Snowflake徹底解説|史上最大IPO・ARR$4.7B・Cortex AIで挑むデータ×AI革命【2026年最新】
この記事の要約
Snowflake(スノーフレーク)はFY2026売上$4.68Bを達成したData Cloud企業。Cortex AIエージェント・Snowflake Intelligence・Observe買収でAIプラットフォームへ進化。Databricksとの$5B ARR競争、Sridhar Ramaswamy CEOのAI戦略まで2026年最新データで徹底分析。
Snowflakeとは?(30秒で理解)
Snowflake(スノーフレーク)は、クラウド上で動作するデータ&AIプラットフォームです。企業の膨大なデータを一元管理し、SQLで高速に分析できます。最大の特徴は「ストレージとコンピュートの分離」——使った分だけ課金される従量課金モデルで、AWS・Azure・GCPすべてで稼働。FY2026売上**$4.68B(約7,020億円)、顧客13,300社超**。Cortex AIとSnowflake Intelligenceにより、データウェアハウスからAIプラットフォームへの進化を加速中。
2020年9月16日、ウォール街に衝撃が走りました。
「Buffettがテック企業に投資した」——この一報は、投資の世界では「あり得ない」ニュースでした。
Warren Buffettは、テクノロジー企業への投資を長年避けてきた人物です。Apple以外のテックIPOには、一度も参加したことがありませんでした。Ford Motor Company以来のIPO投資。それがテック企業だというのです。
しかし、この日は違いました。Berkshire Hathawayは$250M(約375億円)を投じ、ソフトウェア史上最大のIPOに参加します。
初日の株価は公開価格の2倍以上に跳ね上がり、時価総額は$70B(約10.5兆円)に到達。しかしこの「大成功」の裏で、創業者たちは複雑な感情を抱いていました。
なぜBuffettは「テックIPOには投資しない」という自身のルールを破ったのか?
そして、なぜ創業者たちは「沈む気持ち」だったのか?
本記事は、その答えを探る旅です。
本記事の表記について
- 金額の日本円換算は1ドル=150円で計算しています
- 下線付きの用語にカーソルを合わせると解説が表示されます
この記事でわかること
- Snowflakeの技術革新: ストレージとコンピュートの分離がなぜ「革命」だったのか
- 創業者の物語: Oracle「王冠の宝石」と呼ばれたエリート建築家2人が、なぜ17年間のキャリアを捨てたのか
- IPOの舞台裏: $4.88B(約7,320億円)をテーブルに残した「史上最大の機会損失」
- Frank Slootmanの功罪: 「極度に対決的」なCEOからSridhar RamaswamyへのAI時代のバトンタッチ
- 2025-2026年の進化: Cortex AI・Snowflake Intelligence・Observe買収$1Bの全貌
- Databricksとの$5B ARR競争: 同規模の売上で評価額2倍の差がつく理由
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | Snowflake Inc. |
| 設立年 | 2012年 |
| 本社 | ボーズマン、モンタナ州 |
| CEO | Sridhar Ramaswamy(2024年2月〜) |
| 従業員数 | 約7,400名 |
| 時価総額 | 約$62B(約9.3兆円)(NYSE: SNOW、2026年3月時点) |
| FY2026売上 | $4.68B(約7,020億円) |
| 顧客数 | 13,300社超(FY2026 Q4時点) |
| NRR | 125%(FY2026) |
| RPO | $9.77B(約1.47兆円、前年比+42%) |
Snowflakeの全体像Snowflakeとは?Data Cloudの全貌
従来のData Warehouseは「行き止まり」だった
2012年以前、企業のデータ分析には大きな壁がありました。
オンプレミスのData Warehouse(データウェアハウス:企業の統合データ保管庫)。この仕組みには、4つの致命的な課題がありました。
- スケーラビリティの限界: データ量が増えたら、ハードウェアを買い足す必要がある
- 固定コストの呪い: 夜間や週末、誰も使わない時間帯でもサーバーは稼働し続ける
- データサイロ: 部門間でのデータ共有は、毎回IT部門への依頼が必要
- バッチ処理の遅さ: リアルタイム分析は夢のまた夢
「データは新しい石油だ」と言われ始めた時代。しかし、その石油を精製する設備が追いついていなかったのです。
Snowflakeの革命:「分離」というシンプルな発想
Snowflakeの創業者たちは、問題の本質を見抜きました。
「ストレージとコンピュートを分離すればいい」
この発想は、当時としては異端でした。従来のデータベースでは、データを保存する場所(ストレージ)と、データを処理する場所(コンピュート)は一体化しているのが常識だったからです。
Snowflakeは、この常識を覆します。
┌─────────────────────────────────────────────┐
│ Snowflake Architecture │
├─────────────────────────────────────────────┤
│ ┌─────────────────────────────────────┐ │
│ │ Cloud Services Layer │ │
│ │ (認証、最適化、メタデータ、セキュリティ) │ │
