競合価格の調査方法|情報収集からベンチマーク作成までの手順
AIサマリー
競合の価格をどう調べ、どう活用するか?公開情報の収集、見積もり取得、業界レポート活用、顧客ヒアリングの4つの手法と、ベンチマーク作成から継続モニタリングまでの実践手順を解説します。

競合の価格を知ることは、自社の価格設定の基準点を定める上で重要です。しかし、特にB2Bやエンタープライズ向け製品では、価格が非公開のケースも多く、調査には工夫が必要です。
本記事では、公開情報から非公開情報まで4つの情報収集手法と、それらを統合してベンチマークを作成し、自社の価格戦略に活用する実践的な手順を解説します。
この記事でわかること
- 4つの情報収集手法: 公開情報、見積もり取得、業界レポート、顧客ヒアリング
- ベンチマークの作成方法: 価格テーブルと価値対価格マッピングの作り方
- 継続的モニタリング体制: 監視頻度の設計と価格変更アラートの仕組み
- 競合情報の活用法: 価格交渉と自社価格改定の判断材料への転換
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| トピック | 競合価格の調査と活用 |
| カテゴリ | プライシング戦略 |
| 難易度 | 中級 |
| 対象読者 | プライシング担当、事業企画担当 |
競合価格調査の目的
競合価格を調査する目的は、単に「相手が安いか高いか」を知ることではありません。
1. 市場ポジショニングの確認
自社の価格が市場内でどの位置にあるかを把握します。
| 質問 | 把握できること |
|---|---|
| 競合と比べて高いか? | プレミアム戦略の妥当性 |
| 競合と比べて安いか? | コストリーダーシップの実現度 |
| 同等価格の競合は誰か? | 直接競合の特定 |
2. 価格設定の参考情報
新製品や新機能の価格を決める際の参考値として活用します。
例: 既存SaaS製品が月額$99〜$299の価格帯に集中している場合、自社も同じレンジ内で設定するか、差別化要素を訴求してプレミアム価格($499〜)を設定するかを判断します。
3. 競合動向のモニタリング
競合が値上げ・値下げした際に、自社も追随すべきか判断するための情報源となります。
実例: SaaStrの2025年分析によると、Salesforceの成長の72%が値上げによるものでした。競合が値上げした際、自社もタイミングを合わせて値上げすることで、市場全体の価格水準を維持できます。
情報収集の4つの手法
競合価格の調査には、複数の手法を組み合わせることが重要です。単一の情報源では不完全なデータしか得られません。
ベンチマーク作成フロー手法1: 公開情報の収集
最も基本的で低コストな手法です。
Webサイトの価格ページ
多くのB2C製品、一部のB2B SaaSは価格を公開しています。
確認すべきポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プラン構成 | Free/Starter/Pro/Enterprise等の階層 |
| 価格帯 | 月額/年額、年払い割引率 |
| 課金単位 | ユーザー/シート/データ量/API呼び出し |
| 機能制限 | 各プランに含まれる・含まれない機能 |
| 無料トライアル | トライアル期間、クレジットカード要否 |
過去の価格変遷を調べる
Wayback Machineを使えば、競合のプライシングページの履歴を確認できます。
- 値上げ・値下げのタイミング
- プラン構成の変更
- 廃止されたプランの発見
プレスリリース
価格変更や新プランの発表は、プレスリリースで公開されることがあります。
情報源
手法2: 見積もり取得
公開されていない価格を調べる最も直接的な方法です。
実施方法
- 典型的な顧客プロファイルを作成: 業種、規模、利用想定を統一
- デモ・見積もりをリクエスト: 複数の競合で同じ条件で依頼
- 得られた情報を記録: 価格、割引条件、契約条件
注意点
企業名や所属を偽ることは避けるべきです。実際に購入検討中の場合や、パートナー企業経由での情報収集は問題ありません。
ミステリーショッピングの倫理的境界
| やっていいこと | やってはいけないこと |
|---|---|
| 実名・実企業名でデモをリクエスト | 偽名・架空企業でなりすます |
| 購入検討中の情報収集 | 購入意図なく情報のみ引き出す |
| パートナー経由での情報入手 | 競合社員に報酬を払って情報を得る |
手法3: 業界レポート活用
第三者が調査・公開している情報を活用します。
価格比較サイト
| サイト | 特徴 |
|---|---|
| G2 | ユーザーレビュー、価格評価 |
| Capterra | 機能比較、価格帯フィルター |
| TrustRadius | 詳細な製品比較 |
調査会社レポート
| 調査会社 | レポート内容 |
|---|---|
| Gartner | Magic Quadrant、価格帯分析 |
| Forrester | Wave Report、市場分析 |
| IDC | 市場シェア、ARPU推定 |
手法4: 顧客からのヒアリング
商談プロセスで得られる情報は、信頼性が高いです。
Win/Loss分析
受注・失注した案件で、顧客がどの競合と比較したかをヒアリングします。
| 質問例 | 得られる情報 |
|---|---|
| 「他にどの製品を検討されましたか?」 | 競合リスト |
| 「価格はどのように比較されましたか?」 | 価格レンジ |
