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ホーム/ブログ/SaaS企業がAIネイティブに移行する方法:Filevine CEOが明かす9つの戦略
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最終更新: 2026/01/16

SaaS企業がAIネイティブに移行する方法:Filevine CEOが明かす9つの戦略

SaaS企業がAIネイティブに移行する方法:Filevine CEOが明かす9つの戦略
AIテクノロジービジネス

AIサマリー

ARR280億円超のFilevine CEOが語る、SaaS企業がAIネイティブに移行するための9つの具体的戦略。「AIを上から振りかけるだけではダメ」アーキテクチャ変革、AI人材採用、データ活用、価格戦略まで実践手法を徹底解説。

目次
この記事でわかること基本情報登壇者プロフィール:Ryan Anderson(Filevine CEO)Filevineの実績「AIを振りかける」は2026年に通用しないエンジニアの誇りと現実のギャップ根本的な変革が必要な理由戦略1: Nothing is Sacred(何も神聖ではない)既存コードベースの大胆な破壊4x4意思決定マトリクス感情ではなくロジックで判断戦略2: Content to Context(コンテンツからコンテキストへ)SaaSの価値転換映画Cluelessのクローゼット比喩「SaaSは死んだ」論への反論戦略3: Architecture Must Flip(アーキテクチャの転換)「AIを上から振りかける」の限界旧構造 vs 新構造ML/AIチームへのコントロール権移譲アーキテクチャ転換の実践ポイント戦略4: Hire AI Natives(AI人材の採用)AI人材が「古いSaaS企業」を避ける理由データと配布力で説得買収という選択肢:Parrot社の事例AI人材獲得の実践ポイント戦略5: Rebrand with Intent(意図的なリブランド)単なる表面的変更ではないロゴ変更の意味従業員市場と顧客市場への二重のメッセージリブランドの実践ポイント戦略6: Obsess Over Usage(使用状況への執着)使用率で製品の良し悪しを判断監査ログの必須化具体的な成功事例使用状況追跡の実践ポイント戦略7: Leverage Your Data(データの活用)データはSaaS企業の最大の優位性API戦略の転換AI競合との交渉術競合製品のコピー戦略データ活用の実践ポイント戦略8: Price to Dominate(市場支配のための価格戦略)SaaS企業の粗利優位性ブレンド粗利の計算攻撃的価格設定の戦略的意味価格戦略の実践ポイント戦略9: Build Hard Things(難しいものを作る)新カテゴリー創造:LOISAI前提のインターフェース設計使用量ベース課金への移行AI非購入顧客への不販売全チームの巻き込み実践ポイントリーダーシップの在り方:不同意を恐れない同調性は役に立たない厳しい意思決定の必要性まとめ:9つの戦略の振り返り主要ポイント実行の難しさと本質次のステップよくある質問(FAQ)Q1. 既存のマイクロサービスは全て捨てるべきですか?Q2. AIチームの買収は必須ですか?Q3. AI単体企業との価格競争でどう勝つのですか?Q4. AIを上から振りかけるだけではダメな理由は?Q5. データを競合に渡すリスクはないのですか?Q6. 使用量ベース課金で本当に収益が上がるのですか?Q7. AI非購入顧客への不販売は現実的ですか?関連記事参考リソース

SaaS企業がAIネイティブに移行する方法:Filevine CEOが明かす9つの戦略

ARR280億円超、顧客6,000社を抱える法律テック企業FilevineのCEO Ryan Andersonが、SaaS企業がAIネイティブに移行するための具体的な戦略を語りました。「AIを上から振りかけるだけでは2026年には通用しない」という衝撃的なメッセージから始まる本講演では、アーキテクチャの根本的変革、AI人材の獲得、データ活用、価格戦略まで、実践的な手法が明かされています。

📹

本記事の元動画: SaaStr Podcast - How to Go from SaaS to AI Native with Ryan Anderson

この記事は上記講演の内容を元に、SaaS企業のAI移行戦略を詳しく解説したものです。


この記事でわかること

  1. 「AIを振りかける」では不十分な理由: 2026年に通用するAIネイティブ移行の本質
  2. 9つの具体的戦略: Nothing is Sacred、アーキテクチャ転換、AI人材獲得、価格戦略など
  3. 実践的なTips: 4x4意思決定マトリクス、AI競合との交渉術、粗利を活かした価格設定
  4. Filevineの実績: AIによる収益がSaaS収益を四半期ベースで上回る成長の軌跡