│ └─────────────────────────────────────┘ │
│ ┌─────────────────────────────────────┐ │
│ │ Virtual Warehouse (Compute) │ │
│ │ (独立してスケール可能) │ │
│ └─────────────────────────────────────┘ │
│ ┌─────────────────────────────────────┐ │
│ │ Storage Layer │ │
│ │ (AWS S3 / Azure Blob / GCS) │ │
│ └─────────────────────────────────────┘ │
└─────────────────────────────────────────────┘
この分離がもたらした恩恵:
- 使った分だけ課金: コンピュートは秒単位で起動・停止可能。使わない時間は$0
- 無限のスケーラビリティ: ストレージはクラウドの限界まで拡張可能
- データ共有の民主化: 同じデータに複数のチームが同時アクセス可能
「シンプルなアイデアほど強い」——Snowflakeの成功は、この原則を証明しています。
主要機能
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| Data Warehouse | SQLベースのアナリティクス |
| Data Lake | 非構造化データの保存・処理 |
| Data Sharing | 組織間でのデータ共有・マーケットプレイス |
| Snowpark | Python/Java/Scalaでの開発(SQLだけでなくプログラミング言語でデータ処理) |
| Cortex AI | 生成AI機能、LLM Functions |
なぜこのような「革命」が可能だったのか?その答えは、創業者たちの異常な経歴にあります。
創業者の物語:Oracleの「王冠の宝石」たちの反逆
「エリート中のエリート」の17年
Benoit DagevilleとThierry Cruanes。
この2人は、データベース業界の巨人・Oracleで17年間を共に過ごした同僚——いえ、それ以上の存在でした。
彼らは「Oracleの王冠の宝石」と呼ばれる厳重に守られた少数精鋭の建築家集団の一員でした。Oracleが長年市場での地位を維持できた主要な理由となった技術者たちです。
Benoitは1996年、フランスの大学でデータベースの博士号を取得後、カリフォルニア州レッドウッドショアーズのOracle本社に入社。Oracle Query Optimizer(クエリを最適化するエンジン)開発のリーダーとして、データベースの心臓部を設計してきました。
Thierryも同じくフランス出身。Database Engineの開発に17年を捧げ、Oracleの技術的優位性を支えてきた人物です。
Benoitは16年間の在籍中に出会ったThierryを「bro(兄弟)」と呼び、非常に深い友情を育みました。
2人は、データベースの「内側」を知り尽くしていました。そして、その「限界」も。
Larry Ellisonに相談しなかった理由
2012年当時、2つの革命が起きていました。しかし、Oracleはそのどちらにも参加していませんでした。
- クラウド革命: 彼らにとって「クラウドは分析、リソース、弾力性における奇跡」であり、「使用量にピークと谷があるアナリティクスワークロードにとってゲームチェンジャー」でした
- サービス革命: 新たに台頭する「as a Service」のマインドセット
BenoitとThierryは、ある確信を持ちます。
"From our experience at Oracle, we knew the limitations of existing Data Warehouses inside and out. By redesigning from scratch for the new cloud infrastructure, we were convinced that entirely new possibilities would open up."
「Oracleでの経験から、既存のData Warehouseの限界を知り尽くしていました。クラウドという新しいインフラに合わせて、ゼロから設計し直すことで、まったく新しい可能性が開けると確信していました」
— Benoit Dageville, 共同創業者
彼らはOracle創業者のLarry Ellisonに相談しませんでした。
なぜなら、「すでに成熟したデータベース製品を持つOracleでは、このような製品を作れる可能性がゼロだと分かっていたから」です。
これは、17年間のキャリアを捧げた会社への「裏切り」とも取られかねない決断でした。同僚からは「裏切り者」と見られるリスクもあったでしょう。
しかし彼らは、過去を捨てて未来を選びました。
サンマテオのアパートで描いた設計図
2012年、2人はOracleを去ります。
次に彼らが向かったのは、オフィスではありませんでした。サンマテオのアパートの一室です。
何ヶ月もの間、2人はホワイトボードに向かい続けました。
Benoitは振り返ります:
"We worked solely in my apartment, for many months. We developed a scalable architecture by leveraging the resources of the cloud, and the very blueprint of the company was conceived on a whiteboard."
