
ロスリーダー戦略とは?目玉商品で集客する価格設計と注意点
AIサマリー
特定商品を原価割れで販売し、クロスセルで回収するロスリーダー戦略。集客力を高める一方でリスクも伴う手法を、選定ポイント、成功事例、法的注意点を含めて解説します。
スーパーで目にする「卵1パック99円」や「牛乳特価」。これらは顧客を店に呼び込むための「ロスリーダー戦略」です。本記事では、目玉商品で集客し他商品で利益を回収する価格設計を解説します。
この記事でわかること
- ロスリーダー戦略の仕組み: 原価割れで販売し、クロスセルで回収するメカニズム
- 商品選定の3つの基準: 需要が高く、価格比較されやすく、単体では完結しない商品
- リスクと対策: 利益率悪化、法的制約、顧客層の偏りへの対応
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| トピック | ロスリーダー戦略・目玉商品価格設計 |
| カテゴリ | ディスカウント・値引き戦略 |
| 難易度 | 初級〜中級 |
ロスリーダー戦略の概念図ロスリーダー戦略とは
定義と仕組み
ロスリーダー戦略(Loss Leader Strategy) とは、特定商品を原価割れまたは極めて低価格で販売し、集客力を高める手法です。目玉商品単体では赤字になりますが、以下のメカニズムで利益を回収します。
利益回収の3つの経路:
- クロスセル: 来店客が他の利益率の高い商品も購入する
- 顧客獲得コストの削減: 広告費をかけずに新規顧客を獲得できる
- リピート購入: 目玉商品で訪れた顧客が、次回以降も通常価格で購入する
小売・ECでの典型的パターン
| 業態 | 目玉商品例 | 利益回収商品例 |
|---|---|---|
| スーパー | 卵、牛乳、米 | 生鮮食品、惣菜、日用品 |
| 家電量販店 | 人気ゲーム機、TVレコーダー | 周辺機器、延長保証、ソフト |
| ネット通販 | ベストセラー本 | 配送オプション、他カテゴリ商品 |
| サブスクサービス | 初月無料、格安初期プラン | 追加機能、上位プラン、継続課金 |
いつロスリーダー戦略を使うべきか
ロスリーダー戦略が有効な3つのケース:
1. 高い集客力が必要な時
具体例:
- 新規店舗のオープン(認知獲得が最優先)
- 競合店の出店で顧客が流出している
- ECサイトの訪問者数・会員登録数を増やしたい
判断基準: 目玉商品の赤字額 < 獲得できる新規顧客のLTV(顧客生涯価値)
2. クロスセル・アップセルが期待できる時
ロスリーダー戦略が機能する条件:
- 目玉商品を買うために他の商品も「ついで買い」する動線がある
- 顧客が「せっかく来たから」と追加購入する心理を喚起できる
- 利益率の高い関連商品を在庫している
逆に不向きなケース:
- 目玉商品だけで買い物が完結する(例: 単品通販)
- 店舗内の回遊動線が弱い(レジ直行型の配置)
3. 顧客獲得コストとして正当化できる時
ロスリーダーの赤字を「広告費」と見なせるかを確認します。
計算式:
目玉商品の赤字額 ÷ 獲得顧客数 < 通常のCAC(顧客獲得コスト)
具体例:
広告での顧客獲得コストが1,500円/人の場合、目玉商品で1人あたり1,000円の赤字が出ても、CACは削減できています。
ロスリーダー戦略の判断フロー商品選定の3つのポイント
目玉商品の選定を誤ると、赤字だけが拡大します。以下の基準で選びましょう。
1. 需要が高い商品
理由: 誰もが欲しがる商品でないと集客力がありません。
選定基準:
- 購入頻度が高い(日用品、消耗品)
- 市場での認知度が高い(人気ブランド、定番品)
- 季節需要がある(クリスマス、夏休み等)
具体例:
- ✅ スーパー: 卵、牛乳、米、トイレットペーパー
- ✅ 家電: 最新ゲーム機、話題の新製品
- ❌ ニッチな専門品、マニア向け高級品
2. 価格比較されやすい商品
理由: 顧客が「他店より安い」と気づきやすい商品でないと、集客効果が薄れます。
選定基準:
- 規格が統一されている(どこで買っても同じ品質)
- 競合店でも扱っている商品
- 価格をチェックされやすい商品(アプリ、チラシで比較される)
具体例:
- ✅ コカ・コーラ500ml、iPhoneケース、単3電池
