Netflix価格改定の歴史:10年で2倍になった月額料金
AIサマリー
Netflixの月額料金は2011年の$7.99から2024年の$17.99へ。Qwikster騒動の失敗と、値上げを成功させた戦略の変遷を年表で解説します。

2011年、Netflixは$7.99でストリーミング見放題を提供していました。
2024年、同じサービス(スタンダードプラン)は$17.99。12年で2倍以上に値上げしました。しかし、加入者は8倍以上に増え、3億人を突破しています。
本記事では、Netflixの価格改定の歴史を年表で振り返り、「値上げしても解約されない」戦略の本質を分析します。
この記事でわかること
- 価格推移: 2007年から現在までの料金変遷
- Qwikster騒動: 2011年の失敗から学ぶ教訓
- 成功の法則: 値上げを受け入れさせる戦略
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| トピック | Netflix価格改定の歴史と戦略分析 |
| カテゴリ | プライシング戦略、ケーススタディ |
| 難易度 | 初級〜中級 |
| 対象読者 | サブスク事業者、価格担当者、経営者 |
Netflix価格改定の年表
2007-2011年:ストリーミング黎明期
| 年月 | 出来事 | 価格(米国) |
|---|---|---|
| 2007年1月 | ストリーミングサービス開始 | DVD込み$8.99 |
| 2010年 | ストリーミング専用プラン検討 | $8.99 |
| 2011年7月 | ストリーミングとDVDを分離 | 各$7.99 |
背景: Netflixは元々DVDレンタル会社でした。ストリーミングはDVD会員への「おまけ」として2007年に開始。需要の高まりを受け、2011年にストリーミング単体プランを$7.99で提供開始しました。
2011年:Qwikster騒動(価格改定の大失敗)
何が起きたか
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2011年7月12日 | ストリーミングとDVDの分離を発表。両方利用する場合、$9.99→$15.98に実質60%値上げ |
| 2011年9月18日 | DVD事業を「Qwikster」として分社化を発表 |
| 2011年10月10日 | わずか3週間でQwikster撤回 |
結果
| 指標 | 影響 |
|---|---|
| 株価 | 発表後3ヶ月で77%下落 |
| 解約者数 | 80万人(1,200万人中) |
| CEO謝罪 | Reed Hastingsが公開謝罪 |
失敗の原因
- 一度に大幅な値上げ: 両方利用者は60%の負担増
- 分社化の混乱: 別々のサイト、別々の請求
- コミュニケーション不足: 顧客への事前説明なし
- 価値提案の欠如: 値上げと引き換えに何が得られるか不明
2014-2019年:段階的値上げの確立
Qwiksterの失敗から学び、Netflixは「小幅・段階的」な値上げ戦略に転換しました。
| 年月 | プラン | 旧価格 | 新価格 | 上昇率 |
|---|---|---|---|---|
| 2014年5月 | スタンダード | $7.99 | $8.99 | +12.5% |
| 2015年10月 | スタンダード | $8.99 | $9.99 | +11.1% |
| 2017年10月 | スタンダード | $9.99 | $10.99 | +10.0% |
| 2019年1月 | スタンダード | $10.99 | $12.99 | +18.2% |
同時に追加された価値
| 年 | 追加された価値 |
|---|---|
| 2014年 | HD画質対応、オリジナル作品拡充 |
| 2015年 | 4K対応開始 |
| 2017年 | オリジナル映画本格化 |
| 2019年 | 複数デバイス同時視聴の改善 |
2020-2024年:成熟期の価格戦略
| 年月 | プラン | 旧価格 | 新価格 | 上昇率 |
|---|---|---|---|---|
| 2020年10月 | スタンダード | $12.99 | $13.99 | +7.7% |
| 2022年1月 | スタンダード | $13.99 | $15.49 | +10.7% |
| 2022年11月 | 広告付き新設 | — | $6.99 | 新規 |
| 2023年 | スタンダード | $15.49 | $15.49 | 据え置き |
| 2024年10月 | スタンダード | $15.49 | $17.99 | +16.1% |
価格改定の累積効果
スタンダードプランの推移
| 年 | 価格 | 2011年比 |
|---|---|---|
| 2011年 | $7.99 | 100% |
| 2014年 | $8.99 | 112% |
| 2017年 | $10.99 | 138% |
| 2019年 | $12.99 | 163% |
| 2022年 | $15.49 | 194% |
| 2024年 | $17.99 | 225% |
12年間で+125%(2.25倍) の値上げを実現しました。
加入者数の推移
| 年 | 加入者数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2011年 | 約2,400万人 | — |
| 2015年 | 約7,500万人 | — |
| 2019年 | 約1億6,700万人 | — |
| 2022年 | 約2億3,100万人 | — |
| 2024年 | 3億160万人 | +15.9% |
出典: Statista
値上げしても加入者は増加。これがNetflixの価格戦略の成功を示しています。
広告付きプランの導入(2022年)
2022年11月、Netflixは初めて広告付きプランを導入しました。