「私たちは何ヶ月もの間、私のアパートだけで働きました。クラウドのリソースを活用したスケーラブルなアーキテクチャを開発し、会社の設計図そのものがホワイトボードで構想されました」
— Benoit Dageville, 共同創業者
Oracle本社の豪華なオフィスから、アパートのホワイトボードへ。この風景の変化が、彼らの覚悟を物語っています。
「後から加わった」第3の創業者
ここで、物語は意外な展開を見せます。
Snowflakeには3人目の共同創業者がいます。Marcin Zukowski。しかし、彼の合流は典型的な創業ストーリーとは異なります。
Marcinは、Snowflakeの構想段階にはいませんでした。
2012年10月、BenoitとThierryと以前から友人だったMarcinに「こんな会社が存在する」と連絡がありました。Marcinは当時、自らが共同創業したデータベース企業Vectorwiseの仕事をしていました。
Sutter Hill VenturesのManaging DirectorであるMike Speiserが、Marcinに会いに来ました。何週間もの間、彼らはレストランで話し続けました。
Marcin自身の言葉:
"And at one moment, something in my brain clicked, and I decided to do it. A few months later, I was in California, and we were building Snowflake."
「ある瞬間、私の脳の中で何かがカチッとはまり、やることに決めました。数ヶ月後、私はカリフォルニアにいて、Snowflakeを作っていました」
— Marcin Zukowski, 共同創業者
Marcinが招かれた理由は明確でした。彼が発明した技術——ベクトル化実行(vectorised execution)と新しい軽量圧縮方法——をSnowflakeのアーキテクチャに組み込むためでした。
オランダ国立情報科学・数学研究所(CWI)での博士課程の研究が、これらの革新の基盤となっていました。
Oracle出身の2人と、アカデミックな研究者1人。この異色の組み合わせが、Snowflakeの技術的優位性を生み出したのです。
「インキュベートする」投資家
もう一人、Snowflakeの誕生に欠かせない人物がいます。
Mike Speiser。Sutter Hill VenturesのManaging Directorです。
彼は典型的なVCではありません。Snowflakeのコンセプトを創業者たちと一緒に考案しました。
2012年、元Oracle エンジニアのBenoitとThierryを説得してSnowflakeを創業させた後、Speiser自身が創業CEOに就任。数年間、SnowflakeはSpeiserのメインの仕事でした。
Sutter Hill Venturesの関与度は尋常ではありませんでした:
- Snowflakeにオフィススペースを提供
- 初期プロダクトの開発を支援
- 売上が増加するにつれ、後続ラウンドにも継続投資
リターン:
- 初期投資: $200M(約300億円)未満
- 2020年9月のIPO後の保有株価値: $12B(約1.8兆円)
- IPO直前時点で、会社の20%以上を所有
そしてSpeiserが下した最も重要な決断——それは、Frank Slootmanの引き抜きでした。
創業者たちの「静かな革命」は、ここから「爆発的な成長」のフェーズに入ります。しかし、その成長を牽引したSlootmanという人物は、一筋縄ではいかない存在でした。
Frank Slootman:「極度に対決的」なリーダー
ヨットを売った男
Frank Slootmanは、引退していました。
Data Domain(2007年IPO)とServiceNow(2012年IPO)という2つのエンタープライズ・テック企業をIPOに導いた実績を持つベテラン。十分な成功を収めた彼は、ヨット競技に打ち込む日々を送っていました。
そこへMike Speiserから電話が来ました。Pure Storageの取締役会で彼を知っていたSpeiserは、Snowflakeのポテンシャルを熱く語りました。
Slootmanは引退を中断し、ヨットの一部を売却、一部を譲渡して、Snowflakeに加わりました。
2019年、CEOに就任。彼の下で、Snowflakeは史上最大のソフトウェアIPOへと駆け上がります。
「私のCEOとしての役割は『極度に対決的』です」
Slootmanのリーダーシップスタイルは、シリコンバレーでも異質でした。
彼自身の言葉:
"My CEO role is 'insanely confrontational'."
