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AIサマリー
データ分析大手Palantir CEOが語る、テック企業と社会の関係。20年間批判されながらも成功した理由、市民的自由を守る技術設計の秘密を解説。前提知識がなくても読めます。
元動画: YouTube: Y-IH7EVrBbQ
Palantir Technologies CEO アレックス・カープ(Alex Karp)が、四半期売上10億ドル突破を記念した講演で語った「西洋を守る理由」。20年間批判され続けながらも、市民的自由を守る技術設計を貫いてきた彼の哲学とは?本記事では、講演内容を完全解説します。
Palantir Technologiesとは? 2003年にPeter Thiel(PayPal共同創業者)らが設立したアメリカのデータ分析企業。政府機関や大企業向けに、大量のデータを統合・分析するソフトウェアを提供しています。社名は『指輪物語』に登場する「遠くを見通す石」に由来。2020年にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しました。
前提知識(なくても読めますが、あると理解が深まります)
想定読了時間: 約15分
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 登壇者 | Alex Karp(Palantir Technologies CEO) |
| 主要テーマ | 市民的自由、国境管理、西洋文化、メリトクラシー、AI倫理 |
| 企業実績 | 四半期売上10億ドル突破(2024年) |
| 批判された期間 | 20年間 |
2024年、Palantir Technologiesは四半期売上で初めて10億ドルを突破した。株価は急騰し、「期待を超える成果」として市場に評価された。
"A billion dollars in quarterly revenue for the first time ever. The stock has just ripped. They have delivered here beyond the expectation and the expectations were obviously remarkably high."
「四半期売上が初めて10億ドルを突破しました。株価は急騰しています。期待を超える成果を出しました。その期待はもちろん非常に高いものでした。」
— Alex Karp, Palantir CEO
しかし、この成功の裏には20年間にわたる批判の歴史がある。ICE(米国移民・関税執行局=不法移民の取り締まりを担当する連邦機関)への技術提供、イスラエルとの関係、AI監視技術への懸念——Palantirは常に論争の中心にあった。それでもカープは「実績で語る」姿勢を貫き、技術者コミュニティからの揺るぎない支持を得てきた。
本記事では、カープがこの講演で語った9つの主要トピックを体系的に解説する。
Alex Karpは、2003年にPeter Thiel(ピーター・ティール)らと共にPalantir Technologiesを共同創業したCEOである。スタンフォード大学法学博士号を持ち、ドイツで哲学を研究した異色の経歴を持つ。また、企業リーダーとして世界最高レベルの太極拳実践者でもある。
"Honestly, some of you guys like and love me more than I like myself which takes a little work."
「正直に言うと、あなた方の中には私自身が自分を好きなレベル以上に私を好きで愛してくれている人がいます。それにはちょっと努力が必要なんですけどね。」
— Alex Karp
カープは「ビルダー哲学」の体現者である。講演の中で彼は繰り返し「実績で語ること」の重要性を強調し、「何も作ったことがない人」による批判を一蹴する。
彼のキャリアは一貫して 実力主義(メリトクラシー=生まれや縁故ではなく、実績と能力で評価される仕組み) と 市民的自由の保護 という2つの軸で貫かれている。
Palantirの講演会場には、常に抗議デモが存在する。一方で、技術者コミュニティからは熱狂的な支持を受けている。この二極化はなぜ生まれるのか?
抗議する人々の主張は主に以下の2点に集約される:
カープはこれらの主張に対し、「誤解に基づいている」と反論する。
"A lot of people who are protesting actually what they're protesting is there's no way to get in this room. And in fact, the way the way aptitude and the implementation of things has worked, they're just wrong."
「抗議している多くの人々は、実際には『この部屋に入る方法がない』と抗議しているのです。しかし実際には、適性と実装の仕方を見れば、彼らは単に間違っているのです。」
— Alex Karp
一方、技術者コミュニティがカープを支持する理由は明確だ:
"Do not trust anyone who's never built anything. It's so easy to have all these opinions."
