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Epic Games「無料配布」戦略:ユーザー獲得コストの計算式

Epic Games「無料配布」戦略:ユーザー獲得コストの計算式

23分で読める|2026/01/26|
プライシングEpic Gamesユーザー獲得フリーミアムケーススタディ

AIサマリー

Epic Games Storeは毎週ゲームを無料配布しています。累計5億本以上、ユーザー獲得コストは1人あたり0.5-5ドル。この戦略のROIを分析します。

Epic Games Storeは、毎週1本以上のゲームを無料で配布しています。

2024年だけで2,229ドル相当のゲームを無料提供し、2,500万人の新規ユーザーを獲得しました。なぜEpicは「タダでゲームを配る」ことができるのでしょうか。

本記事では、Epic Gamesの無料配布戦略のROI(投資対効果)を計算し、この戦略の本質を分析します。


この記事でわかること

  1. 配布実績: 累計配布本数とユーザー獲得数
  2. コスト構造: 開発者への支払いと獲得コスト
  3. ROI分析: なぜこの戦略が成立するのか

基本情報

項目内容
トピックEpic Games Storeの無料配布戦略
カテゴリプライシング戦略、ユーザー獲得
難易度中級
対象読者プラットフォーム事業者、マーケティング担当

Epic Games Storeの概要

基本情報

項目内容
開始2018年12月
運営Epic Games(Fortnite、Unreal Engineの開発元)
手数料12%(Steamの30%に対抗)
特徴毎週の無料ゲーム配布

競合との比較

プラットフォーム手数料月間アクティブユーザー
Steam30%(〜20%)1億3,200万人
Epic Games Store12%非公開(推定6,800万人)
GOG30%非公開

Epicは「開発者に優しい手数料」と「無料ゲーム」の2つの武器でSteamに挑戦しています。


無料配布の実績

2024年の配布実績

指標数値
配布ゲームの総価値2,229ドル相当
新規ユーザー獲得数2,500万人
Epic全体のアカウント数8億9,800万(クロスプラットフォーム含む)

出典: TechRadar

累計実績(2018-2023年)

年配布価値請求本数
2019年1,455ドル非公開
2020年2,407ドル7.49億本
2021年非公開非公開
2022年2,120ドル非公開
2023年2,055ドル5.86億本

出典: Statista

印象的な配布事例

ゲーム配布時期新規ユーザー獲得
GTA V2020年5月700万人以上
Star Wars Battlefront II2021年1月1,900万人以上
Control2021年6月非公開
Civilization VI2020年5月非公開

GTA V配布時: サーバーが一時ダウンするほどのアクセス。この1回の配布だけで700万人以上の新規ユーザーを獲得しました。


ユーザー獲得コストの計算

Epic vs Apple裁判(2021年)で、Epicの内部データが公開されました。

Epic vs Apple裁判で判明したデータ

指標数値
開発者への支払い(1タイトルあたり)$100,000〜$1,000,000
1タイトルで獲得するユーザー数約10万人〜数百万人
ユーザー獲得コスト(CPA)$0.50〜$5.00/人

出典: Kotaku

業界平均との比較

獲得手法CPA(1人あたりコスト)
Epic無料配布$0.50〜$5.00
モバイルゲーム広告$2.00〜$10.00
PC/コンソールゲーム広告$10.00〜$30.00
インフルエンサーマーケティング$5.00〜$20.00

ポイント: Epicの無料配布は、従来のマーケティング手法と比較して非常に低コストでユーザーを獲得しています。


ROI(投資対効果)の分析

なぜ無料配布が「投資」として成立するのか

要素内容
直接コスト開発者へのライセンス料($100K〜$1M)
獲得ユーザー数万〜数百万人
LTV(顧客生涯価値)将来の購入、Fortnite課金etc

LTVの構成要素

Epic Games Storeで獲得したユーザーは、以下の形で収益に貢献します。

収益源内容
ゲーム購入Epic Store手数料12%
Fortnite課金バトルパス、V-Bucks
Unreal Engineゲーム開発者からのロイヤリティ
Epic Gamesの評価額向上投資家へのアピール

ROI計算の例

項目数値
GTA V配布のコスト(推定)$1,000万〜$2,000万
獲得ユーザー700万人
CPA$1.43〜$2.86/人
仮にユーザーの10%が$20購入700万人 × 10% × $20 × 12% = 約$168万

結論: 1回の大型配布のコストは、将来の購入収益でほぼ回収可能。さらにFortniteへの誘導、ブランド認知向上などの間接効果もあります。


Steamとの競争戦略

Steamの優位性

要素SteamEpic
ライブラリ数5万本以上数千本
ユーザーレビューありなし
コミュニティ機能充実限定的
ワークショップ(MOD)ありなし
実績システムありあり

Epicの差別化戦略

戦略内容
低手数料12% vs Steamの30%
独占タイトル期間限定でEpic専売
無料配布毎週のゲーム配布
開発者支援Epic Games grants、MegaGrants

独占契約の事例

タイトル独占期間結果
Borderlands 36ヶ月Steam解禁後も好調
Metro Exodus1年批判も多かったが成功
Control1年後に無料配布

批判: 一部のユーザーは独占契約を「ユーザー軽視」と批判しています。しかし、開発者にとっては「確定収入 + 高い手数料還元」が魅力です。


財務状況と持続可能性

Epic vs Apple裁判で判明した財務データ

期間累計損失
2019-2020年約4億ドル(約600億円)

Appleの主張: Epic Games Storeは赤字事業であり、開発者への最低保証金、独占契約、無料配布のコストが収益を上回っている。

Epicの反論: これは「市場シェア獲得のための先行投資」であり、長期的には回収可能。

資金源:Fortniteの収益

年Fortnite推定収益
2018年24億ドル
2019年18億ドル
2020年51億ドル
2021年58億ドル

出典: Deconstructor of Fun

Fortniteの収益がEpic Games Storeの赤字を補填しています。これは、Amazonが「Prime Videoの赤字をECで補填」しているのと同じ構造です。