「私のCEOとしての役割は『極度に対決的』です」
— Frank Slootman
彼の著書『Amp It Up』(2022年)で展開された哲学:
- 平凡さへの宣戦布告
- 現状打破
- 毎日対立的な選択をする
- ミッションへの執拗な集中
Snowflakeでは**「挑戦の文化」を設定しました。会議の大部分を「何がうまくいっているか」ではなく、「何がうまくいっていないか」を議論することに費やす**。
彼はElon Muskに例えられることもありました。
「去るべき人は去るべきです」
この哲学には、代償もありました。
新規採用者の一部は数週間で退職。「ServiceNowのペースと強度に耐えられず、システムに大きなショックだった」と告白する人もいました。
従業員の離職について尋ねられたSlootmanの回答:
"Those who should leave should leave. That's the beauty of it... you start attracting the right people and losing the wrong ones. So it's actually perfect."
「去るべき人は去るべきです。これが素晴らしい点です...正しい人を引き付け、間違った人を失い始める。だから実際には完璧です」
— Frank Slootman
冷徹とも取れる言葉。しかし、彼の下でSnowflakeは史上最大のソフトウェアIPOを達成します。
「物事を成し遂げる人を熱烈に受け入れ、そうでない人を拒絶する文化」——これがSlootmanのSnowflakeでした。
では、そのIPOはどのように展開されたのでしょうか?
IPOの舞台裏:$4.88Bをテーブルに残した日
価格設定の葛藤
2020年9月、Snowflakeは史上最大のソフトウェアIPOに向けて準備していました。
価格設定の経緯:
- 当初の目標レンジ: $75/株
- 修正レンジ: $100-$110/株
- 最終価格: $120/株 — 目標レンジを超える価格設定
背景には投資家の旺盛な需要がありました。しかし、ここに内部の葛藤がありました。
Goldman Sachsはさらなる値上げを主張していたとされますが、CFOのMike Scarpelliは$100/株を超えることに反対していました——「馬鹿げて見えることを恐れて」。
結果として$120/株で決定。しかし、これは「控えめすぎる」価格設定だったことが、初日の取引で明らかになります。
時価総額・株価推移:IPO初日の狂騒
2020年9月16日の取引:
| 時点 | 株価 |
|---|---|
| 公開価格 | $120/株 |
| 初値 | $245/株(公開価格の2倍以上) |
| 最高値 | $319/株 |
| 終値 | $253.93/株(+112%) |
初日時価総額: $70B(約10.5兆円)
Snowflakeは2,800万株を売却し、$3.4B(約5,100億円)を調達しました。
「史上最大の機会損失」
しかし、この大成功には影の側面がありました。
Snowflakeは$4.88B(約7,320億円)を「テーブルに残した」 — これは12年間で最大の未取得額です。
$120/株よりはるかに高い価格を払う意思のある投資家は:
- 株を全く取得できなかったか
- 希望量のわずかな割合しか取得できませんでした
そしてSnowflakeがデビューすると、彼らが大挙して押し寄せ、株価を112%押し上げました。
もし公開価格を$200/株に設定していたら、Snowflakeは数十億ドル多く調達できたかもしれません。
創業者たちの「沈む気持ち」
ここに、この記事の冒頭で触れた「謎」への答えがあります。
興味深いことに、創業者たちは喜んでいませんでした。
共同創業者Thierry Cruanesの言葉:
"We had a sinking feeling because it was a reflection of the expectation that everybody else had on us."
「沈む気持ちでした。なぜなら、それは他のすべての人が私たちに持っている期待の反映だったからです」
— Thierry Cruanes, 共同創業者
Benoit Dagevilleも付け加えました:
"I would have rather Snowflake started with a lower valuation."
「Snowflakeはもっと低い評価額でスタートした方が良かったと思います」
— Benoit Dageville, 共同創業者
高すぎる期待。それが彼らの恐れでした。
サンマテオのアパートでホワイトボードに向かっていた2人は、今や$70Bの期待を背負うことになったのです。
Buffettの舞台裏
このIPOで最も注目を集めたのは、Warren BuffettのBerkshire Hathawayが$250M(約375億円)を投資したことです。
これはBuffettにとって:
- Ford Motor Company以来初のIPO投資
- 史上初のテックIPO投資
Salesforceも同時に$250M(約375億円)を投資しました。
誰が決めたのか?
