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対談・インタビュー

SaaStr AI London AMAを営業運用メモとして読む

10分で読める|2026/04/15|
SaaSAIマーケティング

この記事の要約

Jason LemkinのSaaStr AI London AMAを、営業運用の読み筋として整理。インバウンド、AI SDR、製品理解、予算配分、moatの縮み方を、買い手の優先課題に入るための実務メモとして解説します。

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B!

Jason Lemkin の SaaStr AI London AMA は、「AI で営業が終わる」という話ではありません。むしろ、買い手の優先課題に入るには、営業・マーケ・プロダクト・導入支援をひとつの運用として束ねる必要がある、という実務メモとして読むのが自然です。

本稿では、インバウンド、アウトバウンド、AI SDR、製品理解、予算配分、moat の縮み方を、営業組織が明日から見直せる運用単位に分けて整理します。数字やモデル名は後半の snapshot に寄せ、ここでは変わりにくい判断軸から入ります。

“

元動画: AI and the Death of the 2021 Sales Playbook with SaaStr CEO and Founder Jason Lemkin

本稿の読み方

  • AMA 内の発言は、SaaStr 公式記事と動画をもとに要点化しています
  • 金額や企業成長の数値は、Lemkin 氏が AMA / 公式記事で示した時点情報として扱います
  • 為替換算はせず、ドル建てのまま判断材料として残します

この記事でわかること

  1. インバウンドやアウトバウンドを捨てる前に、買い手の優先課題に入っているかを点検する観点
  2. AI SDR を買っただけで終わらせず、人間の勝ち筋、データ接続、日次レビューへ落とす考え方
  3. moat が短くなる環境で、機能差だけに頼らず、導入体験と顧客理解を積み上げる筋道

基本情報

項目内容
トピックSaaS営業運用、AI時代のGTM
カテゴリ対談解説
難易度中級~上級
対象読者SaaS企業経営者、営業責任者、マーケター

先に読むべき結論

AMA の中心は、「戦術が壊れた」という嘆きではなく、「同じ戦術でも、勝てる場所と運用密度が変わった」という指摘です。ウェビナー、インバウンド、アウトバウンド、プロダクト主導の導線はまだ使えます。ただし、買い手が抱える上位の課題に刺さらないものは、AI 予算や値上げのしわ寄せで外されやすくなります。

AI SDR も同じです。ツール名より先に、人間の営業が勝てるスクリプト、CRM やデータウェアハウスの接続、毎日のレビュー、失敗した返信の修正が必要です。Lemkin 氏の論点は「AI で人が不要になる」ではなく、「人間側の勝ち筋を言語化できない組織ほど、AI に丸投げして失敗する」です。

moat の話も、単にスピードだけを煽るものではありません。機能が真似されやすいなら、顧客の業務に深く入る導入体験、プロダクトを説明できる営業、使用ログから改善する仕組みが重要になります。


インバウンドは死んだのではなく、テーマ配分が変わった

SaaStr 公式記事の主張は、インバウンドが終わったという話ではありません。SaaStr 自身も、SEO が弱くなった一方で、AI GTM 関連コンテンツへの需要が伸びたと説明しています。

ここから読み取るべき実務上の論点は、チャネルを消すかどうかではなく、どのテーマに時間と制作力を配分するかです。従来の SaaS 運営論だけでは読まれにくくなっても、AI エージェント、GTM、導入運用のような強い関心領域では同じチャネルが動きます。

観点旧来の読み方AMA からの読み替え
ウェビナー集客施策高関心テーマで信頼を深める場
インバウンドSEO 流入の量需要が強いテーマへ編集資源を寄せる運用
アウトバウンド量を増やす営業買い手の上位課題に刺さる相手だけへ絞る営業
コンテンツ検索キーワードの量産顧客が社内で予算を取りに行ける材料を渡す資産

ポイント: 「チャネルが終わった」と決めつける前に、買い手の関心が移った場所へ自社のテーマを寄せられているかを確認します。


AI B2B 企業の急成長は、playbook の否定ではない

SaaStr 公式記事では、AI 開発ツール、音声生成ツール、プレゼン生成ツールなどが、AI 領域で急速に伸びている例として紹介されています。重要なのは、これらの企業が「営業をやめた」わけではない点です。むしろ、B2B SaaS の経験者が、より強い需要をさばくために同じ基本動作を使っている、という読み筋です。