「何も作ったことがない人を信用してはいけません。意見を持つことは簡単すぎるのです。」
— Alex Karp
カープは、 ビルダー(作り手)は実績に基づいて評価される と強調する。技術者コミュニティは、Palantirが20年間一貫して成果を出し続けてきたことを評価しているのだ。
Palantirが最も誤解されている点が、この「市民的自由」に関する技術設計である。
カープは、Palantirの技術が 「市民的自由を侵害するには最も不向きな設計」 であると主張する。
"We are the single worst technology to used to abuse civil liberties which is by the way the reason why we could never get the NSA or the FBI to actually buy our product."
「私たちは市民的自由を侵害するために使うには最悪の技術です。これがまさに、NSA(国家安全保障局=米国の情報機関)やFBI(連邦捜査局)が実際に私たちの製品を購入できなかった理由です。」
— Alex Karp
この主張を支える技術的な特徴は以下の通り:
シリアライゼーションとは? データを保存・転送可能な形式に変換する処理のこと。Palantirではこれを「理解可能な形で」実装し、誰がどのデータにアクセスしたかを追跡可能にしています。
"You don't want logs, you don't want serialization and deserialization if you have serialization and deserialization of your product that's intelligible. You are basically creating a product that's going to be really really hard to abuse."
「ログが欲しくない、シリアライゼーションとデシリアライゼーションが欲しくない——もしあなたの製品にそれらが理解可能な形で含まれていれば、あなたは悪用が非常に困難な製品を作っていることになります。」
— Alex Karp
カープは皮肉を込めてこう語る:
Palantirの技術は 透明性が高すぎる ため、政府機関が求める「柔軟な運用」と相容れなかった。全てのアクセスが記録され、監査可能な設計は、秘密裏にデータを扱いたい機関にとって都合が悪いのだ。
しかし、カープはこれを 「市民的自由を守る証明」 と位置づけている。市民的自由を最も重視するヨーロッパ諸国が、毎日Palantirの製品を購入している事実がそれを証明している。

比較図:Palantirの技術 vs 従来の監視システム
国境管理は、Palantirが最も批判されるトピックの1つである。カープは「AI時代において、市民的自由を守りながら国境を管理することは技術的に可能」と主張する。
インタビュアーが「カメラを全面設置して顔認証すれば簡単では?」と問うと、カープは即座に反論する。
Interviewer: "It could very easily be done if we put cameras everywhere and we just did facial recognition. But we don't want to live in that."
Alex Karp: "It could be very easily done if you eviscerate our civil liberties. That's not being done."
インタビュアー:「カメラを至る所に設置して顔認証すれば簡単にできるでしょう。でも、そんな社会には住みたくない。」
アレックス・カープ:「市民的自由を完全に破壊すれば、確かに簡単にできるでしょう。でも、それは解決策ではありません。」
カープが提案するのは、 選択的な技術利用 だ:

フローチャート:AI時代の国境管理ソリューション
カープは、問題の本質は 技術ではなく政治的意思 だと指摘する。政治家が実際の問題(労働者の価値向上)に取り組みたくないため、開放的な国境政策を選択しているのだ。
カープは、ヨーロッパ(特にドイツとフランス)で半生を過ごした経験から、西洋文化の危機を語る。
カープによれば、ヨーロッパは 自国文化の価値を否定 している。
"To believe that there's nothing special, unique, and uniquely valuable about German culture is insanity."
「ドイツ文化に特別で、ユニークで、独自の価値があるものが何もないと信じることは、狂気です。」
— Alex Karp
ドイツの例:
それにもかかわらず、移民政策、エネルギー政策、テック産業の全てで失敗し、「未来への答え」が見えなくなっている。
カープは、ドイツで「私はドイツ人であることを誇りに思う」と言うだけで 極右扱いされる ことに驚きを示す。
一方、アメリカの強さは カルヴィニズム的成功観 にあるとカープは言う。
"What's special about America was Calvinism. We are the most Calvinist culture in the world."