Berkshireの保険事業が長年Snowflakeのクラウドベースのデータウェアハウスを使用していたため、Buffettの側近であるTodd CombsがSnowflakeの製品と能力を熟知していました。
Slootman自身が語ったところによると、Snowflakeとのやり取りのほとんどはTodd Combsとのものでした。
Slootmanの戦略:
Slootmanは、Buffettを投資家として引き込むことを数ヶ月前から追求していました。その理由:
"To raise the stature of Snowflake as a brand."
「Snowflakeをブランドとしての格を上げるため」
— Frank Slootman
彼は、10億ドル規模のポジションを買い、長期保有する可能性が高い主要な機関投資家をSnowflakeの株主として引き付けることを目指していました。
この戦略は大成功しました。
資金調達の歴史
Snowflakeの成長指標| ラウンド | 日付 | 調達額 | 評価額 |
|---|---|---|---|
| Series A | 2012年 | $5M(約7.5億円) | - |
| Series B | 2014年 | $26M(約39億円) | - |
| Series C | 2017年 | $105M(約158億円) | $1.5B(約2,250億円) |
| Series D | 2018年 | $263M(約395億円) | $3.5B(約5,250億円) |
| Series E | 2020年 | $479M(約719億円) | $12.4B(約1.86兆円) |
| IPO | 2020年9月 | - | $33B(約4.95兆円)(初日終値$70B・約10.5兆円) |
※日本円換算は1ドル=150円で計算
収益成長の推移
| 会計年度 | 売上高 | 成長率 |
|---|---|---|
| FY2020 | $265M(約398億円) | - |
| FY2021 | $592M(約888億円) | +124% |
| FY2022 | $1.2B(約1,800億円) | +106% |
| FY2023 | $2.1B(約3,150億円) | +69% |
| FY2024 | $2.8B(約4,200億円) | +36% |
| FY2025 | $3.63B(約5,445億円) | +29% |
| FY2026 | $4.68B(約7,020億円) | +29% |
FY2026 Q4単体では売上$1.28B、製品売上$1.23Bで前年比+30%成長。RPOは$9.77Bに急伸(前年比+42%)し、将来の売上パイプラインが加速していることを示しています。FY2027ガイダンスは$5.78Bと、引き続き20%超の成長を見込んでいます。
ここまで読むと、Snowflakeは順風満帆に見えます。しかし、すべてがうまくいっているわけではありません。
隠された課題:コスト批判と競争の現実
「予想の2-3倍」——Instacartの$50M
Snowflakeのビジネスモデル(従量課金)は、メリットでもありデメリットでもあります。
Instacartは年間$50M(約75億円)以上をSnowflakeに支出しています。
これは一例ではありません。多くの組織が予想より200-300%高いコストに直面しています。
Flexeraの2024 State of the Cloud Reportによると、「クラウド支出の管理」が2年連続で組織の最大の課題となっています。
データ転送(Egress)コストの罠
特に深刻なのは、データ転送料金です。
- Snowflakeからデータを別のリージョンやクラウドプロバイダーに転送すると課金が発生
- 100TBのエンタープライズワークロードの移行コストは、$500,000(約7,500万円)を超える可能性
- この「データ重力」によるロック・インが、スイッチングの障壁を作っています
「一度導入したら抜け出せない」——これは「堀(moat)」とも言えますが、顧客にとっては痛みでもあります。
価格設定の複雑さ
Snowflakeはクレジットベースの従量課金モデルを採用しています。ウェアハウスサイズとエディションによってレートが変動し、予測が難しい。
専門家の警告:「ベンチマークテストの結果には懐疑的であるべき — 多くのことが結果を歪める可能性がある」
最適化による成功例
批判の一方で、適切な最適化による成功例も存在します:
- BVK(マーケティング代理店): Snowflakeに切り替えてデータコストを約75%削減、年間数十万ドルの節約
- AMN Healthcare: 年間約$2.2M(約3.3億円)の節約が見込まれている
- 最適化ケーススタディ: 高度な追跡ソリューションにより、Snowflakeクレジット消費を30-40%削減
結論: コスト問題は、プラットフォームの選択ではなく、使い方とアーキテクチャ設計の問題である場合が多い
導入事例:Capital Oneが直面した「データの壁」
大量のトランザクションデータ、リアルタイムの不正検知
Capital Oneは、アメリカ有数のクレジットカード会社です。
