この記事の要約
Kustomerは、顧客中心のタイムライン型CRMとAI機能を組み合わせたカスタマーサービスプラットフォームです。この記事では、創業者の背景、製品コンセプト、AI活用、導入事例、比較時の論点を整理します。
Kustomerは、メール、チャット、SMS、WhatsAppなど複数チャネルの会話履歴を1つのタイムラインに集約し、AIとautomationを組み合わせて顧客対応を設計するカスタマーサービスプラットフォームです。公式サイトでも、訴求の中心は「チケット」ではなく「顧客単位で履歴を見る」設計と、AI assist / automation / observability を組み合わせた運用基盤に置かれています。
Kustomerを理解するうえで重要なのは、変動しやすい会社規模や資金の数字を追うことよりも、なぜ創業者Brad BirnbaumとJeremy Surielが「人を見るCRM」を掲げ続けてきたのか、そして現在のプロダクト導線で何を前面に出しているかを押さえることです。
本記事では、創業者の経歴、Kustomerがなぜ顧客中心のアーキテクチャを打ち出すのか、AI機能や導入事例をどう読むべきか、そして比較検討の際にどこを確認すべきかを、記事末尾の公式ページと報道を起点に整理します。
本記事の表記について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | Kustomer |
| 設立年 | 2015年 |
| 本社 | ニューヨーク |
| 創業者 | Brad Birnbaum / Jeremy Suriel |
| カテゴリ | customer service CRM / CX platform |
| 中核コンセプト | 顧客中心タイムライン、オムニチャネル対応、AI assist / automation |
| 主な導線 | Kustomer公式サイト / AIページ / Blog / Customer stories |
| 導入前の確認点 | 価格、AI機能の提供範囲、連携先、セキュリティ、運用フローは最新の公式情報を確認 |
※日本円換算は1ドル=150円で計算
変動しやすい会社規模やリリース時期の細部は、本文後半の年表よりも記事末尾の公式リソースを優先して確認してください。
Kustomerの全体像Kustomerの物語を理解するには、まず創業者から始めなければなりません。
Brad BirnbaumとJeremy Suriel。二人の出会いは1994年に遡ります。
当時、Brad Birnbaumは大学在学中でした。インターネットの可能性に魅了された彼は、あるアイデアを思いつきます。
「大規模チャットを、カスタマーサポートに応用できないか?」
しかし、技術的な壁がありました。1994年当時、リアルタイムチャットは「不可能」 だったのです。Webブラウザは静的なページを表示するだけ。自動更新の仕組みはありませんでした。
Brad Birnbaumは、この壁をブラウザハックで突破します。
ページを自動的に更新させる仕組みを開発。今では当たり前の「リアルタイムチャット」を、当時の技術で実現したのです。
eShare Technologiesとして創業したこのサービスは、爆発的に広がりました。
AOL、Sprint、Dell、Microsoft、1-800-Flowers——当時のトップ10トラフィックサイトのうち6つが採用。彼のハックは、業界のスタンダードになりました。
そして、このときJeremy Surielと出会います。技術の天才。Brad Birnbaumのビジョンを、コードで現実にする力を持っていました。
1999年、eShare TechnologiesはMelita Internationalに7,910万ドル(株式交換) で買収されます。
1997年に売上75万ドル、1998年に370万ドル。わずか2年で売上を5倍にした成長が評価されました。
しかし、Brad BirnbaumとJeremy Surielの挑戦は終わりません。
2008年、Brad BirnbaumはAOLに入社。チャット部門のSr. Tech Directorとして、再びチャット技術と向き合います。
ここで、後にAssistlyの共同創業者となるAlex BardとGary Benittと出会いました。
2009年、彼らは全員でAOLを退職します。行き先は、新しいスタートアップ——Assistly。
Assistlyは、カスタマーサポートSaaSの先駆けでした。
Instagram、Klout、Spotify、Square——名だたる企業が顧客になり、わずか18ヶ月でSalesforceの目に留まります。
2011年、Salesforceが8,000万ドル(約120億円) で買収。Desk.comとして統合されました。
しかし、Salesforce内部でBrad Birnbaumは「ある問題」に気づきます。
"Everything needs to be reinvented once every decade. A lot of these products are stagnant and were invented before the iPhone existed."