- ❌ プライベートブランド、オリジナル商品(比較対象がない)
3. 単体では購入が完結しない商品
理由: 目玉商品だけで満足されると、クロスセルが発生しません。
選定基準:
- 単体では使えない(周辺機器、付属品が必要)
- 他の商品と組み合わせて買われやすい(食材の献立セット等)
- 購入後に継続的に消耗品が必要になる(プリンターとインク等)
具体例:
| 目玉商品 | 期待されるクロスセル商品 |
|---|---|
| ゲーム機 | ソフト、コントローラー、保証 |
| プリンター | インクカートリッジ、用紙 |
| 卵・牛乳 | 野菜、肉、惣菜(献立一式) |
| 初月無料サブスク | 追加機能、上位プラン |
目玉商品選定の比較デメリットとリスク
ロスリーダー戦略には3つの大きなリスクがあります。
1. 利益率の悪化
リスク: 目玉商品の販売比率が想定より高くなり、全体の粗利率が低下する。
対策:
- 目玉商品の販売数量に上限を設ける(「1人1点まで」等)
- 購入時に会員登録を必須にして、リピート顧客のみに提供
- クロスセル商品を目立つ位置に配置(レジ前、目玉商品の隣)
2. ロスリーダー目当ての顧客のみが集まる
リスク: 値引きに敏感な顧客ばかりが来店し、通常価格では買わない。
対策:
- 目玉商品を定期的に変更する(常に同じ商品だと「それ目当て」の固定客だけになる)
- クーポン配布等で、他の商品も購入するインセンティブを設計
- 会員ランクで目玉商品の購入条件を分ける(新規顧客優遇、リピーター通常価格等)
3. 競合との価格競争激化
リスク: 競合も対抗値下げを始め、業界全体の利益率が下がる。
対策:
- 「価格以外の価値」を訴求する(接客、品揃え、配送スピード等)
- ロスリーダー戦略を期間限定にする(常時ではなくキャンペーン形式)
- ロイヤルティプログラムで顧客をロックイン(ポイント、会員特典等)
法的注意点
ロスリーダー戦略は、行き過ぎると「不当廉売」として独占禁止法に抵触する可能性があります。
不当廉売規制(独占禁止法)
禁止行為: 正当な理由なく、継続的に原価を著しく下回る価格で販売し、競合を排除する行為。
該当する可能性がある例:
- 大手チェーンが中小店舗を追い出す目的で、地域限定の極端な安売りを継続
- 原価を大幅に下回る価格で長期間販売し、競合が撤退するまで続ける
セーフな運用:
- 期間限定のキャンペーン(「◯月◯日まで」と明記)
- 正当な理由がある(在庫処分、新規顧客獲得等)
- 市場全体に悪影響を与えない範囲(地域独占を狙わない)
価格表示のルール
景品表示法: 「二重価格表示」の規制に注意。
NG例:
- 「通常価格1,000円→特価100円」(実際には通常価格で販売したことがない)
- 「他店より高ければ返金」(実際には比較せず放置)
OK例:
- 「当店通常価格1,000円→特価100円(過去3ヶ月の平均販売価格)」
- 明確な期間・条件を明記したキャンペーン
成功事例と失敗事例
成功事例: Costco(会員制倉庫型店舗)
戦略:
- ロティサリーチキン(約$5、原価割れ)で集客
- 会員費(年会費$60)で利益を確保
- 大容量商品のバルク販売でクロスセルを促進
成功要因:
- 会員制により「リピート購入前提」の顧客層を獲得
- 目玉商品(チキン)が奥に配置され、店内を回遊する動線設計
- 利益率の高い自社ブランド商品(Kirkland)を多数展開
成功事例: Amazon Prime(サブスク)
戦略:
- Kindle端末を低価格販売(原価割れまたは薄利)
- 電子書籍の継続購入、Primeビデオ、配送特典でLTVを回収
成功要因:
- デバイスがエコシステムへのロックインになる
- 継続課金(Prime会費)で安定収益を確保
失敗事例: 家電量販店の過度な目玉商品競争
何が起きたか:
- 複数の家電量販店が同じ人気TVを原価割れで販売
- 顧客は目玉商品だけを購入し、他の商品は買わない
- 業界全体の利益率が低下
失敗要因:
- クロスセルの設計が弱い(目玉商品だけで満足される)
- 競合との差別化がない(価格以外の価値を訴求できない)
- 継続的に実施し、常態化してしまった
よくある質問(FAQ)
Q1. ロスリーダー戦略とプロモーション割引の違いは?
