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AIサマリー
SaaStr創業者Jason Lemkinが語るAI時代のB2B営業戦略。インバウンドは本当に終わったのか?AI SDR導入の失敗パターン、競争優位が2週間で消える時代の生き残り方、価値ベース営業の終焉まで実践的インサイトを解説。
SaaS業界で最も影響力のあるオピニオンリーダー、Jason Lemkin(SaaStr創業者)が語るAI時代のB2B営業戦略。SEOは減少しているのにトラフィックは50%増、AI SDRは2024年初頭まで機能しなかった、競争優位は2週間で消える時代に突入—— 本記事では、2025年初頭に開催されたSaaStr AI London AMAでの率直な議論を徹底解説します。
元動画: SaaStr AI London AMA
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| トピック | SaaS営業戦略、AI時代のGTM |
| カテゴリ | 対談解説 |
| 難易度 | 中級~上級 |
| 対象読者 | SaaS企業経営者、営業責任者、マーケター |
Jason Lemkin(ジェイソン・レムキン) は、SaaS業界で最も影響力のあるオピニオンリーダーの一人です。EchoSign(Adobe Signの前身)の共同創業者として2.5億ドルでのイグジットを経験後、SaaStrを創業。年間1万人以上が参加するSaaStr Annualを主催し、B2B SaaS企業のGo-to-Market戦略における第一人者として知られています。
本記事は、2025年初頭にロンドンで開催されたSaaStr AI LondonのAMA(Ask Me Anything)セッションを基にしています。AMA形式のため、参加者からの質問に対してJason Lemkinが率直に回答する形式で進行しました。
"The plays all work. Webinars, inbound, outbound, leftbound, rightbound, it all still works."
「戦術(プレイ)はすべて機能する。ウェビナー、インバウンド、アウトバウンド、すべてまだ機能している。」
— Jason Lemkin, SaaStr創業者
多くのマーケターが「インバウンドマーケティングは死んだ」と嘆いていますが、実際には死んでいません。SaaStr自身のデータがそれを証明しています。
"Our SEO is down 8%. But our traffic's up 50."
「我々のSEOは8%減少した。しかしトラフィックは50%増加している。」
— Jason Lemkin
SaaStr.comのデータでは、以下の現象が起きています。
従来のSaaSテーマ(CS、CRO等)への関心は減少していますが、AI・GTM関連コンテンツへの需要が急増しています。SEOの数値は減少しても、トラフィック全体は大幅に増加しているのです。
SaaStrトラフィック推移(2023-2025)Jason Lemkinは「プレイ(戦術)は変わらないが、プレイブック(投資配分)が変化している」と強調します。
| 項目 | 従来 | 現在 |
|---|---|---|
| ウェビナー | 有効 | 有効(変わらず) |
| インバウンド | 有効 | 有効(コンテンツテーマは変化) |
| アウトバウンド | 有効 | 有効(変わらず) |
| 投資配分 | SEO中心 | AI/GTMコンテンツに傾斜 |
重要なのは、戦術を変えることではなく、投資配分と優先順位を再設計することです。
AI B2B企業の成長スピードは、従来のSaaS企業とは桁違いです。
| 企業 | 成長 | 期間 |
|---|---|---|
| Replit | 1000万ドル → 2.5億ドル | 1年 |
| 11 Labs | ほぼゼロ → 3億ドル | 1年 |
| Gamma | 100万ドル → 8000万ドル | 1年 |
これらの企業は、従来の10年単位の成長を1年で達成しています。
AI B2B企業の成長曲線興味深いことに、これらの爆発的に成長しているAI企業のリーダーは、従来のB2B企業出身者です。
Jason Lemkinは「もしプレイ(戦術)が機能しないなら、B2B SaaSのベテランがAI企業を率いることは不可能だ」と指摘します。
最大の違いは、戦術ではなく需要の爆発です。Cursor、Replit、Lovableなどは、インバウンド需要が多すぎて対応しきれない状態にあります。
"Everyone else has to get cut. So vendor count is getting stable or shrunk to make room for new offerings and price increases."