| 「当社を選んだ/選ばなかった理由は?」 | 価格以外の要素 |
CRMへの記録項目
営業が商談中に得た競合情報を組織で共有する仕組みが重要です。
- 競合製品名
- 提示価格(わかる範囲で)
- 競合の強み・弱み
- 勝因/敗因
ベンチマークの作成
収集した情報を整理し、自社と競合を比較するベンチマークを作成します。
1. 比較軸の設計
何を基準に比較するかを明確にします。
| 比較軸 | 例 |
|---|---|
| 機能 | 基本機能、高度な機能、API連携 |
| サポート | チャット、電話、専任担当者 |
| 価格 | エントリー価格、標準価格、エンタープライズ価格 |
| 契約条件 | 最低契約期間、解約条件、自動更新 |
2. 価格テーブルの整理
スプレッドシートで管理する場合の項目です。
基本項目
| 項目 | 自社 | 競合A | 競合B | 競合C |
|---|---|---|---|---|
| エントリープラン価格 | ||||
| Proプラン価格 | ||||
| Enterprise価格 | ||||
| 課金単位 | ||||
| 年払い割引 | ||||
| 無料トライアル期間 | ||||
| 最低契約期間 |
分析用項目
| 項目 | 自社 | 競合A | 競合B | 競合C |
|---|---|---|---|---|
| 自社比(高い/同等/安い) | - | |||
| ポジション | ||||
| 差別化要素 | ||||
| 最終更新日 | ||||
| 情報源 |
3. 価値対価格マッピング
競合を「価格(縦軸)」と「価値(横軸)」の2軸でマッピングします。
価値の測定方法
- 機能数のカウント
- ユーザーレビューの評価点(G2、Capterra等)
- 独自の価値スコアリング(重要機能に重み付け)
活用法
| ポジション | 解釈 | 戦略例 |
|---|---|---|
| 高価値・高価格 | プレミアムポジション | 差別化を強化し維持 |
| 高価値・低価格 | バリューリーダー | 値上げ余地あり |
| 低価値・高価格 | オーバープライシング | 価値訴求の強化または値下げ検討 |
| 低価値・低価格 | コストリーダー | 機能追加でバリューリーダーへ |
継続的モニタリング
一度調べて終わりではありません。継続的な監視体制が必要です。
監視頻度の設計
| 活動 | 推奨頻度 | 担当者 |
|---|---|---|
| Google Alerts確認 | 毎日(自動) | マーケティング |
| 価格ページスナップショット | 週次 | プライシング担当 |
| 競合マトリクス更新 | 月次 | プライシング担当/事業企画 |
| 深掘り分析 | 四半期 | プロダクト/経営層 |
| 戦略レビュー | 半期 | 経営層 |
価格変更アラートの仕組み
無料ツール
| ツール | 用途 | コスト |
|---|---|---|
| Visualping | Webページ変更モニタリング | 無料〜$30/月 |
| Google Alerts | ニュース監視 | 無料 |
有料ツール
| ツール | 年間コスト | 特徴 |
|---|---|---|
| Kompyte | 約$20,000 | AI駆動、セットアップ7-8週 |
| Klue | $16,000-$45,750 | CRM連携、バトルカード配信 |
| Crayon | $12,500-$47,000 | 人的アナリスト付き |
詳細な比較は「競合価格の調査方法:6つの情報源とツール活用の実践ガイド」を参照してください。
競合情報の活用
収集・分析した競合情報を、実際の価格戦略に活用します。
1. 価格交渉での活用
顧客との価格交渉時、競合価格を根拠として提示できます。
例: 営業シーン
「競合A社は月額$299ですが、当社は$199で同等の機能を提供しています。年間で$1,200(約18万円)のコスト削減になります。」
注意点
競合を直接批判するのではなく、自社の価値を強調する形で使います。
2. 自社価格改定の判断材料
競合が値上げした場合、自社も追随するか判断する材料となります。
値上げ追随の判断基準
| 条件 | 判断 |
|---|---|
| 競合の多くが値上げ | 追随を検討(市場全体の動き) |
| 競合の一部のみが値上げ | 静観(様子見) |
| 競合が値下げ | 差別化要素を強化して維持 |
| 自社の価値が競合より高い | 値上げ余地あり |
値上げのタイミング
- 競合の値上げから3-6か月後(市場が慣れた頃)
- 新機能リリース時(価値増加を訴求)
- 契約更新時(既存顧客への影響を最小化)
3. 新製品価格の設定
新製品や新機能を追加する際、競合の価格帯を参考にします。
例: 新プランの価格設定
競合の価格帯が以下の場合:
| 競合 | Basicプラン | Proプラン | Enterpriseプラン |
|---|---|---|---|
| 競合A | $99 | $299 | 要問い合わせ |
| 競合B | $149 | $399 | 要問い合わせ |
| 競合C | $79 | $249 | 要問い合わせ |
自社の新Proプランは、$249〜$349の範囲内で設定するのが妥当です。差別化要素があれば上限側、機能が競合より少ない場合は下限側を選びます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 非公開価格の競合が多い場合、どうすべきか?