毎秒数千件のトランザクション。その中から、不正利用を瞬時に検知しなければならない。従来のシステムでは、バッチ処理で翌日に分析するのが限界でした。
課題:
- 大量のトランザクションデータをリアルタイムで分析できない
- データサイロにより、部門間での情報共有に数日かかる
- コンプライアンス要件への対応がボトルネックに
Snowflake導入後:
- クエリ性能の大幅向上により、リアルタイム分析が可能に
- 全社でのデータ共有基盤が整備され、意思決定が加速
- コンプライアンス要件に準拠したデータガバナンスを実現
「データの壁」を越えた瞬間、Capital Oneのビジネスは変わりました。
主要顧客企業
- テック: Adobe、Netflix、Instacart
- 金融: Capital One、Western Union
- 小売: Albertsons、Petco
- ヘルスケア: 多数の医療機関
- 公共: 米国政府機関
これらの企業がSnowflakeを選んだ理由は何か?競合との違いを見てみましょう。
競合分析:Databricksとの「聖戦」
$5B ARRの激突——同規模売上で評価額2倍の差
競合比較2026年、データプラットフォーム市場は歴史的な転換点を迎えています。SnowflakeとDatabricksがともに$5B ARR規模に到達し、名実ともに「2強」の構図が確定しました。
しかし興味深いのは、ほぼ同じ売上規模にもかかわらず、Databricksの評価額($62B)はSnowflakeの時価総額($62B)とほぼ同等——ただしDatabricksは未上場で流動性プレミアムを含まないため、実質的にはDatabricksの方が高く評価されています。
| 項目 | Snowflake | Databricks |
|---|---|---|
| FY2026売上/ARR | $4.68B | 〜$3.7B ARR(2024年7月時点) |
| 強み | SQLアナリティクス、データ共有 | AI/ML、非構造化データ、オープンソース |
| ターゲット | データアナリスト | データエンジニア、データサイエンティスト |
| AI戦略 | Cortex AI、Snowflake Intelligence | Mosaic AI、Unity Catalog |
| オープンソース | Apache Iceberg対応強化 | Spark、Delta Lake、MLflow |
| 株式市場 | 上場(NYSE: SNOW) | 未上場(IPO準備中) |
2025-2026年の勢力図変化
- Snowflake Gen2 Warehouses(2025年5月GA): 実行速度約2倍、DML性能4.4倍に向上
- Databricks: AI収益の優位性は「構造的」——アーキテクチャがML/AIワークロードに最適化されている
- NRR(Net Revenue Retention): Snowflakeは125%で安定。ただし130%超への再加速が投資家の期待
Snowflakeの競争優位性
- 使いやすさ: SQLに特化した直感的なUI。データアナリストが即座に使い始められる
- データ共有: Snowflake Marketplaceにより、組織間のデータ共有が数クリックで完了
- パフォーマンス: Gen2 Warehousesにより、クエリ性能が大幅向上
- エコシステム: 13,300社超の顧客基盤と豊富なパートナー統合
Databricksの脅威
Databricksの猛追は止まりません。AI/MLファーストを掲げ、Mosaic AIによるカスタムモデル構築、Unity Catalogによるデータガバナンスを強化。生成AIの台頭により「データ分析」から「AI活用」へのシフトが加速する中、Databricksのアーキテクチャ上の優位性は無視できません。
Snowflakeはこの脅威に、Cortex AIとSnowflake Intelligenceで真正面から対抗しています。
AI時代への全面転換:Cortex AI・Intelligence・買収攻勢
Snowflake AI進化タイムライン2024-2026年の主要動向
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年2月 | Frank Slootman退任、Sridhar Ramaswamy CEO就任 |
| 2024年Q1 | Cortex AI正式リリース |
| 2024年Q3 | Arctic(オープンソースLLM)リリース |
| 2025年5月 | Gen2 Warehouses GA(実行速度2倍) |
| 2025年6月 | Crunchy Data買収($250M、PostgreSQL) |
| 2025年8月 | Snowflake Intelligence プレビュー |
| 2025年11月 | Cortex Agents / Intelligence GA、Cortex Code発表 |
| 2026年1月 | Observe買収発表($1B、オブザーバビリティ) |
| 2026年2月 | TensorStax買収、Cortex Code拡張 |