旧稿では個別企業の成長数字が本文の中心に置かれていました。しかし、その数字は動きやすく、記事の主張を古く見せます。本稿では、数字そのものよりも次の観点を残します。

  • 需要が集中する市場では、同じ demo / follow-up / onboarding でも処理量が変わる
  • inbound が多いほど、優先順位付け、スコアリング、初回価値の設計が重要になる
  • B2B の経験は消えず、AI プロダクトを買い手の業務へ接続する力として再利用される
AI B2B企業の成長曲線AI B2B企業の成長曲線

予算再配分の論点

Lemkin 氏は、企業ソフトウェア予算が伸びても、すべてのベンダーが恩恵を受けるわけではないと説明しています。既存ベンダーの値上げや AI 関連の新規予算が優先されると、nice-to-have なツールは削られやすくなります。

企業ソフトウェア予算15%成長の内訳企業ソフトウェア予算15%成長の内訳

営業側の問いは、「市場全体に予算があるか」ではなく、「この買い手の上位課題に自社が入っているか」です。


AI SDRは「買う」より「育てる」が主戦場

SaaStr 公式記事では、AI SDR / BDR ツールの失敗理由として、買っただけで営業チームや代理店に渡してしまうパターンが挙げられています。Lemkin 氏の主張はかなり実務的です。人間で売れていないものを、AI が勝手に売れるようにはしてくれません。

実装の5ステップ

  1. 人間の営業で勝てている会話、メール、反論処理を集める
  2. その勝ち筋をプロンプトや指示書へ落とす
  3. Salesforce、HubSpot、Snowflake などのデータ源へ接続する
  4. 毎日メールや返信を読み、誤りを直す
  5. 1ヶ月ほど運用し、勝ち筋と失敗例を継続的に反映する
AI SDR正しい実装フローAI SDR正しい実装フロー

失敗パターン

  • リードが足りない状態で、AI SDR を買えば売上が増えると考える
  • アウトバウンド経験がないまま、AI が戦略まで補ってくれると期待する
  • CRM や商談データへ接続せず、汎用メール生成ツールとして使う
  • 送信内容と返信を読まず、学習する機会を捨てる

AI SDR は、営業チームの代替品というより、営業チームの勝ち筋を増幅する運用レイヤーです。勝ち筋が曖昧なまま導入すると、誤った動作も増幅されます。


価値ベース営業は、製品理解なしでは成立しにくい

Lemkin 氏は、AI 時代の営業では「人柄」や「一般的な価値訴求」だけでは足りないと述べています。買い手はすでに製品を触り、技術的な制約や実装上の不安を持った状態で商談に来ます。そこで価値を出せるのは、プロダクトの機能、制限、回避策、導入手順を具体的に語れる人です。

従来の営業で評価されがちだった力AI 時代により重くなる力
関係構築顧客の業務に合わせた導入設計
汎用的な ROI トーク実データ、実ワークフロー、短い検証で示す価値
機能の説明機能の限界、回避策、他システムとの接続の説明
クロージング導入後に成果が出るまでのレビュー設計

プロダクトに詳しいソリューションアーキテクトが商談の主役になる話は、この流れをよく表しています。営業は価値を語るだけではなく、価値が出るところまで連れて行く役割へ寄っています。


moatは「年単位」から「月単位」へ縮みやすい

SaaStr 公式記事では、EchoSign 時代にはスタートアップに追随されるまで 12〜18ヶ月ほどあった一方、AI で機能を再現しやすくなった後は優位が短くなっている、という趣旨が語られています。旧稿の「2週間で消える」という表現は強いため、本稿では Lemkin 氏の例示として残し、一般論としては「月単位に縮みやすい」と扱います。