「全ては10年に一度再発明される必要がある。これらの製品の多くは停滞しており、iPhoneが存在する前に発明されたものだ。」
— Brad Birnbaum, CEO
カスタマーサービスプラットフォームは、顧客を「チケット」として扱っていました。
問い合わせ#12345。解決済み。次のチケット。
しかし、顧客は「チケット」ではありません。
「顧客にチケット番号を割り当てる瞬間、ケースのサイロが生まれ、すべてが非人間化される」
— Brad Birnbaum, CEO
過去に何を購入し、どんな問い合わせをし、どのチャネルでコンタクトしてきたか——その「人」全体を見なければ、真のサポートはできない。
2015年、二人は3社目を創業します。その名はKustomer。
「Customer」の「C」を「K」に変えた。「従来のカスタマーサービスを根本から変える」という意志の表明でした。
1994年から2025年まで、31年間。3社連続で組み続けている創業者コンビは、極めて稀です。
なぜ離れないのか?
Brad Birnbaumがビジョンを描き、Jeremy Surielが技術で実現する。役割が明確で、互いを尊重している。そして、「カスタマーサービスを変える」という共通のミッションを持ち続けている。
投資家が最も驚いたのは「創業者の圧倒的なドメイン知識」でした。30年以上カスタマーサービスソフトウェアを作り続けてきた経験。それが、Battery Venturesの出資を決めた理由でした。
そして2020年、30年の集大成であるKustomerに、10億ドルの買い手が現れます。
2020年、Metaが直面していた課題は明確でした。
WhatsApp Businessは急成長していましたが、カスタマーサービス機能がなかった。Messengerも同様。Instagramでのショッピング機能は充実しつつあったものの、顧客対応は断片的でした。
Kustomerは、その「欠けたピース」でした。
メール、チャット、SMS、WhatsApp、ソーシャルメディア——すべてのチャネルを単一のタイムラインで管理できるCRM。Metaのメッセージング帝国を「顧客サービスプラットフォーム」へ進化させる鍵だったのです。
2020年11月、買収発表。10億ドル(約1,500億円)。
しかし、買収は順調に進みませんでした。
FTC(米連邦取引委員会)、英国、EUの規制当局が審査を開始。独占禁止法の観点から、Metaのさらなるデータ集積への懸念が示されました。
当初、2021年初頭には完了予定でした。しかし、審査は長引きます。
同時期、FTCはMetaに対して別件訴訟も提起していました。InstagramとWhatsAppの買収が「買収または埋葬(buy-or-bury)」戦略だという主張です。この訴訟がKustomer買収審査にも影響を与えました。
欧州委員会はPhase II調査(より詳細な競争影響評価)を実施。主な懸念は、MetaがKustomerの競合他社に対し、WhatsApp、Messenger、Instagram APIへのアクセスを拒否する可能性でした。
2022年1月、欧州委員会は「条件付き承認」を出します。その条件は、前例のないものでした。
Public API Access(公開APIアクセス): WhatsApp、Messenger、InstagramのAPIへの無料・無差別アクセスを保証。競合CRMプロバイダーも同等にアクセス可能。
Core API Access-Parity(コアAPI同等性保証): Kustomerが使用している機能が改善される場合、競合他社にも同等の改善を提供。
監視体制: 第三者のトラスティ(監視人)を任命し、実装状況を監視。コミットメント期間は10年間。
2022年2月、ようやく買収完了。発表から14ヶ月が経過していました。
しかし、この14ヶ月の間にMetaを取り巻く環境は激変していたのです。
2021年10月、FacebookはMetaに社名変更。メタバースへの巨額投資が始まりました。
Reality Labs(メタバース部門)への年間投資は100億ドル(約1.5兆円)以上。一方で、広告収益は伸び悩み、2022年の株価は65%下落しました。
買収完了後、Kustomerは約2億ドル(約300億円)を燃焼しました。
内訳は以下の通りです:
さらに深刻だったのは、収益成長の停滞でした。
報道によれば、買収後に「収益成長曲線が横ばいになった(revenue growth curve flattened)」とされています。10億ドルで買収した企業の成長が止まった——これは投資家にとって最悪のシナリオでした。
業界メディアは厳しく報道しました。
2023年、Mark Zuckerbergは「効率化の年」を宣言。
21,000人のレイオフ——Meta史上最大の人員削減が実施されました。新しいアプリ・コンテンツ関連の取り組みを終了し、非消費者向け事業の整理が進められます。
そして、Kustomerもその波に飲み込まれました。
Metaの公式説明:
"In light of Meta's efficiency efforts, we've decided to focus on our fastest-growing business messaging offerings, including the monetization opportunity for WhatsApp."