基本情報

項目内容
登壇者Ryan Anderson(Filevine CEO・共同創業者)
企業規模顧客6,000社、従業員700名、ARR 280億円超
成長率全体50-60%、SaaS 35-40%、AI収益が四半期ベースでSaaS収益超え
カテゴリ講演解説
難易度中級~上級
対象読者SaaS企業のCEO・CTO、プロダクトマネージャー、技術リーダー

登壇者プロフィール:Ryan Anderson(Filevine CEO)

Ryan Andersonは法律テック領域のリーディングカンパニー、Filevineの共同創業者兼CEOです。同社は法律事務所向けのケース管理システムを提供しており、AIネイティブへの移行に成功した数少ないSaaS企業の一つです。

Filevineの実績

指標数値
顧客数6,000社
従業員数700名
ARR$200M+(約280億円以上)
全体成長率50-60%
SaaS成長率35-40%
AI収益四半期ベースでSaaS収益を上回る
AI Fields数ヶ月で1.5億アクション
Chat with Your Case週次10%成長、最大1顧客で1日2,000回使用

Filevineの特筆すべき点は、既存のSaaS事業を維持しながら、AI収益が四半期ベースでSaaS収益を上回る成長を実現したことです。単なる「AIを追加した」のではなく、根本的なアーキテクチャ変革とビジネスモデル転換によって、真のAIネイティブ企業への移行を果たしています。


「AIを振りかける」は2026年に通用しない

エンジニアの誇りと現実のギャップ

本講演は、Ryanのエンジニアが誇りを持って語った次の言葉から始まります。

“

「私たちは素晴らしいSaaSアプリケーションを構築しました。大金を稼ぎ、急成長し、顧客は決して離れません...そして素晴らしいニュースは、これからAIを上から振りかけられることです。」

"We have built an incredible SaaS application that makes tons of money, grows fast, customers never leave it... and the great news is now we get to sprinkle AI on top."

そしてRyanは即座にこう続けます。

“

「これは根本的に間違っています。」

"That is fundamentally incorrect."

根本的な変革が必要な理由

多くのSaaS企業が陥る罠は、既存のアーキテクチャの上にAIを「追加」しようとすることです。

“

「今日AIアプリケーションを構築するなら、単に『APIがある。OpenAIにもAPIがある。完了。接続すればAIアプリケーションの出来上がり』とは言えません。それは2026年には通用しません。」

"If you are going to build an AI application today, you can't simply say, 'Hey, we've got all these APIs. OpenAI has APIs. Done. We'll connect them. We've got an AI application.' That is not going to cut it in 2026."

API接続だけでは不十分な理由は以下の通りです。

  • AIは既存システムの「付加機能」ではなく、製品の中核となる必要がある
  • データの準備方法がAI向けに最適化されていない
  • ML/AIチームがデータ構造を日々調整できる体制がない
  • 顧客にとって「完全な回答」を提供できない

次のセクションから、Filevineが実践した9つの戦略を具体的に見ていきます。


戦略1: Nothing is Sacred(何も神聖ではない)

AIネイティブへの移行で最も困難なのは、既存のコードベースを大胆に破壊する決断です。

既存コードベースの大胆な破壊

“

「何も神聖ではありません。リーダーたちが構築したものを取り壊すことについて、彼らと会話をしなければなりません。」

"Nothing is sacred. You are going to have to have conversations with your leaders about tearing down what they have built."