競争優位の寿命の変化競争優位の寿命の変化

moat が短くなるなら、差別化は機能単体から、顧客接点全体へ移ります。

  • 導入時に買い手の業務へどれだけ深く入れるか
  • 使用ログから改善を続けられるか
  • 顧客が社内で予算を取り続けるだけの成果資料を出せるか
  • 営業、CS、プロダクトが同じフィードバックを見ているか

技術的な優位だけで守るのではなく、運用と顧客理解を積み上げることが重要です。


Vibe Codingは、作りたいものが見えている時に強い

Lemkin 氏は、Replit を使って短期間で複数のアプリを作った経験を紹介しています。ここでの示唆は、「誰でも何でも作れる」という万能論ではありません。作りたいもの、既存の参考形、入力と出力が明確なワークフローがあるほど、AI 開発ツールは速くなります。

Jason LemkinのReplit開発実績Jason LemkinのReplit開発実績
向いている場面注意が必要な場面
既存業務の小さな自動化ゼロからの事業仮説づくり
明確な社内ツール複雑な権限や監査を含む基幹機能
prototype / demo本番運用のセキュリティ設計
既存アプリの近い再現前例のない体験設計

営業やマーケの現場では、商談準備、FAQ、社内申請、簡易スコアリングなど、入力と出力が明確な作業から試すのが現実的です。


アウトバウンドは、買い手の上位課題に入った時だけ強い

Lemkin 氏は、アウトバウンドそのものを否定していません。ただし、誰にでも大量に送ればよいという話でもありません。買い手の「上位3つの課題」に入っているなら、cold email でも読まれる余地があります。入っていないなら、どれだけ件数を増やしても反応は弱くなります。

アウトバウンド営業成功の条件アウトバウンド営業成功の条件

営業チームが点検すべき問いは次の通りです。

  1. この買い手は、どの業務で今日困っているのか
  2. その困りごとは、部門長が裁量予算で解くほど大きいのか
  3. 自社製品は、既存ツールを置き換えるほど明確な価値を示せるのか
  4. 初回接触で、相手の業務文脈に合わせた具体案を出せているのか

重要: AI でメール量を増やすほど、弱い仮説も増幅されます。量を増やす前に、買い手の上位課題に入る言葉になっているかを確認します。


AGIでSaaSは終わるのか

Lemkin 氏は、複雑な B2B ソフトウェアが一気に置き換わるとは見ていません。CRM、ERP、業務システムには、データ、権限、例外処理、監査、社内政治が絡みます。一方で、周辺機能や小さなワークフローは削り取られます。

この論点は、SaaS 企業にとって二つの問いに分かれます。

  • 自社の機能は、AI ツールで簡単に再現される単機能なのか
  • 再現されにくい顧客データ、業務文脈、導入体験、運用ログを積み上げているか

AGI という大きな言葉よりも、顧客が自分で小さな代替物を作れるようになった時、自社がどこで価値を出すのかを考える方が実務的です。


実務チェックリスト

インバウンド / コンテンツ

  • AI や GTM への関心を、単なる buzzword ではなく顧客の業務課題に接続している
  • 検索流入だけでなく、既存顧客・商談中の買い手・社内共有で読まれる記事を作っている
  • 古いテーマが弱くなった時、別の需要領域へ編集資源を移せる

AI SDR / Agent 導入

  • 人間で勝てている営業メールと商談パターンがある
  • 送信内容と返信を毎日レビューする担当者がいる
  • CRM / MA / DWH などのデータ接続を設計している
  • 失敗したメールを学習データとして残している

営業組織

  • 営業担当者が、機能だけでなく制限や回避策も説明できる
  • ソリューションアーキテクトや導入担当と商談情報を共有している
  • 買い手の上位課題に入る言葉で outbound を組み立てている
  • 導入後の成果を次の商談資料へ戻している

FAQ

Q1. インバウンドマーケティングは終わったのですか?

終わったというより、需要のあるテーマが変わっています。SaaStr の例では、SEO が弱くなった一方で、AI GTM への関心が traffic を押し上げたと説明されています。チャネルの否定ではなく、テーマ配分の見直しとして読むべきです。

Q2. AI SDRツールを買えば、営業成果は上がりますか?

