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AIサマリー
SaaStr創設者Jason Lemkinが警告する2026年のSaaS企業評価基準。AIエージェント製品なしでは「D評価」に。15.2%成長のソフトウェア市場で予算を獲得する3つの法則と、Cursor・Gammaが5倍価格設定できる理由を解説。
SaaStr創設者のJason Lemkinが、2025年のSaaStr AnnualでSaaS企業経営者に向けて厳しい警告を発しました。2026年までにAIエージェント製品を市場に出せなければ、企業評価は「D評価」すら取れない―予算は増えているのに獲得できない企業と、AIで5倍の価格設定を実現する企業の差はどこにあるのか。本記事では、15.2%成長するソフトウェア市場で予算を獲得する3つの法則と、今すぐ取るべきアクションを解説します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 講演者 | Jason Lemkin(SaaStr創設者) |
| イベント | SaaStr Annual 2025 |
| カテゴリ | 企業分析・SaaS戦略 |
| 難易度 | 中級(SaaS経営者・投資家向け) |
| 動画URL | https://youtu.be/RZYUn_ExLBY |
Jason Lemkinは、世界最大級のSaaSカンファレンス「SaaStr Annual」を主催し、SaaS業界に深い影響力を持つ人物です。自身もSaaS企業EchoSignの創業者(後にAdobeが買収)として成功を収め、現在はSaaSファンドを通じて数多くのスタートアップに投資しています。
SaaStr Annualは毎年1万人以上の参加者を集め、そのうち68%がVP以上、36%がCEO・創業者という、SaaS業界における最も影響力のあるイベントの一つです。Lemkinの発言は、投資家・経営者双方にとって重要な指標となっており、今回の講演内容は2026年の戦略立案に欠かせない情報です。
Lemkinは冒頭で、SaaS企業経営者に対して衝撃的な評価基準を示しました。
"Frankly, if you didn't accelerate growth at all, you get a D because you had a year. I give everyone a pass for 2023. All these tools were kind of terrible in AI. No one gets a pass this year."
和訳: 率直に言って、もし全く成長を加速させなかったなら、D評価です。1年間あったのですから。2023年は全員にパスを出します。AIツールはまだひどかったから。でも今年は誰にもパスを出しません。
評価の変遷:
評価タイムラインLemkinが強調するのは、「AI機能の追加」ではなく「成長の再加速」です。2024-2025年にAI製品を市場に出し、成長率を回復させた企業のみが次のステージに進めます。
"If you didn't reacelerate and you weren't in market with a great agent, a great Agentic product this year, you get a D minus, but you don't get an F because you got through the year. But you can't get a D next year. It's you're late."
和訳: もし成長を再加速させず、今年優れたエージェント製品を市場に出せなかったなら、D-です。Fではない、なんとか年を越せたから。でも来年はDを取れません。もう遅いのです。
2025年のVC投資総額は2021年のピークレベルに戻りました。しかし、この数字には大きな落とし穴があります。
VC投資比較2021年 vs 2025年の比較:
| 指標 | 2021年 | 2025年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 投資総額 | 同水準 | 同水準 | → |
| ユニコーン数 | 多数 | 半減 | ↓↓ |
| 上位4社の投資割合 | 低 | 50% | ↑↑↑ |
| 平均投資額/社 | 低 | 高 | ↑ |
上位4社(Anthropic、X.AI、OpenAI等)が全投資額の50%を占める一方、従来型SaaS企業への投資は激減しています。Lemkinはこれを「Seeds for suckers(シード投資は負け組の選択)」と表現し、VCが初期段階の企業に投資するよりも、成長しているAI企業の後期ラウンドに資金を投入する方が効率的だと指摘します。
IPO市場の低迷:
Gartnerの予測によると、2026年のソフトウェア支出は15.2%成長(1.2兆ドル超)と、過去最高レベルに達します。これは世界経済の成長率を大きく上回る数字です。
予算配分この成長の内訳が問題です。
"Half of this budget bonanza is going to existing vendors which you don't get and 30% of it is going into new AI tools. It doesn't leave much left for all the rest."