複数の手法を組み合わせます。
- 見積もり取得: デモリクエストで見積もりを取得
- 顧客ヒアリング: Win/Loss分析で競合価格を聞く
- 業界レポート: Gartner、Forresterの価格分析レポート
- 決算資料: 上場企業ならARPU(顧客単価)を推定
単一の手法で完全な情報は得られません。複数のソースを「三角測量」して信頼性を高めます。
Q2. 競合が価格を頻繁に変更する場合は?
2025年はSaaS価格変更が頻発しています。対応策として以下を組み合わせます。
- Wayback Machine: 定期スナップショット
- Visualping: 変更アラート設定
- 週次レビュー: 価格ページを手動確認
Q3. 競合価格を知っても、それを基準にすべきではないのでは?
その通りです。競合価格はあくまで「参考情報」です。
競合ベースプライシングの記事で解説していますが、競合価格を唯一の基準にすると以下のリスクがあります。
- 価格競争に陥る
- 自社の価値を過小評価する
- 市場全体が低価格に収束する
競合価格は「市場ポジショニングの確認」と「顧客期待値の把握」のために使い、最終的な価格は価値ベースまたはコストベースで決定します。
Q4. どれくらいの頻度で競合価格を調査すべきか?
市場の変化速度によりますが、以下が目安です。
| 市場の特性 | 推奨頻度 |
|---|---|
| 安定市場(変化が少ない) | 四半期 |
| 成長市場(新規参入が多い) | 月次 |
| 変動市場(価格変更が頻繁) | 週次 |
Q5. 価格調査にどれくらいの予算をかけるべきか?
企業規模と営業チームのサイズによりますが、以下が目安です。
| 企業規模 | 営業チーム | 推奨予算 | ツール例 |
|---|---|---|---|
| スタートアップ | 10人未満 | $500以下/年 | 無料ツール+スプレッドシート |
| 中小企業 | 10-50人 | $5,000-$20,000/年 | Kompyte |
| 中堅企業 | 50-100人 | $20,000-$50,000/年 | Klue |
| 大企業 | 100人以上 | $50,000以上/年 | Crayon |
まとめ
主要ポイント
- 4つの情報源を組み合わせる: 公開情報、見積もり取得、業界レポート、顧客ヒアリング
- ベンチマークを作成する: 価格テーブルと価値対価格マッピングで自社のポジションを可視化
- 継続的にモニタリングする: 週次〜半期のリズムで競合動向を追跡
- 価格戦略に活用する: 価格交渉、自社改定判断、新製品価格設定の材料として使う
次のステップ
- 主要競合3社の公開価格を今日中に調査する
- 価格テーブルのスプレッドシートを作成する
- 無料ツール(Visualping、Google Alerts)を設定する
- 営業チームと「競合情報の共有ルール」を決める
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プライシングシリーズ
- 競合ベースプライシング入門 - 競合価格を参考にする手法の概要
- 価格戦略とは?3つの軸で理解する戦略選択フレームワーク - 3つの価格戦略(価値・コスト・競合)の体系的理解
- 価格3手法の比較と使い分け - 価値ベース、コストベース、競合ベースの選び方
参考リソース
- Wayback Machine - 過去の価格ページを確認
- G2 - 価格比較・ユーザーレビュー
- Visualping - Webページ変更モニタリング
- Kompyte - 競合インテリジェンスツール
本記事はネクサフローのプライシング研究シリーズの一部です。