導入の背景
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 成長鈍化 | 2022年Q1に初の加入者減少 |
| 競争激化 | Disney+、HBO Maxの台頭 |
| 価格敏感層 | 高価格帯で取り込めない層の存在 |
広告付きプランの成果
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 開始時価格 | $6.99/月 |
| 2025年5月時点の利用者 | 9,400万人 |
| 全加入者に占める割合 | 約31% |
ポイント: 広告付きプランは「解約の受け皿」として機能しています。高くて解約を検討するユーザーに、ダウングレード先を提供することで、完全離脱を防いでいます。
値上げを成功させた5つの戦略
1. 小幅・頻繁な値上げ
| 戦略 | 内容 |
|---|---|
| 悪い例 | 3年に1回、+30%の大幅値上げ |
| Netflixの方法 | 1-2年に1回、+10-15%の小幅値上げ |
理由: 小幅な値上げは「気づかれにくい」。大幅値上げは解約のトリガーになります。
2. 値上げ前に価値を追加
Netflixは必ず「値上げの正当化」となる価値を先に提供しています。
| 年 | 追加した価値 | その後の値上げ |
|---|---|---|
| 2013年 | House of Cards配信 | 2014年値上げ |
| 2016年 | Stranger Things配信 | 2017年値上げ |
| 2021年 | イカゲーム配信 | 2022年値上げ |
3. ティア構造で選択肢を提供
| プラン | 価格 | ターゲット |
|---|---|---|
| 広告付き | $7.99 | 価格重視 |
| スタンダード | $17.99 | バランス重視 |
| プレミアム | $24.99 | 品質重視 |
ユーザーは「自分に合ったプランを選べる」と感じ、値上げへの抵抗が減ります。
4. 解約より「ダウングレード」を促す
Netflixは解約フローで「より安いプランへの変更」を提案します。
| ユーザー行動 | Netflixの対応 |
|---|---|
| 「高すぎる」で解約検討 | 広告付きプランを提案 |
| 「使っていない」で解約検討 | 一時停止オプションを提案 |
5. コンテンツの独占性
Netflixオリジナル作品は他では見られません。
| 作品 | 視聴時間/インパクト |
|---|---|
| イカゲーム | 16.5億時間(シーズン1) |
| ストレンジャー・シングス | 14億時間以上 |
| ウェンズデー | 10億時間以上 |
「ここでしか見られない」コンテンツがあれば、値上げしても解約されにくくなります。
日本市場での価格推移
日本でもNetflixは段階的に値上げしています。
| 年月 | スタンダード価格 | 変化 |
|---|---|---|
| 2015年9月(開始時) | 950円 | — |
| 2018年8月 | 1,200円 | +26% |
| 2021年2月 | 1,490円 | +24% |
| 2023年10月 | 1,590円 | +7% |
注目点: 日本の価格は米国より安く設定されています。これは購買力平価と競合環境(Amazon Prime 600円)を考慮した結果です。
よくある質問(FAQ)
Q1. Qwiksterの失敗から何を学ぶべきか?
3つの教訓があります。
- 一度に大きく変えない: 顧客は急激な変化を嫌う
- 価値を先に提供: 値上げの前に「何が良くなるか」を示す
- コミュニケーションを丁寧に: 変更の理由と顧客へのメリットを説明
Q2. Netflixはなぜ値上げしても解約されないのか?
主な理由は3つです。
- 独占コンテンツ: Netflixオリジナルは他で見られない
- 習慣化: 毎日使うサービスは解約しにくい
- ダウングレード選択肢: 解約ではなく安いプランへの移行
Q3. 今後もNetflixは値上げを続けるか?
おそらく続けます。2025年以降、Netflixは加入者数の四半期報告を廃止し、収益重視の姿勢を明確にしました。これは「加入者数が減っても収益を上げる(=値上げ)」戦略への移行を示唆しています。
Q4. 競合(Disney+、Max)も同じ戦略を取るか?
すでに同様の動きがあります。Disney+は2025年10月に全プラン$3値上げを実施しました。ストリーミング業界全体で「価格競争から価値競争へ」のシフトが進んでいます。
まとめ
主要ポイント
- 12年で2.25倍: $7.99→$17.99への段階的値上げ
- Qwiksterの教訓: 一度に大きく変えない、価値を先に提供
- 成功の鍵: 独占コンテンツ、ティア構造、ダウングレード選択肢
次のステップ
- 自社サービスの価格改定履歴を整理する
- 値上げ前に追加できる「価値」をリストアップする
- 解約フローに「ダウングレード選択肢」を追加する
参考リソース
Netflix公式
分析記事
- 9meters - Netflix Pricing History
- Flixed - The Complete History of Netflix Price Hikes
- Android Authority - A 94% increase: A timeline of Netflix price hikes
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この記事の著者

猪良 幸太郎
東京理科大学卒業後、国内独立系コンサルティングファームに入社し、IT・業務コンサルタント兼マネージャーとして業務最適化やシステム導入プロジェクトを経験。その後プライシングスタジオに入社し、執行役員兼ビジネス本部長として顧客のプライシング変革支援をリードする傍ら、自社の新規事業立ち上げの推進にも従事。


