リーダー・フィラー・キラーとは?プロダクトの価格パッケージ戦略を徹底解説
AIサマリー
商品やサービスの機能を「必須機能」「補完機能」「不要機能」に分類し、最適な価格パッケージを設計するLeader-Filler-Killerフレームワークを解説します。

「どの機能をどのプランに入れるべきか?」
SaaSや定額サービスのプライシングにおいて、これは最も頭を悩ませる問題の一つです。機能を詰め込みすぎると価格が上がり、顧客が離れていく。かといって機能を絞りすぎると、競合に負けてしまう。
この問題に対するシンプルかつ強力な解決策が、リーダー・フィラー・キラー(Leader-Filler-Killer)フレームワークです。
グローバルプライシングコンサルティング会社Simon-Kucher(サイモン・クチャー)が提唱するこのフレームワークは、マクドナルドのバリューセットにも例えられる、直感的で実践的な考え方です。
本記事の表記について
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この記事でわかること
- LFKの基本: 機能を3種類に分類する考え方と、それぞれの定義
- 実践方法: 自社のプロダクトにLFKを適用するステップ
- パッケージ設計: Good/Better/Bestプランへの機能配置の最適解
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| フレームワーク名 | Leader-Filler-Killer(LFK) |
| 提唱元 | Simon-Kucher & Partners |
| 適用分野 | SaaS、サブスクリプション、プロダクトバンドル |
| 難易度 | 初級〜中級 |
LFKフレームワークの全体像LFKフレームワークとは?
マクドナルドで理解するLFK
LFKフレームワークを最も簡単に理解する方法は、マクドナルドのバリューセットを思い浮かべることです。
あなたがマクドナルドに行くとき、何を目当てに行きますか?
- ビッグマック(Leader): これが目当てで来店する。なければ買わない
- ポテト(Filler): ビッグマックと一緒なら嬉しい。でもポテト目当てでは来ない
- アイスクリーム(Killer): バリューセットに入っていたら、むしろ邪魔。単品で欲しい人だけ買えばいい
これがLFKの本質です。プロダクトの機能を、顧客にとっての価値に基づいて3つに分類します。
3つの分類
Leader(リーダー):購入の決め手
Leaderは、顧客が「これがあるから買う」と思う機能です。
- 特徴: 高い価値があり、全員が欲しがる
- 役割: 購入を決定づける
- 例: CRMにおける顧客管理機能、会計ソフトにおける帳簿作成機能
Leaderがなければ、顧客はGood(入門プラン)からBetter(標準プラン)にアップグレードしない
Filler(フィラー):補完する価値
Fillerは、「あれば嬉しい」が「それだけでは買わない」機能です。
- 特徴: 中程度の価値。多くの人にとって「あると便利」
- 役割: バンドルの魅力を高める。単品では売れにくい
- 例: レポート機能、カスタマイズオプション、追加のストレージ
顧客は単品でFillerを買わない。でもバンドルに入っていれば喜ぶ
Killer(キラー):バンドルの価値を下げる
Killerは、バンドルに入っていると顧客が「余計なものにお金を払いたくない」と感じる機能です。
- 特徴: 特定の顧客には価値があるが、大多数には不要
- 役割: バンドルに含めると全体の価値を下げる
- 例: エンタープライズ向けのSSO、特定業界向けのコンプライアンス機能
Killerをバンドルに入れると、「使わない機能にお金を払っている」と感じさせてしまう
なぜセグメント別の分析が重要なのか
同じ機能でも、顧客によって分類が変わる
LFKフレームワークの最も重要なポイントは、顧客セグメントごとに分類が異なるということです。
| 機能 | SMB(中小企業) | エンタープライズ |
|---|---|---|
| シングルサインオン(SSO) | Killer(不要) | Leader(必須) |
| 基本レポート | Leader(必須) | Filler(あれば便利) |
| APIアクセス | Killer(不要) | Leader(必須) |
| モバイルアプリ | Leader(必須) | Filler(あれば便利) |
エンタープライズ顧客にとってSSOは「これがなければ導入できない」必須機能(Leader)です。しかし、5人規模のスタートアップにとっては「使わないのにお金を払いたくない」不要機能(Killer)になります。