Ryanは、エンジニアが5年かけて構築したマイクロサービスアーキテクチャですら、AI時代に適さないなら削除すべきだと主張します。これは技術的判断であると同時に、感情との戦いでもあります。

4x4意思決定マトリクス

何を残し、何を削除すべきかを判断するため、Filevineは4x4マトリクスを使用しています。

4x4意思決定マトリクス4x4意思決定マトリクス

判断基準:

象限競争優位性開発スピード判断
右上高促進保持・強化
左上低促進状況判断
右下高阻害最適化検討
左下低阻害削除対象

左下象限(競争力なし&スピード阻害)に該当するものは、感情を排して削除すべきです。これが最も困難な決断ですが、AIネイティブへの移行には不可欠です。

感情ではなくロジックで判断

“

「残念ながら、この場合、同調性は役に立ちません。AIネイティブへ移行する決断を下すCEOや技術リーダーとして、あなたは不同意を恐れてはいけません。」

"Unfortunately, in this instance, agreeableness is not going to help you. You're gonna have to be disagreeable as a CEO or as a technical leader making these calls to go AI native."

技術リーダーは「不同意であること」を恐れず、冷静にロジックで判断する必要があります。エンジニアのプライドや感情に配慮しつつも、AIネイティブへの移行という大局的目標を優先すべきです。


戦略2: Content to Context(コンテンツからコンテキストへ)

SaaSの価値転換

SaaSアプリケーションの価値が、データそのもの(コンテンツ)から文脈(コンテキスト)へシフトしています。

従来のSaaSは、データの収集・保存・表示に優れていました。しかしAI時代には、そのデータをどう「文脈化」してAIエージェントに提供するかが鍵となります。

映画Cluelessのクローゼット比喩

Ryanは、映画「Clueless」の有名なクローゼットシーンを引用して、SaaSとAIの関係を説明します。

“

「あなたのSaaSアプリケーションはシェールのクローゼットのようなものです。エージェントはクローゼット内のコンテンツに基づいて行動を支援します。」

"Your SaaS application is like Cher's closet. The agent helps take action based on the content inside the closet."

この比喩が示すのは以下の点です。

  • AIエージェントだけでは不十分: クローゼット(構造化データ)がなければ、エージェントは何も選べない
  • SaaSの「クローゼット」が価値の源泉: 整理された豊富なデータこそが、AIを強力にする
  • SaaS + AIの相乗効果: 両方があって初めて最高の体験を提供できる

「SaaSは死んだ」論への反論

一部の論者は「AIがあればSaaSは不要」と主張しますが、Ryanはこれを明確に否定します。

理由:

  1. 今後5年でデータ入力の多くはキーボード経由ではなくなる: 音声、画像、エージェント経由など、データの流入経路が多様化する
  2. 構造化データの価値: AIがアウトプットを生成するには、整理された文脈が必要
  3. SaaS企業の優位性: 既にデータと顧客を持つSaaS企業が、AI単体企業より有利

SaaS + AIの組み合わせこそが、次の時代の勝者となります。


戦略3: Architecture Must Flip(アーキテクチャの転換)

「AIを上から振りかける」の限界

多くのSaaS企業が犯す誤りは、既存のアーキテクチャの「上」にAI層を追加しようとすることです。

アーキテクチャ比較アーキテクチャ比較

旧構造 vs 新構造

旧構造(NG):

AI層
  ↓
サービス層(AWS, DB等)
  ↓
データ層

この構造の問題点は、AIチームがデータの準備方法を自由に調整できないことです。データ構造の変更には既存のサービス層への依存があり、スピードが出ません。

新構造(推奨):

AIアプリケーション層 ∥ AIデータ層
           ↓
      サービス層

AIデータ層とAIアプリケーション層を並列配置することで、ML/AIチームがデータの準備方法を完全にコントロールできます。

ML/AIチームへのコントロール権移譲

Ryanは、MLエンジニアがほぼ毎日データフォーマットを調整していると語ります。これは、従来の「サービス層経由」のアプローチでは不可能です。

具体例: 法的ケースのグラフ構造化

Filevineでは、法的ケースを以下のようにグラフ構造でAI向けに最適化しています。

  • 人(People): 原告、被告、弁護士、証人など
  • イベント(Events): 事故、証言、裁判日など
  • 主張(Claims): 訴因、反論
  • 結果(Outcomes): 判決、和解