「Metaの効率化の取り組みを踏まえ、WhatsAppのマネタイズ機会を含む、最も成長の速いビジネスメッセージング製品に焦点を当てることにした。」
| 項目 | 買収時(2020年) | スピンオフ時(2023年) |
|---|---|---|
| 評価額 | $1B(約1,500億円) | $250M(約375億円) |
| 評価減少 | - | -75% |
| 新規投資 | - | $60M(約90億円) |
| 投資家 | Meta | Redpoint、Battery、Boldstart |
| Metaの役割 | 100%所有 | 最大株主だが取締役なし |
| 傘下期間 | - | 実質約1年間のみ |
※日本円換算は1ドル=150円で計算
買収価格の1/4。厳しい条件でした。
しかし、創業者のBrad BirnbaumとJeremy Surielは、これを「機会」と捉えました。
30年のパートナーシップで培った経験。Meta傘下で磨かれた技術。拡大した顧客基盤。これらは「資産」として残っていました。
そして、従来の投資家(Battery、Redpoint、Boldstart)が即座に6,000万ドル(約90億円)を追加投資。25年の信頼が、ここで活きたのです。
スピンオフ後、Kustomerはどう変わったのか?AI時代への適応が始まります。
Kustomerの核心は、顧客を中心に据えた設計にあります。
従来のCRM(Zendesk、Freshdesk等)は「チケット中心」。1つの問い合わせ = 1つのチケット。過去の文脈は別画面で参照する必要がありました。
Kustomerは違います。
360度カスタマービュー——チャット履歴、メール履歴、SMS、WhatsApp、購入履歴、すべてが単一のタイムラインで表示されます。
サポート担当者は、画面を切り替える必要がありません。顧客の全体像を見ながら、対応できる。
これが、Brad Birnbaumが30年間追い求めてきた「人を見る」設計です。
スピンオフ後、KustomerはAIを全面的に統合。独自AI技術「KIQ(Kustomer IQ)」を基盤に、3つのレイヤーでAIエージェントを展開しています。
| AIエージェント | 対象 | 機能 | 効果 |
|---|---|---|---|
| AI Agents for Customers | 顧客 | 24/7即時応答、問い合わせの最大40%自動解決 | 効率45%向上 |
| AI Agents for Reps | 担当者 | AI要約、回答提案、自動パーソナライズ | 効率65%向上 |
| AI Agents for Leaders | 管理者 | パフォーマンス分析、予測、アラート | 運用可視化 |
AI解決率40%——これは、顧客からの問い合わせの4割が、人間の介入なしで解決されることを意味します。
残り60%は人間が対応しますが、KIQ Agent Assistが強力に支援。回答候補の提示、過去の類似ケースの検索、対話の要約、コミュニケーションの自動パーソナライズ——担当者の効率は65%向上しています。
KIQ AIアーキテクチャKustomerの最大の革新は、製品ではなく価格モデルにあります。
従来のCRMは「シートベース課金」。1人の担当者につき月額XX円。担当者を増やすほど、コストが増加する。
"Traditional industry pricing models actually work against customers as more AI gets integrated into platforms and absorbs more of the workload from humans."
「従来の業界価格モデルは、AIがプラットフォームに統合され人間の作業を吸収するほど、実際には顧客に不利に働く。」
— Brad Birnbaum, CEO
Kustomerは会話ベース課金を導入しました。
"Customers always say they hate paying per seat. The new thinking is you pay for conversations, whether it's AI-resolved or agent-resolved. But that's all you pay for. Seats are unlimited."