セグメント別分析の実践
- ターゲットセグメントを定義する: SMB / ミッドマーケット / エンタープライズ、または業界別
- 各セグメントの意思決定者を特定する: 誰が購入を決定するか
- セグメントごとに機能の価値を調査する: インタビュー、アンケート、行動データ
- セグメント別のLFK分類表を作成する: 一覧化して可視化
LFKを適用する4ステップ
LFK分析からパッケージ設計への流れStep 1: 機能の洗い出し
まず、プロダクトの全機能をリストアップします。
- 既存機能だけでなく、開発予定の機能も含める
- 細かすぎず、粗すぎない粒度で(10〜30機能程度)
- 「機能」だけでなく「サービス」「サポート」も含める
Step 2: 顧客調査
各機能について、顧客セグメントごとに価値を調査します。
調査方法の例:
- コンジョイント分析: 機能の組み合わせに対する選好を定量化
- MaxDiff分析: 「最も重要」と「最も不要」を選ばせる
- 顧客インタビュー: 定性的な理由を深掘り
- 行動データ分析: 実際の機能利用率を確認
Step 3: LFK分類
調査結果をもとに、各機能をLeader / Filler / Killerに分類します。
分類の基準:
| 分類 | 基準 |
|---|---|
| Leader | 「これがないと買わない」と回答した顧客が50%以上 |
| Filler | 「あれば嬉しい」が多数。「なくても買う」が50%以上 |
| Killer | 「不要」「むしろ邪魔」と回答した顧客が30%以上 |
Step 4: パッケージ設計
分類結果をもとに、価格プランを設計します。
Good/Better/Bestパッケージへの適用
SaaS企業の約50%がGood/Better/Best(松竹梅)型のパッケージ構造を採用しています。LFKフレームワークは、この構造との相性が抜群です。
Good/Better/Bestパッケージの機能配置機能配置の原則
| プラン | 含める機能 | 目的 |
|---|---|---|
| Good | Leader 1つ + 基本Filler | エントリーポイント。試用・導入のハードルを下げる |
| Better | Leader 2つ以上 + 複数Filler | 主力プラン。多くの顧客がここに落ち着く |
| Best | 全Leader + 全Filler | アップセル先。エンタープライズ・ヘビーユーザー向け |
Leaderの配置ルール
重要: Leaderを複数持っている場合、それらをプラン間で分散させることがアップセルの鍵です。
✓ 正しい配置
Good: Leader A
Better: Leader A + Leader B
Best: Leader A + Leader B + Leader C
✗ 間違った配置
Good: Leader A + Leader B + Leader C ← 全部入れてしまう
Better: 同じ
Best: 同じ + Filler ← アップセルの理由がない
Killerの扱い方
Killerは原則としてバンドルに含めません。代わりに:
- アドオン(単品販売): 必要な顧客だけが追加購入
- 特定セグメント向けプラン: エンタープライズ専用プランに含める
- 廃止検討: 本当に必要か再評価
実践例:SaaSプロダクトのLFK分析
架空のプロジェクト管理SaaS
| 機能 | SMB | ミッドマーケット | エンタープライズ |
|---|---|---|---|
| タスク管理 | Leader | Leader | Leader |
| ガントチャート | Filler | Leader | Leader |
| タイムトラッキング | Filler | Filler | Filler |
| SSO | Killer | Filler | Leader |
| 監査ログ | Killer | Killer | Leader |
| API連携 | Killer | Leader | Leader |
| モバイルアプリ | Leader | Filler | Filler |
パッケージ設計案
Starterプラン(SMB向け)
- タスク管理(Leader)
- モバイルアプリ(Leader)
- タイムトラッキング(Filler)
Businessプラン(ミッドマーケット向け)
- 上記全て
- ガントチャート(Leader)
- API連携(Leader)
- SSO(Filler)
Enterpriseプラン
- 上記全て
- 監査ログ(Leader)
- 高度なセキュリティ設定
よくある質問(FAQ)
Q1. Leader機能が1つしかない場合はどうすればいいですか?
