アドオン価格の設計方法|オプション戦略で顧客単価を上げる手法
AIサマリー
SaaSのアドオン価格をどう設計するか。ティアアップグレードとの違い、ARPU向上データ、5ステップの設計プロセスを解説します。

多くのSaaS企業は、価格設定の誤りにより潜在収益の約**30%**を逃しています(ProfitWell調査)。
アドオン価格を戦略的に設計することで、顧客あたり収益を平均30%向上させることができます。本記事では、アドオン価格の設計プロセスと成功事例を解説します。
この記事でわかること
- アドオンとは: オプション機能を追加購入する仕組み
- アドオン vs ティアアップグレード: 両者の使い分け
- 設計5ステップ: 価値分析からテストまでのプロセス
- 成功事例: Adobe、HubSpot、Ahrefsの具体的な戦略
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| トピック | アドオン価格設計 |
| カテゴリ | 価格戦略 |
| 難易度 | 中級 |
| 対象読者 | SaaS事業の経営者・プロダクトマネージャー |
アドオン価格設計の5ステップアドオン・オプションとは
アドオンとは、基本プランに追加購入できるオプション機能です。
プラン全体のアップグレードではなく、必要な機能だけを追加できる柔軟性が特徴です。
アドオンの例
| 企業 | アドオン | 価格 |
|---|---|---|
| Slack | Slack AI | $10/ユーザー/月(2025年7月に新規顧客向け廃止予定) |
| QuickBooks | 給与計算、時間追跡 | 個別価格 |
| Dropbox | 追加ストレージ | 使用量に応じた課金 |
アドオン vs ティアアップグレード
収益への影響
| モデル | 効果 |
|---|---|
| アドオン型 | 顧客収益が平均**+30%**向上(Price Intelligently) |
| ティア型 | アップグレード率が**+43%**向上(明示的な移行パス) |
顧客体験の違い
| 観点 | アドオン型 | ティア型 |
|---|---|---|
| 柔軟性 | 高い(必要な機能のみ追加) | 低い(パッケージ単位) |
| 過払いリスク | 低い | 高い(不要機能への支払い) |
| 意思決定の容易さ | 容易(機能単位で判断) | 複雑(機能比較が必要) |
使い分けの指針
- アドオン型が向いている場合: 顧客ごとにニーズが大きく異なる
- ティア型が向いている場合: 明確な顧客セグメントが存在する
- 両方を組み合わせる場合: ティア構造 + 高位ティアに標準装備 or 個別購入可能
出典: Monetizely - Introducing a New Pricing Tier
アドオン価格設計の5ステップ
ステップ1: 価値分析
どの機能が追加価値を持つかを特定します。
分析のポイント:
- 既存顧客からのフィードバック
- 競合製品との差別化ポイント
- 使用頻度とビジネスインパクトのマトリクス
ステップ2: WTP(支払意欲)調査
顧客が各機能に対していくら支払う意思があるかを調査します。
WTPデータを活用した企業はARPUが23%向上し、コンバージョン率には影響がありませんでした。
調査手法:
- Van Westendorp価格感度分析
- Gabor-Granger法
- コンジョイント分析
出典: Invesp - SaaS Pricing 2025
ステップ3: 価格設定
基本プランの固定パーセンテージではなく、提供する価値に基づいて設定します。
AI機能のアドオン価格設定例:
- LLMコストに対して20%マークアップ
- コストプラスアプローチで顧客に透明性を提供
ステップ4: 配置戦略
アドオンをどのように提供するかを決定します。
2025年のトレンド: アドオンからバンドルへの移行
| 戦略 | 説明 |
|---|---|
| Track A | 既存プランにAI機能を組み込み、価格引き上げ |
| Track B | クレジット制限を使用して機能を組み込む |
Notion、Slack、Loomは当初$4-$10のAIアドオンを提供していましたが、コアプランへのバンドル化を進めています。
クレジットモデル採用:
- 2024年末: 35社
- 2025年: 79社(+126%)
出典: Growth Unhinged - 2025 State of SaaS Pricing
ステップ5: テスト・最適化
A/Bテストで継続的に改善します。
トップ500 SaaS/AI企業: 2025年に1,800件以上の価格変更(企業あたり平均3.6回)
価格実験が標準的な慣行になっています。
ARPU向上データ
主要指標
| 手法 | ARPU/収益向上 |
|---|---|
| WTPデータ活用 | +23% |