「顧客は必ず、シートごとの支払いが嫌いだと言う。新しい考え方は、AI解決でも人間解決でも、会話に対して課金する。しかしそれが支払いの全てだ。シートは無制限。」
— Brad Birnbaum, CEO
シート数は無制限。会話の数だけ課金される。
これは何を意味するのか?
企業は「担当者を増やすコスト」を気にする必要がなくなります。繁忙期に臨時スタッフを増員しても、追加コストはゼロ。必要なのは「会話の数」に対するコストだけ。
"We want pricing that enables that transformation, that doesn't cost you more as you go. We want to partner with you."
「変革を可能にする価格設定、進むほどコストが増えないものを望む。私たちはパートナーになりたい。」
— Brad Birnbaum, CEO
しかし、すべてがうまくいっているわけではありません。Kustomerにも課題があります。
「AI解決率40%」——この数字は、すべての企業に当てはまるわけではありません。
高いAI解決率が出るケース:
低いAI解決率になるケース:
導入企業によっては、AI解決率が10-20%に留まることもあります。40%は「最大値」であり、平均値ではありません。
Kustomerの顧客構成を見ると、興味深い傾向が見えます。
| セグメント | 割合 |
|---|---|
| 小規模(0-100名) | 55.49% |
| 中規模(101-1000名) | 36.99% |
| 大規模(1001-10000名) | 6.94% |
| Enterprise(10000名+) | 0.58% |
小規模企業が過半数を占めています。
しかし、Kustomerの真価が発揮されるのは、大量の顧客接点を持つ中〜大規模企業です。小規模企業では、機能の多くがオーバースペックになる可能性があります。
競合のZendeskからKustomerへの移行を検討する企業は多いですが、移行コストは軽視できません。
後述するYummyは成功しましたが、すべての企業がスムーズに移行できるわけではありません。
Brad Birnbaumは、Kustomerの企業文化についてこう語っています。
「失敗してもいいが、早く失敗しろ(it's ok to fail but fail fast)。試行錯誤し、何が機能するかを学び、すぐに調整すべきだ」
2億ドル燃焼という「失敗」を経て、スピンオフ後のKustomerは「早く調整する」姿勢で復活を遂げました。
では、これらの課題を踏まえた上で、Kustomerは競合とどう戦っているのでしょうか?
カスタマーサービスプラットフォーム市場では、Zendeskが14.84%、Intercomが13.00% の市場シェアを占めています。Kustomerはチャレンジャーとして、AI-Nativeアーキテクチャで差別化を図ります。
競合比較図| 項目 | Kustomer | Zendesk | Intercom | Sierra |
|---|---|---|---|---|
| 哲学 | 顧客中心 | チケット中心 | 会話中心 | AIエージェント中心 |
| データ表示 | 単一タイムライン | チケット単位 | 会話単位 | AIが全処理 |
| AI統合 | KIQネイティブ | 後付け | Finネイティブ | AIファースト |
| 価格モデル | 会話ベース | シートベース | シートベース | 成果ベース |
| 市場シェア | チャレンジャー | 14.84% | 13.00% | 急成長中 |
| 強み | 360度顧客ビュー+CRM | 市場シェア・実績 | Fin AI解決率50%超 | 評価額$10B・ARR$150M |
| 課題 | スケール | レガシー構造 | CRMの深さ | 独自CRM未保有 |
Zendeskは市場シェアでは圧倒的ですが、「レガシーアーキテクチャ」と複雑な設定が課題。Intercomはチャット特化とFin AIで強いですが、CRMとしての深さでKustomerに劣ります。Sierraは評価額$10B・ARR $150Mの急成長勢力ですが、独自CRMを持たずインフラ依存が弱点です。
実際にKustomerを導入した企業は、どのような成果を上げているのでしょうか?