Leader機能が1つしかない場合は、Good/Better/Best構造ではなく、使用量ベースやユーザー数ベースの課金を検討してください。Leader機能を全プランに含め、使用量やユーザー数で差別化します。
Q2. 顧客調査のリソースがない場合、どうすればいいですか?
以下の代替手段があります:
- 営業チームへのヒアリング: 顧客との会話から得た知見を集約
- サポートチケット分析: よく要望される機能 = Leader候補
- 機能利用率データ: 使われていない機能 = Killer候補
- 解約理由分析: 「この機能がないから解約」= Leader
Q3. FillerとKillerの境界が曖昧です。どう判断すればいいですか?
判断基準: バンドルに含めたとき、顧客の反応がどうなるか
- Filler: 「あ、これも入ってるんだ。ラッキー」
- Killer: 「これにもお金を払ってるの?いらないんだけど」
迷った場合は、Killerとして扱い、アドオン販売にするのが安全です。バンドルに入れて価値を下げるリスクより、アドオンで取りこぼすリスクの方が小さいためです。
Q4. 競合が全機能を1つのプランで提供している場合は?
競合の戦略に関わらず、LFKに基づいたパッケージ設計には以下のメリットがあります:
- 価格の柔軟性: エントリー価格を低く設定できる
- アップセル機会: 顧客の成長に合わせて収益を拡大できる
- 顧客満足度: 「不要な機能に払わされている」感覚を減らせる
全機能一括提供は一見シンプルですが、顧客獲得コストが高くなり、アップセル機会を失います。
Q5. LFK分析の頻度はどれくらいが適切ですか?
- 大規模な見直し: 年1回
- 軽微な調整: 四半期ごと
- 新機能追加時: その都度分類を決定
市場環境や競合状況が変化すると、機能の分類も変わります。定期的な見直しが重要です。
まとめ
LFKフレームワーク実践の重要ポイント主要ポイント
- Leader: 購入の決め手。各プランに1つ以上配置し、アップセルの理由を作る
- Filler: 補完価値。バンドルの魅力を高め、単品販売を避ける
- Killer: 除外対象。バンドルに入れず、アドオンまたは特定プラン限定に
実践のためのチェックリスト
- プロダクトの全機能をリストアップしたか
- 顧客セグメントを定義したか
- セグメントごとにLFK分類を行ったか
- 各プランにLeader機能が含まれているか
- Killer機能をバンドルから除外したか
次のステップ
- 自社プロダクトの機能一覧を作成する
- 主要セグメント3つを定義する
- 営業・サポートチームにヒアリングし、仮分類を作成する
- 顧客調査で仮説を検証する
- パッケージ構造を設計・テストする
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参考リソース
- Simon-Kucher - Smart product bundling to boost price enforcement and cross-selling
- Leaders, Fillers, and Killers: Creating Bundles That Work - Kevin Cohn
- Create Winning SaaS Pricing Plans with the Leader-Filler-Killer Framework - Jurn.io
- Insights from 100 SaaS Companies: Why It's Time to Rethink Your Packaging Strategy - OpenView
本記事はネクサフローのプライシング解説シリーズの一部です。
この記事の著者

有本 雅俊
九州大学卒業後、スカイライトコンサルティング株式会社にて大手企業の新規事業立ち上げ・グローバル支援など、複数のプロジェクトを経験。その後プライシングスタジオに入社し、コンサルティング部門執行役員として大手企業からスタートアップまで、B2B・B2C合わせて数十サービスの価格決定を支援した実績を持つ。