「他のベンダーはすべてカットされなければならない。新しいサービスと値上げのために、ベンダー数は安定するか縮小している。」
— Jason Lemkin
Gartnerの調査によると、企業ソフトウェア市場は史上最速の15%成長を記録しています(4000億ドル規模)。しかし、その内訳は以下の通りです。
予算成長の半分は値上げ、残りの半分は新規予算です。つまり、既存の「必須でない」ツールは削減されなければなりません。
企業ソフトウェア予算15%成長の内訳Jason Lemkinの投資先企業では、**1ヶ月で150万ドルのチャーン(解約)**が発生しました。理由は「CRM拡張ツールで、必須ではない」というものでした。
顧客は満足しており、CS上の問題もなかったにもかかわらず、CIOが「アプリを削減する」という判断を下したのです。
大企業のVPは50万~100万ドルの裁量予算を持っています。この予算を獲得するには、買い手の「トップ3の課題/イニシアチブ」に入る必要があります。
"We really none of these products worked before Claude 4.1 or Claude 4 this year, right? Lovable didn't work, Base didn't work."
「これらの製品は今年のClaude 4が出る前は本当に機能しなかった。Lovableも機能しなかった。」
— Jason Lemkin
AI SDR/BDR製品は、2024年2-3月まで実用化されていませんでした。Claude 4/GPT-4レベルのLLMが登場して初めて、これらの製品が機能するようになったのです。
| 製品 | 創業年 | 実用化時期 |
|---|---|---|
| Gamma | 2020年 | 2024年2-3月(Claude 4登場後) |
| Replit | 2014年頃 | 2024年2-3月(Claude 4登場後) |
| Lovable | 不明 | 2024年2-3月(Claude 4登場後) |
これらの製品は5年以上存在していましたが、LLMの性能が実用レベルに達したのは2024年初頭だったのです。
Jason Lemkinは、多くの企業がAI SDRツールを購入しても成果が出ない理由を明確に指摘しています。
失敗パターン:
重要: AI SDRツールは「買えばすぐ動く」ものではありません。
"You got to train it for a month. You got to train it every day. You've got to iterate on boarding."
「1ヶ月間トレーニングする必要がある。毎日トレーニングする必要がある。オンボーディングを繰り返し改善する必要がある。」
— Jason Lemkin
Jason LemkinとAmeliaが推奨する正しい実装フローは以下の通りです。
AI SDR正しい実装フローよくある失敗パターン:
成功の鉄則: あなた自身が売れないものを、AIも売ることはできません。
注意: AI SDRツールは「買えばすぐ動く」ものではありません。人間の営業担当者が成功した手法を学習させる1ヶ月間の集中トレーニング期間が必須です。
"You cannot sell value unless you're a product expert. You cannot sell value."
「製品エキスパートでなければ価値を販売することはできない。価値を販売することはできないのだ。」
— Jason Lemkin
Jason Lemkinが目撃した衝撃的な事例があります。
ある大手AI企業で:
従来の「価値ベース営業」は機能しません。顧客はすでに製品を試しており、技術的な課題を解決してくれる専門家を求めています。
| 時代 | 求められるスキル |
|---|---|
| 従来 | プレゼン力、人間関係構築、6つの質問に答える |
| 現在 | 製品エキスパート、技術理解、問題解決力 |
Jason Lemkinは「営業担当者の70-80%は製品を深く理解していない」と指摘します。トップ営業担当者の共通点は、製品のあらゆる機能、ギャップ、回避策を熟知していることです。
インサイト: Salesforce CEOのMarc Benioffは「すべての顧客が1ドルを払う前にAgentforceで稼働していてほしい」と発言。製品主導の営業へのシフトが加速しています。
"We used to have about 18, 12 to 18 months until you were copied by a startup. Now within two weeks they had like four clones."