買うだけでは難しいです。人間の営業で勝てるメッセージ、データ接続、毎日のレビュー、返信内容の修正が必要です。AI SDR は勝ち筋を増幅しますが、勝ち筋そのものを自動で発見してくれるわけではありません。

Q3. 営業担当者に必要なスキルは何ですか?

製品理解です。機能、制限、導入手順、他システムとの接続、顧客側の業務制約まで語れる営業が強くなります。人間関係だけでは、買い手がすでに製品を試している商談で価値を出しにくくなります。

Q4. 競合がすぐに似た機能を出す場合、どう守ればよいですか?

機能だけで守るのではなく、導入体験、顧客データ、使用ログ、業務文脈、成果資料まで含めて守ります。コピーされる速度が上がるほど、顧客の仕事にどれだけ深く入れているかが差になります。

Q5. アウトバウンドはまだ使えますか?

使えます。ただし、買い手の上位課題に入っている時だけです。AI で件数を増やすほど、弱い仮説も増幅されます。まずは、相手が今日解きたい課題と、自社が出せる具体的な価値を合わせる必要があります。

Q6. Vibe CodingはSaaSを置き換えますか?

一部の小さな機能や社内ワークフローは置き換えられます。複雑な B2B ソフトウェア全体を一気に置き換えるというより、周辺作業が削られると見た方が実務的です。


まとめ

SaaStr AI London AMA の要点は、「営業が終わる」ではなく、「営業運用の密度が上がる」です。

  1. インバウンドやアウトバウンドは残るが、買い手の優先課題に入るテーマ設計が必要
  2. AI SDR は、ツール購入よりも人間の勝ち筋、データ接続、日次レビューが重要
  3. 営業担当者は、価値を語るだけでなく、製品と導入を深く理解する必要がある
  4. moat が短くなるほど、機能差だけでなく、導入体験と顧客理解が差になる
  5. AI 開発ツールは、明確なワークフローから使うと効果が出やすい

「AI で営業が置き換わるか」よりも、「AI を使う前に、自社の営業運用をどこまで言語化できているか」を問う記事として読むのがよいでしょう。


Dated Snapshot: 一次情報で確認した時点情報

論点一次情報本稿での扱い
AMA の文脈SaaStr 公式記事は「SaaStr AI London 2025 AMA」に基づく記事として公開。YouTube の動画タイトルは "AI and the Death of the 2021 Sales Playbook..."冒頭では年次イベント記事ではなく、営業運用メモとして読む
Claude 4Anthropic は Claude Opus 4 / Claude Sonnet 4 を 2025-05-22 に発表旧稿の「2024年初頭に Claude 4 登場」は採用しない。Lemkin 氏の発言は、AMA 時点の体感として扱う
SaaStr の読者動向SaaStr 公式記事では、SEO が下がる一方で総 traffic が伸びたという自社例が紹介されている「インバウンド終了」の一般論ではなく、テーマ配分の見直しとして扱う
AI B2B 企業の成長SaaStr 公式記事では Vercel、Replit、Bolt、11 Labs、Gamma などが例示されている動く企業数値は snapshot とし、普遍的な示唆は「需要が集中する市場では同じ play でも処理量が変わる」と整理する
SaaStrトラフィック推移(2023-2025)SaaStrトラフィック推移(2023-2025)

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SaaStrが明かす:20以上のAIエージェント導入で6万通の営業メールを自動化した方法


参考リソース

  • SaaStr公式記事: No, Inbound Isn’t Dead. The GTM Playbook Isn’t Broken. But Your Moats Are Shrinking to Months.
  • YouTube: AI and the Death of the 2021 Sales Playbook with SaaStr CEO and Founder Jason Lemkin
  • Anthropic: Introducing Claude 4
  • SaaStr.com

本記事はネクサフローのAI研究シリーズの一部です。

この記事の著者

中村 知良

中村 知良

代表取締役

早稲田大学卒業後、ソフトバンク株式会社にてAI活用やCEO直下案件のプロジェクトマネージャーに従事。その後、不動産スタートアップPit in株式会社の創業、他スタートアップでの業務改善・データ活用を経験後、2023年10月、株式会社ネクサフローを創業し代表取締役CEO就任。

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