背景: ThirdLoveは「フィット」にこだわるD2C下着ブランド。急成長に伴い、顧客の全体像を追跡するCXソリューションが必要でした。
課題:
解決と成果:
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 顧客満足度(CSAT) | 96%を安定維持 |
| 不正対策 | 月に数千ドルの損失を防止 |
| エージェント体験 | 全履歴をタイムラインビューで確認 |
Shopifyと統合し、顧客のやり取りと購入履歴を一元管理。Kustomerの強力なセグメンテーション機能を活用し、不正なShopify注文をKustomer内で特定・直接キャンセルしています。
背景: HexCladはAmazon、Costco、自社ECで販売する調理器具ブランド。製品に生涯保証を提供しています。
課題:
解決と成果:
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 顧客生涯価値(CLV) | サポート利用顧客は未利用顧客より21%高い |
| 平均注文額(AOV) | サポート利用顧客は約100ドル高いAOV |
| オムニチャネル統合 | 全チャネルの顧客タッチポイントを集約 |
サポートとのやり取りが直接収益に貢献——これはKustomerの「顧客中心」設計が生んだ成果です。
背景: Everlaneは「透明性」を売りにするD2Cファッションブランド。しかし、カスタマーサポートは不透明でした。
課題:
解決と成果:
背景: Yummyはフードデリバリー、ライドシェア、決済を提供するスーパーアプリ。Zendeskを使っていましたが、限界を感じていました。
課題:
解決と成果:
| 指標 | Before | After |
|---|---|---|
| レスポンス時間 | - | 80%短縮 |
| 顧客満足度 | - | 90%以上達成 |
フードデリバリーの問い合わせも、ライドシェアのクレームも、同一画面で確認できるようになりました。
これらの成功事例を武器に、Kustomerは復活の道を歩んでいます。2024-2025年の動きを見てみましょう。
スピンオフ後、Kustomerは「年間100以上のリリース」という驚異的なペースで進化しています。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年10月 | AI-Nativeカスタマーサービスプラットフォーム発表・会話ベース課金開始 |
| 2024年 | GPT-4o-mini採用、KIQ Agent Assist発表 |
| 2025年8月 | Norwest主導で$30M(約45億円) Series B調達 |
| 2025年12月 | AI Automation/Observability Assistant発表(計6つのAIアシスタント) |
| 2025年 | MCP Server公開・TikTok Shop統合(Beta)・PCI Redaction |
| 2026年3月 | Spring 2026リリースウェビナー予定 |
※日本円換算は1ドル=150円で計算
Kustomer復活のタイムライン2025年8月、KustomerはNorwest Venture Partners主導で$30M(約45億円) のSeries B調達を完了しました。
これは、スピンオフ後初の外部投資家からの大型調達。「Meta傘下からの独立」が市場に認められた証です。
NorwestのScott Beechukは投資理由をこう語りました:
"Offering a great agentic customer support experience is not just a tooling problem — it's an infrastructure problem."
「優れたエージェント型カスタマーサポート体験を提供することは、単なるツールの問題ではなく、インフラの問題だ。」
累計調達額は$294M(約441億円) に到達。スピンオフ後だけで$90M(約135億円) を調達し、独立企業としての信頼を確立しました。
独立後、Kustomerは経営陣を大幅に強化しました。
創業者のBrad Birnbaum(CEO)とJeremy Suriel(CTO)はそのまま経営を主導。2025年には全社集会「Kamp 2025」を開催し、AI-Native CRMとしての方向性を全社で共有しました。
2024年のKIQ Agent Assist発表以降、Kustomerは独自AI「KIQ」を急速に拡張しました。
| KIQ製品 | 対象 | 主な機能 | 効果 |
|---|---|---|---|
| KIQ Customer Assist | 顧客 | 24/7即時応答、FAQ自動解決 | 効率45%向上 |
| KIQ Agent Assist | 担当者 | AI要約、回答提案、ナレッジ検索 | 効率65%向上 |
| AI Automation Assistant | 管理者 | ワークフロー/ルーティング矛盾検出(GA) | 運用効率化 |
| AI Observability Assistant | 管理者 | AIエージェント実行トレース分析(EA) | 品質可視化 |
KIQ Agent Assistは担当者の効率を65%向上——AI要約、コミュニケーション自動パーソナライズ、類似ケース検索で、人間の担当者を強力に支援します。
2025年、KustomerはMCP(Model Context Protocol)Serverを公開しました。
MCP Serverにより、Kustomerのデータを外部のMCP対応AIツールに直接接続可能に。複雑なインテグレーション構築やコンテキスト切り替えが不要になり、リーダーはサマリー、トレンド、インサイトを自然言語で即座に取得できます。
さらに、AIエージェントが外部システムに対してGET/POST/PUT/DELETE APIコールを実行可能に。返金処理やCRMレコード更新などの自動化が実現しました。
"The world is going through a revolution from humans providing support to a combination of humans and machines. We're seeing AI agents do incredible things in terms of handling and triaging inquiries."