この構造化により、AIは「この事件で次に何をすべきか?」という質問に対して、完全な文脈を持って回答できます。

アーキテクチャ転換の実践ポイント

  1. ML/AIチームに自律性を与える: データレイヤーの設計・変更権限を委譲
  2. 日次での調整を前提に設計: 固定的なスキーマではなく、柔軟な構造
  3. グラフ構造・ベクトルDBの活用: AI向けのデータ構造を採用

戦略4: Hire AI Natives(AI人材の採用)

AI人材が「古いSaaS企業」を避ける理由

AI人材は、クールなAIスタートアップで働きたがります。「古いSaaS企業」は魅力的に映りません。しかし、SaaS企業には強力な武器があります。

データと配布力で説得

FilevineがAI人材を説得する際に使った2つのポイントです。

1. データの豊富さ

法律テック領域には、AI単体企業が数百社存在します。これらの企業は「書類をください。AIで分析します」と営業します。

しかし、Ryanは以下のように主張します。

“

「不完全な回答は実際にはもっと悪いです。不正確な回答よりも悪い。なぜなら顧客は自分が見なかったものを知らないからです。」

"An incomplete answer is actually worse. It's worse than an inaccurate answer because the customer doesn't know what they didn't see."

AI単体企業が持つデータ: 書類のみ

Filevineが持つデータ: 書類 + 監査証跡 + 連絡先 + 締切 + カレンダー + 紛争チェック + タスク履歴

この「完全なデータ」こそが、AIエンジニアにとって魅力的な開発環境を提供します。

2. 配布力

使用状況の推移使用状況の推移

FilevineのAI製品は、リリース後数ヶ月で以下の成長を実現しました。

  • 1日5-10人 → 数百人の利用へ
  • 最大で1顧客が1日2,000回使用
  • Chat with Your Case: 週次10%成長

既に6,000社の顧客を持つSaaS企業は、AI製品を即座に配布できます。これはAI単体企業にはない圧倒的な優位性です。

買収という選択肢:Parrot社の事例

Filevineは、AI人材を素早く獲得するためにParrot社を買収しました。

理由:

  • AIネイティブはAIネイティブと働きたがる: クリティカルマス(臨界点)が必要
  • 採用には時間がかかる: 買収によって一気に複数のAI人材を獲得できる

買収後、FilevineはParrotのAIネイティブチームと既存のデータサイエンスチームを統合し、AIネイティブ企業としての体制を整えました。

AI人材獲得の実践ポイント

  1. データの豊富さをアピール: 単なる書類ではなく、完全な文脈を持つデータ
  2. 配布力を示す: 既存顧客基盤による即座のスケール
  3. 買収も選択肢: クリティカルマスを素早く獲得できる
  4. AI前提の組織設計: 全社がAI開発に関与できるメッセージング

戦略5: Rebrand with Intent(意図的なリブランド)

単なる表面的変更ではない

Filevineは、AIネイティブへの移行に伴い、ロゴとブランドを刷新しました。これは単なるデザイン変更ではなく、「旧SaaS時代から新AI時代への移行」を象徴する旗印です。

ロゴ変更の意味

要素旧ロゴ新ロゴ
トーン軍隊的・法律的スピード・成長・大胆さ
色落ち着いた色合い明るく前向きな色合い
メッセージ信頼性・安定性重視革新性・変革重視

従業員市場と顧客市場への二重のメッセージ

リブランドは2つの市場に向けたメッセージです。

1. 従業員市場: 「私たちは変わった。新しい時代を迎えた」

社内のエンジニアやプロダクトチームに対して、「古いSaaS企業」ではなく「AIネイティブ企業」として働いているというアイデンティティを提供します。

2. 顧客市場: 「FilevineはAI企業だ」

既存顧客と潜在顧客に対して、「SaaS製品にAIを追加した」のではなく、「AIネイティブ企業として再定義した」というメッセージを送ります。

リブランドの実践ポイント

  • ロゴ・色・メッセージを統一して刷新
  • 社内向けに「象徴的な変化」として位置づける
  • 顧客向けには「AI企業としての再定義」を明確に伝える

戦略6: Obsess Over Usage(使用状況への執着)

使用率で製品の良し悪しを判断

AI製品の成功を測る最も重要な指標は「使用率」です。

Ryanは以下のように述べます。

“

「私たちは、誰がこれらのアプリケーションで何をしているかを正確に把握するための監査証跡ログなしに、ベータ版を超えてアプリケーションをロールアウトすることをチームに許可しません。」

"We do not let our teams roll out applications beyond beta without audit trail logging to know exactly who's doing what with these applications."

