
価格調査手法の種類と選び方|PSM・Gabor・コンジョイント比較
AIサマリー
適切な価格を見つけるための3大調査手法を徹底比較。PSM分析・Gaborグレンジャー法・コンジョイント分析の特徴と選び方を解説します。
価格を決めるとき、感覚ではなくデータで判断したい。しかし、どの調査手法を選べばいいのか分からない。そんな悩みを解決するのがこの記事です。
本記事の表記について
- 下線付きの用語にカーソルを合わせると解説が表示されます
この記事でわかること
- 3大価格調査手法の比較: PSM・Gabor・コンジョイントの違い
- 手法選択の判断基準: 目的別・リソース別の選び方
- 実施時の注意点: 各手法の長所・短所と補完関係
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| トピック | 価格調査手法 |
| カテゴリ | 価格戦略・プライシング |
| 難易度 | 初級 |
| 対象 | 事業企画・PM・マーケター・営業企画 |
| シリーズ | 全8回の第3回 |
3大価格調査手法の概要
価格調査には主に3つの手法があります。それぞれ測定対象と得られる情報が異なります。
3大価格調査手法の比較Van Westendorp法(PSM分析)
測定対象: 価格の許容範囲
特徴:
- 4つの質問で価格感度を測定
- 最適価格帯(OPP、IPP)を導出
- 実施が簡単で低コスト
得られる情報:
- 高すぎて買えない価格
- 安すぎて不安な価格
- 許容可能な価格帯
詳細: PSM分析(Van Westendorp法)とは?4つの質問で最適価格を導く
Gaborグレンジャー法
測定対象: 需要の価格弾力性
特徴:
- 順応的に価格を提示
- 購買意向を段階的に測定
- 需要曲線と収益曲線を作成
得られる情報:
- 各価格での購買意向率
- 収益最大化価格
- 価格変更のシミュレーション
詳細: Gabor-Granger法とは?収益最大化価格を見つける6ステップ調査手法
コンジョイント分析
測定対象: 属性ごとの支払意思額
特徴:
- 複数属性を同時評価
- 機能と価格のトレードオフを測定
- 市場シェアシミュレーション
得られる情報:
- 各機能の相対的重要度
- 機能ごとの支払意思額
- 競合製品との優劣
詳細: コンジョイント分析とは:機能と価格のトレードオフを数値化する手法
手法選択の判断基準
どの手法を選ぶべきかは、目的とリソースによって決まります。
手法選択フロー目的別の選び方
| 知りたいこと | 推奨手法 | 理由 |
|---|---|---|
| 新製品の適正価格帯 | PSM分析 | 簡単で価格範囲が明確に分かる |
| 価格変更の影響予測 | Gabor-Granger法 | 需要曲線で収益変化をシミュレート |
| 機能の価値を個別に測定 | コンジョイント | 属性ごとのWTPを算出 |
| 既存製品の値上げ判断 | Gabor-Granger法 | 現価格からの移行を予測 |
| 複数プランの価格体系設計 | コンジョイント | 機能の組み合わせと価格を最適化 |
| 競合との価格ポジショニング確認 | PSM分析 | 市場全体の価格感覚を把握 |
リソース別の選び方
| リソース | 推奨手法 | 理由 |
|---|---|---|
| 時間が少ない | PSM分析 | 質問4つ、集計も簡単 |
| 予算が少ない | PSM分析 | 最小限のサンプル数で実施可能 |
| 統計知識なし | PSM分析 | Excelで分析可能 |
| 中規模 | Gabor-Granger法 | 専門ツール不要、分析は中程度 |
| 十分なリソース | コンジョイント | ツール・専門知識が必要だが高精度 |
| 大規模調査 | 複数手法の併用 | PSM + Gaborで相互検証 |
手法の複雑度階層各手法の長所・短所比較
PSM分析
長所:
- 実施が簡単
- 少サンプル(100-200名)で実施可能
- 質問が直感的で回答しやすい
- 価格範囲が明確に分かる
短所:
- 需要量を予測できない
- 実際の購買行動と乖離しやすい
- 競合情報が反映されない
- 新カテゴリには不向き
適用場面:
- 新製品の初期価格設定
- 市場全体の価格感覚把握
- 簡易的な価格検証
Gaborグレンジャー法
長所:
- 需要曲線を作成できる
- 収益最大化価格が明確
- 価格変更の影響を予測可能
- PSM分析より実購買に近い
短所:
- 順応的質問で回答に偏りが生じる可能性
- 複数属性の影響を測定できない
- 競合との比較が含まれない
- サンプル数が多く必要(300名以上推奨)
適用場面:
- 既存製品の値上げ・値下げ判断
- 収益最適化
- 価格弾力性の測定
コンジョイント分析
長所:
- 機能ごとのWTPを測定可能
- 競合を含めた市場シミュレーション
- 複数属性を同時評価
- 最も実購買に近い結果
短所:
- 実施・分析に専門知識が必要
- 調査設計が複雑
- サンプル数が多く必要(500名以上推奨)
- 回答者の負荷が大きい
適用場面:
- SaaSの機能別価格設計
- 複数プラン体系の最適化
- 新機能の価格インパクト評価
手法の併用パターン
実務では、複数手法を組み合わせることで精度を高めます。
パターン1: PSM → Gabor
流れ:
- PSM分析で大まかな価格帯を把握
- その範囲内でGabor-Granger法を実施
- 最適価格を精緻化
メリット: 効率的に価格範囲を絞り込める
事例: 新製品の価格設定で、まずPSMで¥5,000-¥8,000の範囲を特定し、その後Gaborで¥6,500が最適と判明。
パターン2: コンジョイント + Gabor
流れ:
- コンジョイントで機能の価値を測定
- Gaborで総合的な需要曲線を作成
- 機能構成と価格を同時最適化
メリット: 機能と価格の両面から最適解を導出
事例: SaaS製品で、コンジョイントで「AI機能」の追加価値が¥3,000と判明。Gaborで基本プラン¥9,800 + AI ¥2,980が最適と判定。
パターン3: 全手法併用
流れ:
- PSMで市場全体の価格感覚を把握
- コンジョイントで機能価値を測定
- Gaborで最終的な需要予測
メリット: 多角的検証で確信度が高まる
使用場面: 大規模投資を伴う新製品・サービス
実施時の共通注意点
調査設計
サンプル数:
- PSM分析: 100-200名
- Gabor-Granger法: 300名以上
- コンジョイント分析: 500名以上
セグメント化: 顧客属性(企業規模、業種、利用目的)ごとに分析することで、セグメント別価格設定が可能になります。
バイアス対策
アンカリング効果: 最初に提示する価格が後の回答に影響します。
- Gaborでは初期価格をランダム化
- PSMでは質問順序を工夫
詳細: 直接質問 vs 間接質問|価格調査で本音を引き出す4つの手法
回答品質の確保
製品理解: 回答者が製品を正しく理解していないと、価格感覚も不正確になります。
- 詳細な製品説明を提示
- 必要に応じて動画・画像を使用
- 理解度確認の質問を含める
よくある質問(FAQ)
Q1. どの手法が最も正確ですか?