| 戦略的アンバンドリング | +30% |
| AI価格戦術(6-9ヶ月後) | +11-15% |
| アンカリング効果活用 | +42%(支払意欲) |
出典: Invesp - SaaS Pricing 2025
拡張収益の貢献度
| 企業規模 | 拡張ARRの貢献度(2024年) |
|---|---|
| $100M+ | 67% |
| $50M-$100M | 58% |
既存顧客が新規ARRの40%を生成($50M+企業では50%以上)。
規模が大きいほど、アドオンやアップグレードによる拡張収益の割合が高くなります。
出典: Benchmarkit - 2025 SaaS Performance Metrics
成功事例
Adobe Creative Cloud
戦略: 永続ライセンス($1,200+)からサブスクリプション($49.99/月)への転換。20以上のアプリケーションをバンドル提供。
結果:
- 総収益: $4.06B(2013年)→ $19.41B(2023年)= 478%増
- 株価: 10年で1,200%以上上昇
- ARR: ほぼ$0 → $19B+
出典: Monetizely - Adobe Creative Cloud Case Study
HubSpot
戦略: Salesforceがアドオンとして別料金を課す機能(マーケティング自動化、スケジューリング、ダッシュボード)を標準装備。
結果:
- Salesforceと比較して2-3倍のTCO優位性
- 実装コスト: HubSpot €5k-€20k vs Salesforce €30k-€100k+
出典: Avidly Agency - HubSpot vs Salesforce Pricing
Ahrefs
戦略: 2022年の新価格ティア導入時、集約利用統計をデータドリブンで提供。
結果: 最初の四半期で28%の自主的アップグレード率
データ透明性により、顧客が自らアップグレードを選択する環境を作りました。
出典: Monetizely - Introducing a New Pricing Tier
価格設定の心理学
アンカリング効果
参照ポイントを成功裏に確立した企業は、支払意欲が最大42%増加します(McKinsey)。
事例: Salesforceは高位プランを最初に提示し、後続オプションをより妥当に見せます。
行動シグナルの活用
行動シグナルを活用した価格提示で、コンバージョン率が18-23%向上します(Deloitte 2022)。
コンテキスト要因
時間的プレッシャー、競合、ウェブデザインなどのコンテキスト要因で、支払意欲が15-40%変化します(Journal of Marketing)。
出典: Monetizely - Pricing Psychology
よくある質問(FAQ)
Q1. アドオンの価格はどのように決めるべきですか?
基本プランの固定パーセンテージではなく、その機能が提供する価値に基づいて設定します。WTP調査で顧客の支払意欲を把握し、価値ベースで価格を決定してください。
Q2. アドオンをバンドル化すべきタイミングは?
アドオンの採用率が高く、コアプロダクトとの統合価値が明確な場合に検討します。2025年のトレンドでは、AI機能のバンドル化が進んでいます。
Q3. 価格変更はどのくらいの頻度で行うべきですか?
トップ500 SaaS/AI企業は年間平均3.6回の価格変更を行っています。市場変化や顧客フィードバックに応じて柔軟に調整することが推奨されます。
Q4. アドオン価格を透明にすべきですか?
はい。AI関連アドオンではLLMコストに対する20%マークアップなど、コストプラスアプローチで透明性を提供することで、顧客の信頼を獲得できます。
Q5. ティアアップグレードとアドオンは併用すべきですか?
多くの成功企業は両方を併用しています。高位ティアに標準装備しつつ、低位ティアでも個別購入可能にすることで、製品市場適合性をテストしながらアップグレードを促進できます。
まとめ
主要ポイント
- 戦略的アドオン設計で顧客あたり収益が平均30%向上
- WTPデータ活用でARPUが23%向上(コンバージョン率への影響なし)
- 2025年のトレンドはアドオンからバンドルへの移行(クレジットモデル+126%)
- 価格実験が標準慣行に(トップ企業で年間平均3.6回の変更)
次のステップ
- 現在のアドオン機能の価値を分析する
- 顧客のWTP(支払意欲)を調査する
- A/Bテストで価格設定を最適化する
参考リソース
- Growth Unhinged - 2025 State of SaaS Pricing
- Monetizely - Pricing Psychology
- Benchmarkit - 2025 SaaS Performance Metrics
価格体系シリーズ
本記事はネクサフローの価格体系シリーズの一部です。