監査ログの必須化

Filevineでは、以下のルールを徹底しています。

  • ベータ版を超えるリリースには監査証跡ログが必須
  • DAU(デイリーアクティブユーザー)、WAU(ウィークリーアクティブユーザー)、MAU(マンスリーアクティブユーザー)を常に追跡
  • 使用状況を「宗教的に」(religiously)追跡する

具体的な成功事例

AI Fields: 数ヶ月で1.5億アクション

フィールド入力を自動化するAI機能。法律事務所のスタッフが手動で入力していた項目を、AIが自動で埋めます。

Docket View: 急成長中

裁判所の書類を自動解析し、重要な情報を抽出する機能。

Chat with Your Case(最大ヒット): 週次10%成長

最も成功したAI製品。法律事務所のスタッフが「このケースで次に何をすべきか?」と質問すると、AIが完全な文脈を持って回答します。

  • 顧客の使用パターン: 1日5回 → 8回 → 20回 → 最大2,000回
  • 週次10%の成長率を維持

使用状況追跡の実践ポイント

  1. 監査ログを最初から組み込む: ベータ版でも必須
  2. DAU/WAU/MAUをダッシュボード化: リアルタイムで追跡
  3. 使用パターンを分析: どの機能が最も使われているか
  4. 顧客の使用頻度の増加を追跡: エンゲージメントの指標

戦略7: Leverage Your Data(データの活用)

データはSaaS企業の最大の優位性

SaaS企業は、長年にわたってデータを蓄積してきました。このデータこそが、AI単体企業に対する最大の武器です。

API戦略の転換

旧: オープンAPI

  • 誰でもアクセス可能
  • 何をしているか追跡できない
  • データが流出するリスク

新: パーソナルアクセストークン

  • 全リクエストを評価
  • 誰が何をしているか完全把握
  • 不適切な使用を防止

Filevineは、API戦略をオープンからクローズドに転換し、全てのリクエストを評価しています。

AI競合との交渉術

AI単体企業は、「顧客のデータを無料で提供すべきだ」と主張します。しかし、Ryanは巧妙な交渉術を明かします。

“

「『わかりました。それについて話しましょう。でももちろん、双方向ですよね?あなた方が私たちのデータから得るAIアウトプットを、私たちのシステムに直接戻せますよね?』と言った瞬間、立場が逆になると靴は心地よく感じなくなります。」

"The minute you say, 'Okay, sure. Let's have a conversation about that. But of course, it goes both ways, correct? We can take the AI outputs that you guys get from our data and we'll get them right back into our system. Correct?' All of a sudden, the shoe doesn't feel so good when it's on the other foot."

この交渉術のポイントは、「データを渡すなら、AIアウトプットもこちらに返してもらう」と提案することです。多くの競合企業はこの提案を聞くと黙ります。

競合製品のコピー戦略

Ryanは大胆な戦略を提案します。

“

「それらの製品を100%コピーすべきです。それらの製品をコピーして、自社システムに直接組み込むべきです。あなたにはその権利があります。」

"You should 100% copy those products. You should copy those products and build them right into your system. You have the right to do this."

理由:

  • APIトラフィックから有望な新機能開発領域を発見できる
  • 自社データと統合することで、より完全な製品を提供できる
  • 競合より優れた体験を提供できる
SaaS+AI vs AI単体企業SaaS+AI vs AI単体企業

データ活用の実践ポイント

  1. オープンAPIからパーソナルアクセストークンへ移行
  2. 全リクエストを評価し、不適切な使用を防止
  3. 交渉時には「双方向のデータ共有」を提案
  4. APIトラフィックから新機能のヒントを得る
  5. 競合製品の優れた部分を自社システムに統合

戦略8: Price to Dominate(市場支配のための価格戦略)