CEO交代劇——AI時代への舵切り
2024年2月28日、Snowflakeは衝撃的な発表をしました:
Frank Slootmanが退任し、Sridhar Ramaswamyが即座にCEO兼取締役に就任。
新CEO Sridhar Ramaswamyの経歴:
- Google 15年: Google広告事業を$1.5B(約2,250億円)から$100B(約15兆円)超に成長させた
- Neeva創業者: 世界初のプライベートAI検索エンジン
- 2023年5月、SnowflakeがNeevaを買収した際にSnowflakeに加わり、AI戦略を主導
Frank Slootman: 「戦時」CEO — オペレーショナルエフィシエンシーとセールス実行に集中
Sridhar Ramaswamy: 「プロダクト」CEO — AI/ML、プロダクト革新に集中
この交代は、Snowflakeがデータウェアハウス企業からAIプラットフォーム企業への変革を目指していることを明確に示しています。
Ramaswamyの「Great Decentralization」ビジョン
CEO就任から2年、Ramaswamyは明確なビジョンを打ち出しています。
2026年は「Great Decentralization(大分散化)」の年になると彼は予測します。過去3年間、少数の「フロンティアモデル」プロバイダーが支配してきたAI業界が、専門特化型の小規模モデルとエージェンティックAIによって分散化される——これがRamaswamyの核心的な主張です。
彼のキーワードは「Demystify(解き明かす)」。「AIが顧客にどんな価値をもたらすか、簡単に理解できるようにする」——これがSnowflakeのAI戦略の根幹にある思想です。
Cortex AI:データがある場所でAIを動かす
Snowflakeアーキテクチャ2024年に始まったCortex AIは、2025-2026年に急速に進化しました。
Cortex AIプロダクト群(2026年時点):
| プロダクト | 機能 | ステータス |
|---|---|---|
| Cortex Agents | 構造化・非構造化データを横断してタスク計画・実行するAIエージェント | GA(2025年11月) |
| Cortex AISQL | SQLでテキスト・画像・音声・動画を分析。性能30-70%改善 | プライベートプレビュー |
| Cortex Code | エンタープライズデータ文脈を理解するAIコーディングエージェント | GA |
| Cortex Search | ベクトル検索、RAG(検索拡張生成)の構築 | GA |
| Cortex Analyst | 自然言語でのデータ分析 | GA |
| Cortex Fine-tuning | LLMのファインチューニング | GA |
| AI Functions | AI_CLASSIFY、AI_TRANSCRIBEなどマルチモーダルAI関数 | GA(2025年11月) |
特にCortex Codeは発表から3ヶ月で4,400人以上のユーザーを獲得。dbtやApache Airflowとの統合により、Snowflake外のデータソースにも対応を拡大しています。Claude Opus 4.6やGPT-5.2など、最新のLLMモデルも選択可能です。
Snowflake Intelligence:全社員にAIエージェントを
2025年11月にGAとなったSnowflake Intelligenceは、Snowflakeの最も野心的なプロダクトです。
あらゆる従業員が自然言語で複雑な質問に答え、データに基づいたアクションを取れるエンタープライズインテリジェンスエージェント。GAからわずか3ヶ月で1,000社以上が導入し、15,000以上のAIエージェントがデプロイされています。
買収攻勢:$1.5B超を投じた3つの賭け
Ramaswamy体制のSnowflakeは、積極的な買収でプラットフォームを拡張しています。
| 買収先 | 金額 | 目的 | 時期 |
|---|---|---|---|
| Observe | 〜$1B | AI駆動オブザーバビリティ(Streamlit以来最大) | 2026年1月 |
| Crunchy Data | $250M | クラウドPostgreSQLサービス | 2025年6月 |
| Select Star | 非公開 | データカタログ/リネージ(Horizon Catalog拡張) | 2025年 |
| TensorStax | 非公開 | データパイプラインの自律AI化 | 2026年2月 |
| Datavolo | 非公開 | データ統合 | 2025年 |
Observe買収は特に重要です。$1B規模のこの取引は、SnowflakeがData Cloud上にオブザーバビリティ機能を組み込み、「データ+AI+運用監視」の統合プラットフォームを目指す戦略的な一手です。
Buffettの投資——そして撤退が意味すること
冒頭の問いに戻りましょう。
なぜWarren Buffettは、「テックIPOには投資しない」という自身のルールを破ってまで、Snowflakeに投資したのでしょうか?