「世界は革命を経験している。人間がサポートを提供することから、人間と機械の組み合わせへと移行している。AIエージェントが問い合わせの処理と振り分けにおいて、驚くべきことを実現しているのを目の当たりにしている。」
— Brad Birnbaum, CEO
"The secret to our AI capabilities is that they're integrated into a native CRM platform. A lot of companies are getting into AI, but they haven't built the CRM yet, or they're running a CRM off integrations. We're a true CRM with automation and workflows built in from day one."
「私たちのAI機能の秘密は、ネイティブCRMプラットフォームに統合されていることだ。多くの企業がAIに参入しているが、まだCRMを構築していないか、統合でCRMを動かしている。私たちは最初から自動化とワークフローが組み込まれた真のCRMだ。」
— Brad Birnbaum, CEO
「後付けのAI」ではなく、「AI-Native」——これがKustomerの復活の武器です。
冒頭で見た通り、Kustomerを評価するときは dramatic な企業イベントの数字よりも、いま何をプロダクトの核として訴求しているかを見るほうが実務的です。
Kustomerのビジネスモデル創業者の連続性: Brad BirnbaumとJeremy Surielは、複数世代のカスタマーサポート製品を作ってきた経験をKustomerに持ち込んでいます。
顧客中心アーキテクチャ: チケット単位ではなく顧客単位で履歴を見る設計が、Kustomerの差別化ポイントです。
AIとautomationの一体運用: KIQ、assist機能、workflow自動化、observability を同じ運用面で扱おうとしている点が現在の訴求軸です。
オムニチャネルと連携: メール、チャット、SMS、WhatsApp、EC/CRM連携をまたいで一貫した顧客対応を設計できるかが導入判断の中心になります。
Kustomerの物語には、Meta傘下を経た変遷や規制審査、独立後の再編といった象徴的なイベントが含まれています。
ただし、これらは「現在のKustomerを理解する背景」として読むのが安全です。今の製品選定では、公式サイト、AIページ、Blog、customer stories を起点に、現行の機能と運用条件を確認するほうが重要です。
Kustomerの本質は、顧客単位で履歴を統合するCRM と AI/automation を支える運用基盤 を一緒に設計しようとしている点にあります。
その意味でこの記事は、「派手な企業イベントの年表」よりも、創業者が何を再発明しようとしてきたかと、現在の product surface をどう評価するかを読むためのガイドです。
"It's about supporting a customer and not a case."
「ケースではなく、顧客をサポートすることだ。」
— Brad Birnbaum, CEO
最新の仕様や提供範囲を確認したい場合は、記事末尾にまとめた Kustomer 公式サイト / AIページ / Blog / customer stories を優先してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社の見方 | 顧客中心CRMとAI/automationを一体で扱うCXプラットフォーム |
| 創業者 | Brad Birnbaum / Jeremy Suriel |
| 製品 | 顧客タイムライン、オムニチャネル対応、KIQ、workflow automation、MCP |
| 比較軸 | 顧客中心設計、AIガバナンス、連携先、移行負荷、価格モデル |
| 確認先 | Kustomer公式サイト / AIページ / Blog / Customer stories |
| 注意点 | 機能、価格、提供範囲は更新されやすいため導入前に最新情報を再確認 |
本記事はネクサフローのAI研究シリーズの一部です。
この記事の著者

代表取締役
早稲田大学卒業後、ソフトバンク株式会社にてAI活用やCEO直下案件のプロジェクトマネージャーに従事。その後、不動産スタートアップPit in株式会社の創業、他スタートアップでの業務改善・データ活用を経験後、2023年10月、株式会社ネクサフローを創業し代表取締役CEO就任。
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