「無料」の心理学

なぜ無料配布がユーザー獲得に効果的なのでしょうか。

1. ゼロ価格効果(Zero Price Effect)

人は「無料」に対して非合理的に強い反応を示します。

価格ユーザー反応
$60「高い、検討する」
$30「セールか、考える」
$0「無料なら取っておこう」

行動経済学の知見: ダン・アリエリーの研究によると、$0.01と$0.00の違いは、$0.01と$1.00の違いより大きく感じられます。

2. 損失回避(Loss Aversion)

「今週だけ無料」という限定性が、「取り逃すと損」という心理を刺激します。

状況ユーザー心理
常時無料「いつでも取れる」
期間限定無料「今取らないと損」

3. 一貫性の原理(Commitment and Consistency)

一度Epic Storeでゲームを「所有」すると、その後も同じプラットフォームを使い続ける傾向があります。

ステップ効果
無料ゲームを取得Epicアカウント作成
ライブラリにゲームが増える「ここに資産がある」感覚
次のゲーム購入Epicで買う確率が上昇

よくある質問(FAQ)

Q1. Epic Storeは開発者にいくら払っているのか?

裁判で明らかになった範囲では、1タイトルあたり$100,000〜$1,000,000です。大型タイトル(GTA Vなど)はさらに高額と推測されます。

支払い形態は「バイアウト(買い切り)」で、配布後の売上に関係なく、開発者は確定収入を得られます。

Q2. 無料で取ったゲームは本当に遊ばれるのか?

データによると、無料取得ゲームのプレイ率は低いです。しかし、Epicの目的は「プレイしてもらうこと」ではなく「アカウントを作ってもらうこと」です。

アカウントを作れば、将来のマーケティング対象になります。

Q3. この戦略は他社も真似できるか?

資金力があれば可能ですが、持続は困難です。

企業状況
AmazonPrime Gamingで毎月無料ゲーム提供(規模は小さい)
GOG時折無料配布(頻度は低い)
Humble Bundleチャリティバンドル(異なるモデル)

Epicはそれを続けられる資金(Fortnite収益)があるため、競合には真似しにくい戦略です。

Q4. Epic Storeは黒字化するのか?

現時点では不明です。Epicは「2027年までに黒字化」を目標にしていると報道されていますが、公式発表はありません。

無料配布の頻度や規模を維持しながら黒字化するのは困難であり、戦略の転換が必要になる可能性があります。


まとめ

主要ポイント

  1. 低コスト獲得: ユーザー獲得コストは$0.50〜$5.00/人
  2. LTV回収: 将来の購入、Fortnite課金で投資回収
  3. 持続可能性: Fortniteの収益が赤字を補填する構造

次のステップ

  1. 自社のユーザー獲得コスト(CPA)を計算する
  2. 「無料」を活用した獲得施策を検討する
  3. LTV(顧客生涯価値)を最大化する戦略を設計する

参考リソース

Epic Games公式

  • Epic Games Store - About
  • Epic Games Newsroom

分析記事

  • Kotaku - Here's What Epic Paid To Give Away All Those 'Free' Games
  • TechRadar - Epic Games Store 2024 Statistics
  • Accio - Epic Games Free Model

🔗

デジタルエンタメプライシング シリーズ

概念を理解する

  • 全体像:3つのモデルを理解する

モデル別に深掘り

  • 動画配信の価格設計
  • 音楽ストリーミングの価格制約
  • ゲーム課金の行動経済学
  • F2Pゲームの収益構造

事例から学ぶ

  • Netflix価格改定の歴史
  • Epic Games無料配布戦略(この記事)

本記事はデジタルエンタメプライシングシリーズの一部です。

この記事の著者

猪良 幸太郎

猪良 幸太郎

東京理科大学卒業後、国内独立系コンサルティングファームに入社し、IT・業務コンサルタント兼マネージャーとして業務最適化やシステム導入プロジェクトを経験。その後プライシングスタジオに入社し、執行役員兼ビジネス本部長として顧客のプライシング変革支援をリードする傍ら、自社の新規事業立ち上げの推進にも従事。

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目次

  • この記事でわかること
  • 基本情報
  • Epic Games Storeの概要
  • 基本情報
  • 競合との比較
  • 無料配布の実績
  • 2024年の配布実績
  • 累計実績(2018-2023年)
  • 印象的な配布事例
  • ユーザー獲得コストの計算
  • Epic vs Apple裁判で判明したデータ
  • 業界平均との比較
  • ROI(投資対効果)の分析
  • なぜ無料配布が「投資」として成立するのか
  • LTVの構成要素
  • ROI計算の例
  • Steamとの競争戦略
  • Steamの優位性
  • Epicの差別化戦略
  • 独占契約の事例
  • 財務状況と持続可能性
  • Epic vs Apple裁判で判明した財務データ
  • 資金源:Fortniteの収益
  • 「無料」の心理学
  • 1. ゼロ価格効果(Zero Price Effect)
  • 2. 損失回避(Loss Aversion)
  • 3. 一貫性の原理(Commitment and Consistency)
  • よくある質問(FAQ)
  • Q1. Epic Storeは開発者にいくら払っているのか?
  • Q2. 無料で取ったゲームは本当に遊ばれるのか?
  • Q3. この戦略は他社も真似できるか?
  • Q4. Epic Storeは黒字化するのか?
  • まとめ
  • 主要ポイント
  • 次のステップ
  • 参考リソース
  • Epic Games公式
  • 分析記事

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