目的によります。
- 価格帯把握: PSM分析
- 需要予測: Gabor-Granger法
- 属性価値測定: コンジョイント分析
「正確さ」の定義が異なるため、目的に応じて選択してください。
Q2. 予算が限られている場合は?
PSM分析を推奨します。
- サンプル数100-200名で実施可能
- Excelで分析できる
- 専門ツール不要
まずPSMで価格範囲を把握し、予算が追加で確保できればGaborで精緻化する流れが効率的です。
Q3. B2B製品でも使えますか?
すべての手法で使用可能です。
注意点:
- 意思決定者を対象にする
- 購買プロセスを考慮する
- EVC分析と併用すると効果的
Q4. 既存製品の値上げに最適な手法は?
Gabor-Granger法を推奨します。
理由:
- 現価格を起点に段階的に提示できる
- 需要減少をシミュレート可能
- 収益最大化価格が明確
値上げ後の需要変化を予測し、収益への影響を事前評価できます。
Q5. 無料サービスの有料化にはどの手法が適していますか?
コンジョイント分析を推奨します。
理由:
- 無料時代の経験から、どの機能に価値を感じているか測定
- 機能の優先順位が明確になる
- 有料化後の機能構成を最適化できる
無料プランを残す場合、どの機能を有料化すべきかの判断材料になります。
Q6. サンプル数が確保できない場合は?
PSM分析を50-100名で実施するのが現実的です。
代替案:
- 定性インタビュー(10-20名)で価格感覚を把握
- 競合価格のベンチマーク
- EVC分析で理論価格を算出
量的調査が難しい場合、質的調査と理論的アプローチを組み合わせます。
Q7. 手法によって結果が異なる場合はどうすべきですか?
それぞれの結果が示す意味を理解することが重要です。
例:
- PSMで¥8,000-¥12,000が許容範囲
- Gaborで¥9,500が収益最大化価格
- コンジョイントで主要機能の価値が¥7,000
これらは矛盾ではなく、異なる視点からの情報です。
判断基準:
- 市場浸透を優先 → PSMの下限寄り
- 収益最大化を優先 → Gaborの最適価格
- 機能価値の説明力 → コンジョイントを重視
Q8. 調査結果を社内でどう説明すればいいですか?
視覚化が効果的です。
PSM分析:
- 4つの累積曲線のグラフ
- 最適価格帯をハイライト
Gabor-Granger法:
- 需要曲線と収益曲線のグラフ
- 収益最大化ポイントを明示
コンジョイント分析:
- 属性ごとの重要度の棒グラフ
- 市場シェアシミュレーション
経営層には「なぜこの価格か」を数値で説明できることが重要です。
まとめ
主要ポイント
- 目的で選ぶ: 価格帯把握ならPSM、需要予測ならGabor、属性価値ならコンジョイント
- リソースで選ぶ: 予算・時間が限られていればPSM、十分あればコンジョイント
- 併用で精度向上: 複数手法を組み合わせることで、より確信度の高い価格設定が可能
次のステップ
- 各手法の詳細記事で実施方法を学ぶ
- 自社製品に最適な手法を選定する
- 小規模テストで手法の有効性を確認する
シリーズ記事
バリューベースプライシングシリーズ
- 第1回:バリューベースプライシングとは?顧客価値で価格を決める3ステップ
- 第2回:WTP(支払意思額)とは?測定方法と価格設定への活用法
- 第3回:価格調査手法の種類と選び方(本記事)
- 第4回:EVC分析とは?顧客価値から価格設定する実践ガイド
関連記事
参考リソース
- Van Westendorp, P. H. (1976). "NSS-Price Sensitivity Meter (PSM) – A new approach to study consumer perception of price". Proceedings of the ESOMAR Congress.
- Gabor, A., & Granger, C. W. J. (1966). "Price as an indicator of quality". Economica, 33(129), 43-70.
- Green, P. E., & Srinivasan, V. (1978). "Conjoint analysis in consumer research: Issues and outlook". Journal of Consumer Research, 5(2), 103-123.
本記事はネクサフローのプライシング研究シリーズの一部です。