和訳: この予算ボーナンザの半分は既存ベンダー(あなたは受け取れない)に行き、30%は新しいAIツールに流れます。残りはほとんど残っていません。
2026年ソフトウェア予算の行き先:
つまり、従来型SaaS製品への予算は実質減少しています。既存ベンダーでもなく、AI製品でもない企業は、わずか20%の予算を奪い合う構図です。
Lemkinは、AI製品が予算を獲得できる条件を3つに整理しました。
AI製品成功マトリクス"AI features don't count. They're necessary but not sufficient to grow. Where is this budget coming from? Replacing humans. It's brutal but true."
和訳: AI機能はカウントされません。必要ですが成長には不十分です。この予算はどこから来るのか?人間を置き換えることです。残酷ですが真実です。
成功事例:
人間を置き換えることで削減されたコストが、AI製品の予算源となります。これが最も強力な予算獲得手段です。
「補助」ではなく「能力の拡張」がポイントです。
事例: Cursor(エンジニアの開発効率を10倍に)
Cursorは単なるコード補完ツールではありません。全てのオープンソースコードを学習し、開発者が「既に誰かが作ったもの」を瞬時に再現できるようにします。Lemkin自身、1時間でゲーム「Vaporale.AI」を構築したと述べています。
"You're never going back. This is radically augmenting humans."
和訳: もう戻れません。これは人間を劇的に拡張しています。
事例: Gamma(プレゼン作成時間を1/10に)
Gammaは、CRMデータを自動取得し、顧客ごとにカスタマイズされたプレゼンテーションを5分で生成します。Google SlidesやPowerPointと比較して、作業時間を桁違いに削減します。
「AI機能を追加しただけ」の製品は、予算を獲得できません。Lemkinは「必要だが不十分(necessary but not sufficient)」と明言しています。Microsoft自身、Copilotの月額20ドルを多くのユーザーに支払ってもらえませんでした。
価格比較価格設定の比較:
| 製品カテゴリ | 従来型 | AI製品 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 開発ツール | Jira $5/月 | Cursor $400-5000 | 80-1000倍 |
| プレゼン作成 | Google Slides 無料 | Gamma $100/月 | 無限大 |
| 営業支援 | CRM $50-100/月 | AISDRs $500+/月 | 5-10倍 |
"Does your AI product for 2026 enable you to charge five times or more than what you're charging today. And earn it. Not shove it down people's throats, but earn it."
和訳: あなたの2026年向けAI製品は、今の5倍以上の価格を請求できますか?そしてそれに値しますか?無理やり押し付けるのではなく、価値を提供して獲得するのです。
Cursorがプロジェクト管理ツールJiraの100-1000倍の価格を請求できるのは、「開発速度を10倍にする」という桁違いの価値を提供しているからです。これがTAM(Total Addressable Market)拡大の本質です。
2020-2021年のZoom需要と同様、AI導入は「I need需要」です。通常、見込み客の5-6%が市場にいる状態ですが、AI時代は全員が同時に市場に参入しています。
2025年のIPO市場は、年初の期待とは裏腹に低迷しました。
IPO市場が厳しい理由は、成長率と企業評価倍率の関係にあります。
成長率と企業評価倍率(ARR Multiple):
| 成長率 | ARR倍率 |
|---|---|
| 30%以上 | 23x ARR |
| 20-30% | 12x ARR |
| 20%未満 | 4.9x ARR |
Figmaは素晴らしい企業ですが、成長率が鈍化すると評価が急落します。2026年も、AI製品で成長を再加速させた企業のみが高評価を得ると予測されます。
効率性革命新興AI企業の効率性:
| 企業 | 従業員数 | ARR | 従業員あたりARR |
|---|---|---|---|
| Gamma | 50人 | $100M | $2M |
| Lovable/Replet | 100人以下 | $200M | $2M+ |
既存企業も効率化を加速:
"I'm still in too many conversations where the excuses I hear from CRO, from CPOs, from CMOs is I just don't have enough headcount. Just kindly thank them. Give them a package and move on for them."