「アメリカの特別な点はカルヴィニズムでした。私たちは世界で最もカルヴィニズム的な文化なのです。」
— Alex Karp
カルヴィニズムとは:
これに対し、ヨーロッパのルター主義は「大きな成功の背後には大きな犯罪がある」(ヴォルテール)という価値観を持つ。
カルヴィニズムとルター主義の違い

比較図:アメリカ vs ヨーロッパの文化的違い
カープは、もしこの カルヴィニズム的成功観がアメリカから失われれば、成功した集団は全て攻撃対象になる と警告する。
カープは、自身がマイノリティとして成功するために学んだ教訓を語る。
"For me to succeed, just like for you to succeed, you're going to have to be 10x better than anyone else in the room or you will fail."
「私が成功するためには、あなたが成功するためにも同じですが、部屋の中の誰よりも10倍優れている必要があります。そうでなければ失敗します。」
— Alex Karp
この「10倍ルール」は、単なる精神論ではない。カープは、Palantirが20年間批判され続けながらも生き残った理由として、以下を挙げる:
カープは、 「何も作っていない人」が「カープはコネで成功した」と言うこと を強く批判する。
"Anyone who tells you that's not true is... you are the mark. If you're being taught that, you're the mark."
「それが真実でないと言う人がいたら……あなたは騙されているのです。もしそう教えられているなら、あなたは騙されているのです。」
— Alex Karp
メリトクラシーを否定する教育機関(特にバークレー大学)への批判も織り交ぜながら、カープは 「実績で評価される文化」の重要性 を訴える。
カープは、企業リーダーとして世界最高レベルの太極拳実践者である(ELO換算でV22 max 72相当と本人が語る)。
太極拳の哲学から、カープは中国との関係をこう語る:
"It's their job to destabilize us. It's our job to be stable."
「彼ら(中国)の仕事は我々を不安定化させることです。我々の仕事は安定していることです。」
— Alex Karp
太極拳では、相手の弱点を見つけて圧力をかけ、内部崩壊を促す。中国も同様の戦略を取っている——フェンタニル、TikTokなどでアメリカの内部を弱体化させようとしている。
カープの答えはシンプルだ:「外部の脅威と戦う前に、自国を強くすること」。
"If you're in a fight, you're not a martial artist."
「戦いに巻き込まれている時点で、あなたは武道家ではありません。」
— Alex Karp
これはビジネスにも当てはまる。Palantirが競合と直接戦わず、FDEモデル、Ontology、LLMオーケストレーションで差別化し、年間93%成長を達成した理由もここにある。
カープは自身を「最もプログレッシブな家庭で育った」と語る。毎週金曜日のシャバット(ユダヤ教の安息日)で、「共和党が労働者を裏切り、安価な労働力を輸入している」と講義を受けて育った。
しかし、現代の「進歩派」は、実際には労働者階級を助けていないとカープは批判する。
"Progressive is defined by the working class do better tomorrow than they did today and know it."
「進歩的とは、労働者階級が今日より明日の方が良くなり、それを実感できることです。」
— Alex Karp
カープは、これらの政策が 貧困層に最も打撃を与えている ことを指摘する。
カープはしばしば「ネオコン(新保守主義者=積極的な軍事介入と民主主義の輸出を支持する政治思想。2000年代のイラク戦争を推進した勢力として知られる)」と誤解されるが、本人は明確に否定する。
"I've never been neocon. Why are we trying to make people us? I've never understood this."
「私はネオコンではありませんでした。なぜ我々は人々を我々のようにしようとするのか?私はこれを理解したことがありません。」
— Alex Karp
カープは、 必要な場所での武力行使 は支持するが、 アフガニスタンのような長期占領政策 には反対している。
彼の立場:
カープは、ネオコン的な「他国を民主化する」姿勢と、プログレッシブ的な「移民は西洋的価値観を受け入れる」という考え方が 同じ哲学に基づいている と指摘する。
講演の終盤、カープは聴衆(主に技術者)に向けて強いメッセージを送る。
"You're going to have to fight to win because currently I'm one of the few people other people on stage who speak up. You're going to have to speak up and explain to people why you have the right to win or it may be taken from you."