答えは、「堀(moat)」の深さです。一度導入すれば企業のデータ基盤そのものになり、移行コストは膨大で、競合への乗り換えは現実的ではない。
しかし、物語には続きがあります。
Berkshire Hathawayの全株売却(2024年Q2)
2024年第2四半期、Berkshire Hathawayは約600万株のSnowflake株をすべて売却しました。株価約$135で、4年間のリターンはわずか12.5%。
Buffettが見た「堀」は確かに深かった。しかし、成長鈍化(FY2025ガイダンスで24%成長に減速)とAI投資に伴うコスト増が、彼の期待するリターンプロファイルと合わなくなったのです。
皮肉にも、Berkshireの撤退後、Snowflakeの株価は回復基調に。Cortex AIの本格展開が始まった2025年後半以降、AI関連収益への期待から株価は上昇し、2026年3月時点で時価総額は約$62Bまで回復しています。
Snowflakeの現在地(2026年3月)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 強み | FY2026売上$4.68B、顧客13,300社超、Cortex AI/Intelligence、RPO $9.77B(+42%) |
| 進化 | Cortex Agents GA、Snowflake Intelligence(1,000社導入)、Observe買収$1B |
| 課題 | Databricksとの$5B ARR競争、NRR 125%での安定(再加速が課題)、コスト批判の継続 |
| 賭け | 「Great Decentralization」ビジョン、エージェンティックAI、データ×AI×オブザーバビリティ統合 |
主要ポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 創業者 | Benoit Dageville & Thierry Cruanes(Oracle「王冠の宝石」出身) |
| 技術革新 | ストレージとコンピュートの分離 |
| IPO | 史上最大のソフトウェアIPO($70B時価総額)、$4.88B機会損失 |
| リーダーシップ | Slootman「戦時CEO」→ Ramaswamy「AI時代のプロダクトCEO」 |
| FY2026 | 売上$4.68B、製品売上$4.47B(+29%)、RPO $9.77B(+42%) |
| AI戦略 | Cortex Agents、Intelligence、Cortex Code、AISQL |
今後の展望
2026年のSnowflakeは、もはやIPO時の「データウェアハウス企業」ではありません。
Ramaswamy CEOの下、「データ × AI × オブザーバビリティ」の統合プラットフォームへと急速に変貌しています。Cortex AIエージェントが15,000以上デプロイされ、Observe買収でITモニタリング領域にも進出。
Databricksとの$5B ARR競争は激化していますが、Snowflakeには13,300社超の顧客基盤と$9.77BのRPO(将来の契約売上)という強固な土台があります。
Buffettが見た「堀」は今も深い。しかしその堀の上には、AIという新しい塔が建ち始めています。
次のステップ
- データ基盤担当者: Gen2 Warehousesの2倍の性能向上を検証。Cortex AIの活用でデータチームのAI化を推進
- AI活用を検討中の企業: Snowflake Intelligenceの15,000エージェント導入実績を参考に、自社データ基盤上でのAIエージェント構築を評価
- 投資家: FY2027ガイダンス$5.78B、RPO+42%の加速、Databricks IPO動向をウォッチ
関連記事
参考リソース
Snowflake公式
テックメディア報道
- CNBC - Warren Buffett invests in Snowflake IPO
- TechCrunch - Snowflake IPO
- Fortune - Snowflake's IPO left $5B on the table
創業者・リーダーシップ関連
- Computer Weekly - Snowflake founders reveal 'cuckoo cloud' vision
- Medium - Marcin Zukowski's Unusual Co-founder Journey
- Fortune - Frank Slootman calls role 'insanely confrontational'
本記事はネクサフローのAI研究シリーズの一部です。
この記事の著者

中村 知良
代表取締役
早稲田大学卒業後、ソフトバンク株式会社にてAI活用やCEO直下案件のプロジェクトマネージャーに従事。その後、不動産スタートアップPit in株式会社の創業、他スタートアップでの業務改善・データ活用を経験後、2023年10月、株式会社ネクサフローを創業し代表取締役CEO就任。