SaaS企業の粗利優位性

SaaS企業は、AI単体企業に対して圧倒的な粗利優位性を持っています。

粗利比較粗利比較
企業タイプ粗利率理由
SaaS企業80%サーバーコスト以外のコストが低い
AI単体企業10%程度LLMコスト(API料金)が非常に高い
SaaS+AI企業60%(ブレンド)SaaS粗利80% + AI粗利低下 = ブレンド60%

ブレンド粗利の計算

FilevineのRyanは、極端なケースでも次のように説明します。

  • SaaS粗利: 80%
  • AI粗利: 大幅に低下(LLMコストが高い)
  • ブレンド粗利: 60%(SaaSとAIの加重平均)

それでも、AI単体企業の10%程度と比べて圧倒的に高い粗利率を維持できます。

攻撃的価格設定の戦略的意味

SaaS企業は、この粗利優位性を活かして競合より安く販売できます。

投資家への説明:

  • 「市場シェアを獲得中です」
  • 「ブレンド粗利は競合より遥かに高いです」
  • 「競合は粗利10%で苦しんでいますが、当社は60%です」

この戦略により、AI単体企業を価格競争で圧倒し、市場シェアを獲得できます。

価格戦略の実践ポイント

  1. SaaSの高粗利を活かす: 既存の収益基盤が価格戦略の武器
  2. 攻撃的価格設定: 競合より安く販売してシェア獲得
  3. 投資家への明確な説明: ブレンド粗利は競合より高い
  4. 長期的視点: 市場シェアを取れば、後で価格を調整できる

戦略9: Build Hard Things(難しいものを作る)

新カテゴリー創造:LOIS

Filevineは、SaaS + AI = Operating Intelligence Systemという新しいカテゴリーを創造しました。

法律業界向けには、**LOIS(Legal Operating Intelligence System)**と名付けています。

LOISのコンセプト:

  • 単なるSaaS製品ではない
  • 単なるAI製品でもない
  • オペレーションとインテリジェンスを統合した新しいカテゴリー

AI前提のインターフェース設計

AIは「前提」となり、背景に溶け込みます。クラウドが今や当たり前のように、AIも当たり前の存在になります。

Ryanは以下のように述べます。

“

「AIは今や当然のものとして想定されます。背景に溶け込みます。私たちはAIについて話すことが少なくなります。単にテクノロジーについて話すようになります。結局のところ、私たちは常に顧客の問題を解決するテクノロジー企業であっただけです。」

使用量ベース課金への移行

Filevineは、従来のサブスクリプション+ユーザーベース課金から、使用量ベース課金に移行しています。

具体的なモデル:

  • マター/プロジェクト単位で課金
  • 顧客がどれだけ使用したかに応じた柔軟な価格設定
  • 従来型より高収益を実現

AI非購入顧客への不販売

Filevineは大胆な決断を下しました。

“

「私たちはもはやAI製品を買わない顧客には販売しません。なぜか?私たちが構築するすべてにAIが暗黙的に含まれていると仮定する必要があるからです。」

"We no longer sell to customers who won't buy the AI products. Why is that? Because we have to assume that AI is implicit in everything we build."

理由:

  • AI前提で製品を設計している
  • 「AI版」と「非AI版」を分けるのは非効率
  • 法律業界でAIを使わない弁護士は競争力を失う

全チームの巻き込み

「クールなAI開発」に全員が参加できるメッセージングが重要です。

NG: 「SaaSチームは古い製品を担当、AIチームは新しい製品を担当」

OK: 「全員が一つの製品を作る。その製品はAIネイティブだ」

AI移行ジャーニーAI移行ジャーニー

実践ポイント

  1. 新カテゴリーの創造: SaaS + AI = Operating Intelligence System
  2. AI前提のUX設計: AIは背景に溶け込む
  3. 使用量ベース課金: 顧客の利用に応じた柔軟な価格
  4. AI非購入顧客への不販売: 製品をAI前提で統合
  5. 全チームの巻き込み: 全員が「クールなAI開発」に参加

リーダーシップの在り方:不同意を恐れない

同調性は役に立たない

AIネイティブへの移行は、多くの困難な意思決定を伴います。Ryanは、リーダーシップの本質について語ります。

“

「残念ながら、この場合、同調性は役に立ちません。AIネイティブへ移行する決断を下すCEOや技術リーダーとして、あなたは不同意を恐れてはいけません。」

"Unfortunately, in this instance, agreeableness is not going to help you. You're gonna have to be disagreeable as a CEO or as a technical leader making these calls to go AI native."