「勝つために戦わなければなりません。現在、私はステージ上で声を上げる数少ない人間の一人です。あなたも声を上げて、なぜ勝つ権利があるのかを人々に説明しなければなりません。さもなければ、それはあなたから奪われるかもしれません。」
— Alex Karp
カープは、 技術者が沈黙することの危険性 を警告する。声を上げないことは、「勝つ権利」を放棄することと同じだ。
カープは、この会場にいる技術者たちは「自殺しようとしている」ヨーロッパではなく、「勝つために戦っている」アメリカの象徴だと励ます。
主に2つの理由があります。(1)ICEやイスラエルへの技術提供が人権侵害に加担しているという批判、(2)AI監視技術が市民的自由を脅かすという懸念です。しかしAlex Karpは、Palantirの技術は「最も悪用しにくい設計」であり、不変ログや厳格なアクセス制御により透明性を担保していると反論しています。
皮肉なことに、Palantirの技術が「透明性が高すぎる」ためです。全てのアクセスが記録され、監査可能な設計は、政府機関が求める「柔軟な運用」と相容れませんでした。カープはこれを「市民的自由を守る証明」と位置づけています。
Alex Karpは「技術的には可能」と明言しています。重要なのは「全面的なカメラ監視」ではなく、「選択的な技術利用」です。例えば、既知の不法移民データベースと照合する限定的なAI利用により、一般市民のプライバシーを侵害せずに国境管理を強化できると主張しています。
20年間一貫して貫いてきた(1)FDE(Forward Deployed Engineers)モデル、(2)顧客の実問題を解く姿勢、(3)市民的自由を守る技術設計への信念、(4)批判に屈しない経営判断が結実した結果です。特にFDEモデルは、単なるソフトウェア販売ではなく、顧客と共に問題解決する独自アプローチとして評価されています。
カープ自身は否定しています。必要な場所での武力行使は支持しますが、アフガニスタンのような長期占領政策には反対しており、「なぜ他国を我々にしようとするのか」と批判的です。国家安全保障を重視する点では保守的ですが、伝統的なネオコンサバティズムとは一線を画しています。
(1)短期的批判に惑わされない長期視点、(2)メリトクラシーと年功序列のバランス、(3)自国文化の価値を再認識すること、(4)グローバル競争において「10倍優れている」必要性の認識、(5)技術者が社会的議論に参加する文化の醸成などが挙げられます。特に日本の「和」の文化とメリトクラシーの共存は重要な課題です。

まとめ図:Alex Karpの5つの教訓
Alex Karpの講演は、単なる企業CEOのスピーチではなく、 技術者の社会的責任 についての深い考察である。
主な成果:
実践のポイント:
カープは最後に、聴衆にこう問いかける:「あなたは勝つために戦いますか?それとも沈黙を選びますか?」
この記事は以下の動画を基に作成しています:
本記事で登場した専門用語の一覧です。
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| Palantir Technologies | 2003年設立のデータ分析企業。政府・企業向けソフトウェアを提供 |
| FDE | Forward Deployed Engineers。顧客先に常駐してソフトウェアを共同構築するモデル |
| メリトクラシー(実力主義) | 生まれや縁故ではなく、実績と能力に基づいて評価・登用する仕組み |
| ICE | Immigration and Customs Enforcement。米国移民・関税執行局 |
| NSA | National Security Agency。米国国家安全保障局。通信傍受・暗号解読を担当 |
| FBI | Federal Bureau of Investigation。米国連邦捜査局 |
| 不変ログ | Immutable Logs。一度記録したら変更・削除できないログ形式。改ざん防止に使用 |
| シリアライゼーション | データを保存・転送可能な形式に変換する処理 |
| カルヴィニズム | 世俗的成功を神の恵みの証と見なすキリスト教思想。アメリカ文化の基盤 |
| ルター主義 | 欧州で主流のプロテスタント。カルヴィニズムほど成功を肯定しない |
| ネオコン(新保守主義) | 積極的な軍事介入と民主主義の輸出を支持する政治思想 |
| デュープロセス | 法的手続きの保障。逮捕・処罰には適正な法的手続きが必要という原則 |
| フェンタニル | 強力な合成オピオイド鎮痛剤。違法流通により米国で深刻な薬物危機を引き起こしている |
本記事はネクサフローのAI・テクノロジーシリーズの一部です。