和訳: CRO、CPO、CMOから「十分な人員がいない」という言い訳を聞く会話がまだ多すぎます。丁寧に感謝して、パッケージを渡して、次に進んでください。
2026年に「チームを倍増させないと成長できない」と言う幹部は、過去の人です。効率性を重視し、AI活用で少人数で成果を出す組織が勝ちます。
Clioは2008年創業の法律業界向けSaaSですが、AI機能を追加したことで評価額が30億ドルから50億ドルに上昇しました。古い企業でもAI製品への取り組み次第で復活可能です。
"It is early. What I can tell you is yeah there's a segment of Salesforce that needs these tools tomorrow but a lot of the traditional industries haven't even started."
和訳: まだ早い段階です。確かにSalesforceの一部の顧客は明日これらのツールを必要としていますが、多くの伝統的な業界はまだ始まってさえいません。
テック企業はAI導入が進んでいますが、製造業、金融、医療等の伝統的産業はまだ本格的なAI導入を開始していません。市場シェアを獲得する機会はまだあります。
AIエージェント製品の開発開始
TAM拡大を視野に入れた価格設定見直し
効率性指標の追跡
市場シェア獲得状況の可視化
組織の効率化推進
A: 生き残れないわけではありませんが、AI機能の追加は必須です。ただし、Copilot機能だけでは不十分。人間を置き換える、劇的に拡張する、桁違いの生産性向上のいずれかを提供する必要があります。Jason Lemkinは「AI features don't count. They're necessary but not sufficient」と明言しています。
A: 2020-2021年のZoom需要と同様の「I need需要」が発生しており、通常の5-6%の見込み客ではなく、全員が同時に市場に参入している状態です。ただし、Lemkinは「It is early」と述べており、伝統的産業はまだ本格的にAI導入を開始していません。少なくとも2026年以降も継続すると考えられます。
A: Gartnerによると2026年のソフトウェア支出は15.2%成長しますが、その内訳は以下の通りです:
つまり、従来型SaaS製品への予算は実質減少しています。
A: TAM(市場規模)拡大による価値提供の桁違いさが理由です。Cursorは月額$400-5000でJiraの$5/月と比較して100-1000倍、Gammaは$100/月でGoogle Slidesの無料と比較して無限大の価格設定です。Lemkinは「AI製品は5倍以上の価格を請求できる。ただし無理やり押し付けるのではなく、価値を提供して獲得する」と強調しています。
A: 成長率だけでなく、競合と比較して毎年市場シェアを獲得しているかが重要です。Lemkinは「競合分析スライドを隠す企業は危険信号」と指摘。AI時代は特にシェア喪失が加速するため、透明性を持った競合分析と市場ポジション把握が必須です。
A:
「残酷だが真実」とLemkinは述べており、人間置き換えが予算獲得の主要源泉になっています。
A: はい。急成長企業の65%は創業0-3年です。Lovableは創業1年で$6.3B評価を獲得。ただし、Clioのように2008年創業でもAI活用で$5B評価を達成した例もあり、古い企業でも復活可能です。重要なのは企業年齢ではなく、AI製品への取り組み姿勢です。
"The growth is there. Gardner says it's going to be record software spend next year. There's hundreds of billions of new revenue. Can't you get a little bit of a hundred billion?"
和訳: 成長はそこにあります。Gartnerは来年ソフトウェア支出が過去最高になると言っています。数千億ドルの新規収益があります。その100億ドルの中から少しだけ獲得できませんか?
機会は巨大です。しかし、それを獲得できるのは「人間を置き換え、劇的に拡張し、桁違いの生産性を提供する」AI製品を持つ企業だけです。
本記事はネクサフローのAI研究シリーズの一部です。
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