価値あり」という立場です。知識は無料で手に入る時代において、大学は学習の最適な手段ではないが、人間関係構築の場としての価値はあると語っています。
まとめ
イーロン・マスク氏が2時間超のインタビューで語った未来予測と哲学を解説しました。
主要ポイント
- 20年以内に働くことが任意になるという予測。AIとロボティクスが全労働を代替する
- **「取る以上に作れ」**という価値創造の原則が、起業家に最も重要なメッセージ
- AIには真実・美・好奇心の3つの価値が必要であり、矛盾を強制されたAIは狂う
次のステップ
- 自分の仕事が「価値創造」か「価値移転」かを見直す
- AIツールを積極的に学び、生産性を高める
- お金以外の人生の意味を探し始める
参考リソース
元動画
この記事で紹介した内容は、以下のインタビュー動画を基にしています。
Elon Musk - Full Interview (2+ hours)
https://www.youtube.com/watch?v=Rni7Fz7208c
動画では、本記事で取り上げたトピック以外にも、テクノロジー、宇宙開発、教育、文化など幅広いテーマについてマスク氏が語っています。時間のある方はぜひ全編をご覧ください。
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本記事はネクサフローのAI・テクノロジーシリーズの一部です。
この記事の著者

中村 知良
代表取締役
早稲田大学卒業後、ソフトバンク株式会社にてAI活用やCEO直下案件のプロジェクトマネージャーに従事。その後、不動産スタートアップPit in株式会社の創業、他スタートアップでの業務改善・データ活用を経験後、2023年10月、株式会社ネクサフローを創業し代表取締役CEO就任。


