ロイヤリティ率の設計パターン|固定・変動・ミニマムギャランティ
AIサマリー
ロイヤリティ率の3つの設計パターンを解説。MG(ミニマムギャランティ)の計算方法、段階的ロイヤリティの設計、ライセンサー・ライセンシー双方の視点を明らかにします。

ロイヤリティ率の設計は、IPライセンスビジネスの収益性を左右する重要な意思決定です。
固定、変動、ハイブリッド。3つのパターンにはそれぞれメリット・デメリットがあり、IP特性やビジネス目標に応じた選択が求められます。
本記事では、3つの主要パターンと、実務で使われるMG(ミニマムギャランティ)の設計方法を解説します。
この記事でわかること
- 3つの設計パターン: 固定・変動・ハイブリッドの特徴
- MG(ミニマムギャランティ): 計算方法と支払い構造
- 選択基準: ライセンサー・ライセンシー双方の視点
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| トピック | ロイヤリティ率の設計実務 |
| カテゴリ | プライシング戦略 |
| 難易度 | 中級 |
| 対象読者 | IPライセンス担当、事業開発 |
ロイヤリティ設計の3パターン
| パターン | 構造 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 固定ロイヤリティ | 一定額を支払い | 短期契約、テスト導入 |
| 変動ロイヤリティ | 売上の一定%を支払い | 成長期待のあるIP |
| ハイブリッド | MG + 売上連動 | 多くのライセンス契約 |
1. 固定ロイヤリティ
売上に関係なく、一定額を支払う方式です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | 契約期間中、定額を支払い |
| メリット | コスト予測が明確、交渉がシンプル |
| デメリット | 成功時のアップサイドがない(ライセンサー視点) |
| 適用場面 | 短期契約、小規模プロジェクト、テスト導入 |
具体例: 1年間のキャラクター使用権を**$50,000(約750万円)** で契約。売上がゼロでも1億円でも支払額は同じ。
2. 変動ロイヤリティ(売上連動)
売上の一定%を支払う方式です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | 売上(または利益)の◯%を四半期ごとに支払い |
| メリット | 成功時の利益を双方で享受、リスク分散 |
| デメリット | 売上低迷時の収益リスク(ライセンサー視点) |
| 適用場面 | 成長期待のあるIP、長期契約 |
具体例: 売上の8% をロイヤリティとして支払い。売上$100万なら$8万、売上$1,000万なら$80万。
3. ハイブリッド(MG + 変動)
MG(ミニマムギャランティ) と売上連動を組み合わせた方式です。業界で最も一般的なパターンです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | 最低保証額(MG)を前払い + 超過分は売上連動 |
| メリット | リスクとリターンのバランス、双方に安心感 |
| デメリット | 計算・交渉が複雑 |
| 適用場面 | 多くのライセンス契約で採用 |
具体例: MG $100,000(約1,500万円) + 売上の8%。売上$200万なら実績ロイヤリティ$16万 > MG$10万なので、$16万を支払い。
ミニマムギャランティ(MG)の設計
標準的な計算方法
MG(ミニマムギャランティ) は、ライセンシーがライセンサーに前払いする最低保証額です。
計算式:
MG = 予測売上 × ロイヤリティ率 × 50%
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 予測売上 | $200万 |
| ロイヤリティ率 | 5% |
| 係数 | 50% |
| MG | $5万(約750万円) |
出典: IMC Licensing - Guaranteed Minimum Royalties
支払い構造
MGは通常、2回に分けて支払われます。
| タイミング | 割合 | 内容 |
|---|---|---|
| 契約締結時 | 50% | アドバンス(前払い)として支払い |
| 納品時 | 50% | マスターファイル納品後に残金支払い |
重要ポイント: MGは返金不可(ノンリファンダブル) が原則です。売上が予測を下回っても、ライセンサーはMGを返還しません。
回収(リクープ)の仕組み
MGを支払った後、売上発生時のロイヤリティはどうなるのか。
MG回収(リクープ)のフロー- MG前払い: ライセンシーがMGを支払い
- 売上発生: 製品販売開始
- ロイヤリティ計上: 売上に応じてロイヤリティが累計
- 比較判定:
- 累計ロイヤリティ < MG → 追加支払いなし
- 累計ロイヤリティ > MG → 超過分をライセンサーに支払い
ゴールデンルール: ライセンシーはMGまたは実績ロイヤリティの高い方を支払います。
出典: IMC Licensing - Royalty Accounting
段階的ロイヤリティ(ティア制)
売上規模に応じてレートを変動させる方式も一般的です。
| 売上ティア | ロイヤリティ率 |
|---|---|
| 〜$100万 | 8% |
| $100万〜$500万 | 6% |
| $500万〜 | 5% |
目的
- 大量販売のインセンティブ: 売れるほどレートが下がり、利益率が向上
- ライセンシーの投資促進: マーケティング投資を積極化
- 長期関係の構築: 成功体験が次の契約につながる
ライセンサー vs ライセンシーの視点
契約交渉では、双方の利害を理解することが重要です。
| 観点 | ライセンサー | ライセンシー |
|---|---|---|
| 収益予測 | MG確保で最低収益を保証 | 変動のみでリスク低減したい |
| 成功時 | 高レートで利益最大化 | 低レートで利益確保したい |
| 失敗時 | MGで損失限定 | MGが重荷になる |
| 交渉力 | 人気IPで強気の条件 | 実績・規模でMG低減交渉 |
ライセンサーの優先事項
- MG確保: 最低限の収益を保証
- 品質管理: ブランド価値の維持
- レポーティング: 売上の透明性確保
ライセンシーの優先事項
- MG低減: 初期投資リスクを抑制
- 権利範囲拡大: 多様な展開を可能に
- 独占権獲得: 競合排除でROI向上
FAQ
Q. MGの標準的な水準は?
A. 予測売上の25-50% が一般的です。新規IPは低め(25%)、人気IPは高め(50%以上)に設定されます。
Q. ロイヤリティレポートの頻度は?
A. 四半期ごとが標準です。契約で報告形式・提出期限を明記し、監査権も設定するのが一般的です。
Q. MGは返金されるか?
A. 通常、MGは返金不可です。ただし、次期契約に繰り越す(ローリングMG)条件を交渉するケースもあります。
Q. 段階的ロイヤリティの計算方法は?
A. 累進課税方式が一般的です。例えば売上$150万の場合、$100万までは8%、超過分$50万は6%で計算します。
まとめ
主要ポイント
- 3パターン理解: 固定・変動・ハイブリッドの特性と適用場面
- MG設計: 予測売上の50%が計算の目安
- 双方視点: リスクとリターンのバランスを意識した交渉
次のステップ
- 自社のリスク許容度を明確にする
- 予測売上に基づいてMGを試算する
- 契約条件のチェックリストを作成する
参考リソース
- IMC Licensing - Guaranteed Minimum Royalties
- IMC Licensing - Royalty Accounting Basics
- IMC Licensing - Royalty Rate Guide
IPライセンスプライシング シリーズ
基礎を理解する
事例に学ぶ
実務に活かす
本記事はIPライセンスプライシングシリーズの一部です。
この記事の著者

猪良 幸太郎
東京理科大学卒業後、国内独立系コンサルティングファームに入社し、IT・業務コンサルタント兼マネージャーとして業務最適化やシステム導入プロジェクトを経験。その後プライシングスタジオに入社し、執行役員兼ビジネス本部長として顧客のプライシング変革支援をリードする傍ら、自社の新規事業立ち上げの推進にも従事。