厳しい意思決定の必要性

AIネイティブへの移行には、以下のような厳しい決断が必要です。

  • エンジニアが5年かけて構築したマイクロサービスを削除
  • 既存の製品ロードマップを破棄
  • AI非購入顧客への不販売
  • 組織の抜本的な再編

これらの決断は、感情的には非常に困難です。しかし、ロジックに基づいて冷静に判断する必要があります。


まとめ:9つの戦略の振り返り

主要ポイント

  1. Nothing is Sacred(何も神聖ではない): 既存コードベースの大胆な破壊。4x4マトリクスでロジカルに判断
  2. Content to Context(コンテンツからコンテキストへ): SaaSの価値は文脈化されたデータへ
  3. Architecture Must Flip(アーキテクチャの転換): AIデータレイヤーとAIアプリレイヤーを並列配置
  4. Hire AI Natives(AI人材の採用): データと配布力で説得。買収も選択肢
  5. Rebrand with Intent(意図的なリブランド): 旧SaaS時代から新AI時代への移行を象徴
  6. Obsess Over Usage(使用状況への執着): 監査ログ必須、DAU/WAU/MAUを常に追跡
  7. Leverage Your Data(データの活用): APIをクローズド化、交渉術、競合製品のコピー
  8. Price to Dominate(市場支配のための価格戦略): SaaSの高粗利を活かして攻撃的価格設定
  9. Build Hard Things(難しいものを作る): 新カテゴリー創造、使用量ベース課金、AI非購入顧客への不販売

実行の難しさと本質

これらの戦略は、実行が非常に困難です。感情との戦いであり、組織的な変革を伴います。

しかし、Ryanは最後に本質を語ります。

“

「結局のところ、常に問題を抱えた顧客のことなのです。それが私たちを動かすものです。」

"At the end of the day, it has always just been about a customer with a problem. That's what animates us."

技術やトレンドに振り回されず、顧客の問題を解決するという本質に立ち返ることが重要です。

次のステップ

本記事の内容を踏まえ、以下のアクションを検討してください。

  1. 自社のSaaS製品を4x4マトリクスで評価: 左下象限(削除対象)を特定
  2. アーキテクチャの現状確認: AIデータレイヤーが並列配置されているか
  3. AI人材戦略の検討: データと配布力をアピールポイントに
  4. API戦略の見直し: オープンAPIからパーソナルアクセストークンへ
  5. 価格戦略の再設計: SaaSの高粗利を活かした攻撃的価格設定

よくある質問(FAQ)

Q1. 既存のマイクロサービスは全て捨てるべきですか?

すべてを捨てる必要はありません。4x4マトリクス(競争優位性 × 開発スピード)で評価し、左下象限(競争力なし&スピード阻害)に該当するものを削除します。右上象限は保持・強化すべき資産です。

Q2. AIチームの買収は必須ですか?

必須ではありませんが、AI人材のクリティカルマスを素早く獲得できる選択肢です。FilevineはParrot社を買収してAIネイティブな人材を一気に獲得しました。AIネイティブはAIネイティブと働きたがる傾向があります。

Q3. AI単体企業との価格競争でどう勝つのですか?

SaaS企業の高粗利(80%)を活かして攻撃的価格設定が可能です。AI製品で粗利が下がっても、ブレンド粗利は60%程度となり、AI単体企業の10%程度と比べて圧倒的に有利です。

Q4. AIを上から振りかけるだけではダメな理由は?

2026年には通用しません。AI層を既存サービス層の上に乗せるのではなく、AIデータレイヤーとAIアプリケーションレイヤーを並列配置し、ML/AIチームがデータの準備方法を完全にコントロールできる構造が必須です。

Q5. データを競合に渡すリスクはないのですか?