プロモーション割引は「期間限定で値引きするが、利益は残る」のに対し、ロスリーダー戦略は「目玉商品単体では赤字だが、クロスセルで回収する」点が異なります。
ロスリーダーは集客を最優先にした戦略であり、目玉商品だけを売ることは想定していません。
Q2. ECサイトでもロスリーダー戦略は有効か?
有効です。ECでは以下の形で実施されています。
- 送料無料のハードルを下げる(目玉商品購入で送料無料)
- セット販売(目玉商品A + 利益率の高い商品B)
- 初回限定価格(サブスク誘導)
ただし、実店舗と違い「ついで買い」が起きにくいため、レコメンデーション機能やセット提案が重要です。
Q3. ロスリーダー戦略の効果測定はどうする?
以下の指標で効果を測定します。
| 指標 | 計算式 | 目標値の例 |
|---|---|---|
| 目玉商品の集客効果 | 来店者数の増加率 | +20%以上 |
| クロスセル率 | 目玉商品購入者のうち、他商品も購入した割合 | 60%以上 |
| 全体の粗利率 | 全商品の売上総利益 ÷ 売上高 | 目標粗利率を維持できているか |
| 顧客獲得コスト | 目玉商品の赤字額 ÷ 獲得顧客数 | 通常のCAC以下 |
Q4. どのくらいの期間、実施すべきか?
推奨期間:
- 新規店舗: 開店から3ヶ月間(認知獲得期間)
- 既存店舗: 月1回の週末限定、または季節キャンペーン(1-2週間)
- ECサイト: 月初・月末のキャンペーン(3-7日間)
注意: 常時実施すると、顧客が「割引待ち」の習慣を持ち、通常価格で買わなくなります。期間限定であることを明確に伝えましょう。
Q5. ロスリーダー戦略を実施する前に確認すべきことは?
以下の3点を事前にシミュレーションしてください。
- 赤字許容額: 目玉商品でいくらまで赤字を出せるか(月間予算)
- クロスセル率の見込み: 過去データから「目玉商品購入者のX%が他商品も購入する」を試算
- 競合の動き: 競合が対抗値下げしても耐えられるか
まとめ
主要ポイント
- ロスリーダー戦略の本質: 目玉商品単体では赤字だが、クロスセル・顧客獲得コスト削減で回収する
- 商品選定の3基準: 需要が高く、価格比較されやすく、単体では完結しない商品を選ぶ
- リスク管理が必須: 利益率悪化、値引き依存顧客の増加、法的制約に注意する
次のステップ
- 自社の商品ラインナップから目玉商品候補を3つ選定する
- クロスセル率と粗利率をシミュレーションする
- 期間限定キャンペーンとして小規模テストを実施し、効果を測定する
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シリーズ記事 値引き戦略の基本|ディスカウントの設計と許容範囲の決め方
参考リソース
- 公正取引委員会「不当廉売ガイドライン」
- 消費者庁「景品表示法」
- 『プライシング・スタジオ』(翔泳社)- ロスリーダー戦略の実務解説
本記事はネクサフローのプライシングシリーズの一部です。