「かつてはスタートアップにコピーされるまで12~18ヶ月あった。今は2週間で4つのクローンができる。」
— Jason Lemkin
Jason Lemkinが創業したEchoSign時代と現在では、競争優位の持続期間が劇的に短縮しています。
競争優位の寿命の変化| 時期 | スタートアップにコピーされる期間 | 大企業の参入期間 | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 過去(2020年以前) | 12-18ヶ月 | 5-7年 | 開発コスト、技術障壁 |
| 現在(2024年以降) | 2週間 | 数ヶ月 | AI/ローコード、プロンプト移植 |
実例: Jason Lemkinの投資先企業は、新機能をリリースした2週間後に4つのクローン製品が登場しました。
エージェント(AI)の登場により、スイッチングコストが激減しています。
従来のスイッチングコスト:
エージェント時代のスイッチングコスト:
Jason Lemkinは実際に、あるAI SDRツールのプロンプトを別のツールにコピーしたところ、そのまま機能したと語っています。
警告: ある投資先企業は新機能をリリースした2週間後に4つのクローン製品が登場。技術的優位性だけでは差別化できない時代に突入しました。
Jason Lemkin自身がReplitで11個のアプリを90日間で構築し、80万回使用されました。
Jason LemkinのReplit開発実績| 指標 | 実績 |
|---|---|
| アプリ数 | 11個 |
| 総使用回数 | 80万回 |
| 平均開発期間 | 8日/アプリ |
| 開発ツール | Replit |
その中の1つが、今回のイベントのために1.5時間で作成した「VaporSell.ai」というゲームです。
Jason Lemkinは「Vibe Codingは劇的に速い」と語る一方、限界も指摘しています。
適している場合:
不向きな場合:
重要: クローンは「何を作りたいか既に分かっている」場合に劇的に速くなります。Googleが最近リリースしたReplit/Lovableクローンで作ったプロンプトを、そのままReplitにコピーしたところ、5分で動作したと語っています。
"Your job is to be in the top three initiatives or top three needs of your buyer."
「あなたの仕事は、買い手のトップ3のイニシアチブまたはトップ3のニーズに入ることだ。」
— Jason Lemkin
多くの人が「アウトバウンドは死んだ」と考えていますが、実際には機能しています。
前提条件: 買い手の「トップ3の課題/イニシアチブ」を解決すること。
アウトバウンド営業成功の条件Jason Lemkinの実例:
成功の条件:
重要: CEOでも毎日メールを読んでいます。HubSpot会長のBrian Halligan、ServiceNow CEOのYamini Ramanも「毎日コールドメールを読む」と語っています。
Jason Lemkinは「6ヶ月前なら『AGIでSaaSが終わる確率はゼロ』と答えた」と語ります。しかし、現在は少し見方が変わっています。
現実的な見方:
実例: Jason Lemkin自身が90日間で11個のアプリを構築し、80万回使用された。これは一部の機能を「削り取った」事例です。
Jason Lemkinは「AGIそのものよりも、競争優位の短命化が最大の脅威」と指摘します。
具体的な脅威:
生き残るには: スピードを上げ、継続的にイノベーションを起こし続けるしかありません。
回答:
ツールを買っただけでは機能しません。オンボーディングの繰り返し改善が必須です。
回答:
終わっていません。SaaStr自身もトラフィックは50%増加しています。
回答:
製品エキスパートになることが必須です。
回答:
技術的優位性だけでは差別化できない時代です(2週間で4つのクローン)。
回答:
買い手の**「トップ3の課題/イニシアチブ」に入ることが最優先**です。
回答:
「何を作りたいか既に分かっている」場合は劇的に速いです。
回答:
複雑なB2Bソフトウェアを完全に置き換えるのは不可能です。
本記事はネクサフローのAI研究シリーズの一部です。
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