オープンAPIからパーソナルアクセストークンに移行し、全リクエストを評価することでリスクを管理できます。また、データを渡す際は「AIアウトプットをこちらにも返してもらう」と提案すると、競合は黙る傾向があります。

Q6. 使用量ベース課金で本当に収益が上がるのですか?

Filevineではマター/プロジェクト単位の使用量ベース課金を採用し、従来型より高収益を実現しています。顧客の使用状況に応じた柔軟な価格設定が可能になります。

Q7. AI非購入顧客への不販売は現実的ですか?

製品をAI前提で設計すれば自然な選択です。Filevineは「構築するすべてにAIが暗黙的に含まれている」と仮定しており、AI製品を買わない顧客には販売していません。


関連記事

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AIエージェントの基礎知識と活用方法

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AI時代のプロダクト開発戦略


参考リソース

  • 元動画:SaaStr Podcast - How to Go from SaaS to AI Native with Ryan Anderson
  • Filevine公式サイト
  • SaaStr Annual 2026

本記事はネクサフローのAI研究シリーズの一部です。

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目次

  • この記事でわかること
  • 基本情報
  • 登壇者プロフィール:Ryan Anderson(Filevine CEO)
  • Filevineの実績
  • 「AIを振りかける」は2026年に通用しない
  • エンジニアの誇りと現実のギャップ
  • 根本的な変革が必要な理由
  • 戦略1: Nothing is Sacred(何も神聖ではない)
  • 既存コードベースの大胆な破壊
  • 4x4意思決定マトリクス
  • 感情ではなくロジックで判断
  • 戦略2: Content to Context(コンテンツからコンテキストへ)
  • SaaSの価値転換
  • 映画Cluelessのクローゼット比喩
  • 「SaaSは死んだ」論への反論
  • 戦略3: Architecture Must Flip(アーキテクチャの転換)
  • 「AIを上から振りかける」の限界
  • 旧構造 vs 新構造
  • ML/AIチームへのコントロール権移譲
  • アーキテクチャ転換の実践ポイント
  • 戦略4: Hire AI Natives(AI人材の採用)
  • AI人材が「古いSaaS企業」を避ける理由
  • データと配布力で説得
  • 買収という選択肢:Parrot社の事例
  • AI人材獲得の実践ポイント
  • 戦略5: Rebrand with Intent(意図的なリブランド)
  • 単なる表面的変更ではない
  • ロゴ変更の意味
  • 従業員市場と顧客市場への二重のメッセージ
  • リブランドの実践ポイント
  • 戦略6: Obsess Over Usage(使用状況への執着)
  • 使用率で製品の良し悪しを判断
  • 監査ログの必須化
  • 具体的な成功事例
  • 使用状況追跡の実践ポイント
  • 戦略7: Leverage Your Data(データの活用)
  • データはSaaS企業の最大の優位性
  • API戦略の転換
  • AI競合との交渉術
  • 競合製品のコピー戦略
  • データ活用の実践ポイント
  • 戦略8: Price to Dominate(市場支配のための価格戦略)
  • SaaS企業の粗利優位性
  • ブレンド粗利の計算
  • 攻撃的価格設定の戦略的意味
  • 価格戦略の実践ポイント
  • 戦略9: Build Hard Things(難しいものを作る)
  • 新カテゴリー創造:LOIS
  • AI前提のインターフェース設計
  • 使用量ベース課金への移行
  • AI非購入顧客への不販売
  • 全チームの巻き込み
  • 実践ポイント
  • リーダーシップの在り方:不同意を恐れない
  • 同調性は役に立たない
  • 厳しい意思決定の必要性
  • まとめ:9つの戦略の振り返り
  • 主要ポイント
  • 実行の難しさと本質
  • 次のステップ
  • よくある質問(FAQ)
  • Q1. 既存のマイクロサービスは全て捨てるべきですか?
  • Q2. AIチームの買収は必須ですか?
  • Q3. AI単体企業との価格競争でどう勝つのですか?
  • Q4. AIを上から振りかけるだけではダメな理由は?
  • Q5. データを競合に渡すリスクはないのですか?
  • Q6. 使用量ベース課金で本当に収益が上がるのですか?
  • Q7. AI非購入顧客への不販売は現実的ですか?
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  • 参考リソース

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